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「……ですよねぇ……」
私は牢獄にぶち込まれてしまった。
当然だろう。
犯人から動機まで、何もかも知っている私を放置はできない。
処刑されなかったのは、お姉様の優しさかもしれない。
「はぁ……」
せっかく自由になれたと思ったら、獄中生活か。
このまま一生を終える?
冗談じゃない。
かといって魔法……呪いだっけ?
そのせいで姿は別人、しかも非力な少女に変えられた今、自力でここを抜け出すことなんて……。
「なんで私がこんな目に……」
ここに来てようやく、苛立ちと怒りが芽生えた。
その時だった。
私の身体の中に、今までなかった力を感じる。
「これは……」
力は巡っている。
それが何なのか理解するのに、理屈はいらなかった。
私の脳裏に、使い方が流れ込む。
「いけるわね」
私は牢獄の壁に手を触れる。
イメージするのは熱だ。
音を出して破壊するとバレてしまう。
熱で溶かそう。
高熱を、牢獄の壁を溶かすだけの熱をイメージする。
身体の中を巡っていた力が、手のひらに集まる。
熱が伝わる。
高熱は形となり、壁を溶かした。
「できた!」
間違いない。
私の身体に流れ始めたのは魔力だ。
魔女にしか使えない魔法が、私にも使えるようになった。
呪いを受けた影響?
理屈はわからないけど、この力を使えば脱出できる。
「やってやるわよ」
どうせここにいても寂しく死ぬだけだ。
居場所がないなら、国の外に出よう。
私はもう、女王じゃない。
アリエルという名も、今日を境に呼ばれなくなる。
それでいい。
私は、自由になりたかった。
◇◇◇
「逃げ出したですって?」
「も、申し訳ありません……」
アリエルに代わり、姉のシエリスが女王代行となった。
正式な就任はまだである。
現在、騎士たちを使って女王の捜索に当たっている……ということになっている。
見つかるはずもなかった。
女王アリエルは、もういないのだから。
「どうやって逃げたの?」
「それが、壁に穴が……」
「穴?」
シエリスはため息をこぼす。
傍らには補佐役となった魔女セミラミスがいた。
「どう思う?」
「問題ありません。あれは継続しております」
「そう。捜索しなさい。もし抵抗するなら、無理やり連れ戻してもいいわ」
「はっ!」
呪いは継続している。
姿は戻っていない。
ならば脅威にはならないと、シエリスは考えていた。
「復讐でもする気かしら? 無駄なことを」
もう女王の地位は自分のもの。
この国をまとめ、支配するのは彼女ではない。
その優越感と勝利の余韻に、彼女は酔いしれていた。
これからどれほど苦労するかも知らずに。
私は牢獄にぶち込まれてしまった。
当然だろう。
犯人から動機まで、何もかも知っている私を放置はできない。
処刑されなかったのは、お姉様の優しさかもしれない。
「はぁ……」
せっかく自由になれたと思ったら、獄中生活か。
このまま一生を終える?
冗談じゃない。
かといって魔法……呪いだっけ?
そのせいで姿は別人、しかも非力な少女に変えられた今、自力でここを抜け出すことなんて……。
「なんで私がこんな目に……」
ここに来てようやく、苛立ちと怒りが芽生えた。
その時だった。
私の身体の中に、今までなかった力を感じる。
「これは……」
力は巡っている。
それが何なのか理解するのに、理屈はいらなかった。
私の脳裏に、使い方が流れ込む。
「いけるわね」
私は牢獄の壁に手を触れる。
イメージするのは熱だ。
音を出して破壊するとバレてしまう。
熱で溶かそう。
高熱を、牢獄の壁を溶かすだけの熱をイメージする。
身体の中を巡っていた力が、手のひらに集まる。
熱が伝わる。
高熱は形となり、壁を溶かした。
「できた!」
間違いない。
私の身体に流れ始めたのは魔力だ。
魔女にしか使えない魔法が、私にも使えるようになった。
呪いを受けた影響?
理屈はわからないけど、この力を使えば脱出できる。
「やってやるわよ」
どうせここにいても寂しく死ぬだけだ。
居場所がないなら、国の外に出よう。
私はもう、女王じゃない。
アリエルという名も、今日を境に呼ばれなくなる。
それでいい。
私は、自由になりたかった。
◇◇◇
「逃げ出したですって?」
「も、申し訳ありません……」
アリエルに代わり、姉のシエリスが女王代行となった。
正式な就任はまだである。
現在、騎士たちを使って女王の捜索に当たっている……ということになっている。
見つかるはずもなかった。
女王アリエルは、もういないのだから。
「どうやって逃げたの?」
「それが、壁に穴が……」
「穴?」
シエリスはため息をこぼす。
傍らには補佐役となった魔女セミラミスがいた。
「どう思う?」
「問題ありません。あれは継続しております」
「そう。捜索しなさい。もし抵抗するなら、無理やり連れ戻してもいいわ」
「はっ!」
呪いは継続している。
姿は戻っていない。
ならば脅威にはならないと、シエリスは考えていた。
「復讐でもする気かしら? 無駄なことを」
もう女王の地位は自分のもの。
この国をまとめ、支配するのは彼女ではない。
その優越感と勝利の余韻に、彼女は酔いしれていた。
これからどれほど苦労するかも知らずに。
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