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〖魔王〗がインストールされました③
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某ダンジョン内にて未知のモンスターと遭遇。
カインツ率いるパーティーは交戦の末、ダンジョン内へと逃げ込んだ。
「くそっ!」
一人、また一人と消えていく。
他のギルドのメンバーも一緒に逃げ込んだはずが、いつの間にか一人になっていることに気付く。
慕ってくれていた仲間もいない。
ただ一人、未知のモンスターから逃げ惑う。
「何が起こってんだ!」
叫ぶ。
空しく響くばかりで誰にも聞こえない。
カインツの眼前は行き止まり。
振り返れば、漆黒のモヤがゆっくりと近づいてくる。
「こ、こんなところで終われるか! 俺はあいつに……レオルスに目にもの見せてやるって――うぷっ!」
憎悪と憎しみが膨れ上がった時、黒いモヤは巨大化し、カインツを飲み込む。
彼は気づいていなかった。
黒いモヤが負の感情の起伏に呼応して襲い掛かってくることに。
未知への畏怖にて歩み寄り、死する恐怖に悲鳴を上げれば、黒き怪物は歓喜する。
かの者は獣にあらず。
しかし人でもなく、明確な意志のみが存在する。
人類のみならず、世界の敵。
その名は――星食い。
◇◇◇
「七日前に出発したパーティーの半数が、入り口付近で謎のモンスターと接触し消息不明。後日調査隊を結成し、ダンジョン探索を試みましたが、いずれも連絡が途絶えました」
「謎のモンスター……」
俺とライラは組合の支部で、ラクテルさんから報告を受けていた。
手渡された資料には、モンスターの特徴や、探索に参加したギルドメンバーの名簿が記載されている。
その中には、見知った名前もあった。
カインツ……。
「我々としても放置はできません。次なる調査隊を編成し、ダンジョン探索を決行します」
「そのメンバーに参加してほしい、ということですね」
「はい。本案件は非常に危険です。相応の実力者を集め、速やかに対処が必要だと考えております。レオルス様のお力もお借りしたい」
「……」
俺は改めて資料を眺める。
漆黒のモヤに、形が不明瞭なモンスター……か。
ライラと視線を合わせると、彼女が小さく頷いた。
「もちろん強制ではありません。参加するかどうかはお任せします」
「いえ、参加させてもらいます」
「よろしいのですか?」
「はい。自分の眼で、確かめたいので」
◇◇◇
組合からの帰り道、ライラと二人で話す。
「星食い、世界と隙間で生まれた捕食者。世界から漏れでた不純物の集合体だ。奴らは星、世界を呑み込み食らおうとする。そういう生き物だ」
「前にライラが言っていた世界の敵、だよな」
「そう、私たちが対峙すべき存在だ。ようやく姿を見せ始めたようだな」
星食いに飲まれた世界は完全に消滅する。
破壊ではなく、消えてなくなる。
故に俺たちは、世界を星食いから守らなければならない。
ライラが目覚め、俺がスキルを手にしたのは、星食いを倒すためだと彼女は教えてくれた。
それこそが俺たちの存在意義だと。
「もっと早く教えてほしかったよ」
「言ったつもりになっておった。これについては素直に謝罪する。まぁ遅かれ早かれ、お前さんは対峙することになっただろうがな。私たちはそういう運命の中におる」
「運命……」
「逃れられんぞ。私たちは向き合わなければならん。そうでなければ、この世界は消える。この世界が消えるということは、繋がる他の世界も消えるということだ」
この世界は、あらゆる世界の分岐点であり、中心。
もし星食いに飲まれてしまえば、遠く離れた世界にも影響を及ぼす。
最悪連鎖的に、あらゆる世界が星食いに飲まれる。
この世界だけじゃない。
全ての世界の命運は、俺たちの手に委ねられたということらしい。
正直、話が壮大過ぎて実感が湧かない。
「だからこそ、この目で確かめる。俺たちが戦うべき敵を……」
調査に参加する理由の根本はそれだ。
危険な依頼だということも承知している。
だから今回は……。
◇◇◇
「俺とライラの二人で行く。みんなは留守番だ」
「「「……」」」
三人とも悲しい表情をする。
厳しいことだが、今回の依頼は危険すぎる。
上位ギルドのメンバーも参加していた第二陣すら音沙汰なし。
無事に帰れる保証はない。
「大丈夫……なんですか?」
「ちゃんと帰ってくるよな?」
「ぽ、ポーションなら必要なだけ作ります」
「ありがとう。大丈夫、ちゃんと戻るよ」
彼女たちを危険にさらさないための選択。
心苦しいが、これが最善だ。
心配するなというのは、中々難しいと思うけど。
「安心しておれ。こいつが死ぬ時は世界の敗北だ。どうせみんな同じ場所に行くだけだからな」
「縁起でもないこと言わないでくれ……」
「事実だ。故に負けられんな? お前さんは」
「――ああ」
世界とか、未来とか、大それたことはしっくりこない。
それでも彼女たちが生きる日々を守れるように、俺はただ、最善を尽くそう。
「みんな、信じて待っていてほしい」
「はい! 必ず帰ってきてくださいね?」
「おう、負けんなよ!」
「わかりました。信じてい、いますから」
それぞれにエールを貰い、俺は決意を固める。
カインツ率いるパーティーは交戦の末、ダンジョン内へと逃げ込んだ。
「くそっ!」
一人、また一人と消えていく。
他のギルドのメンバーも一緒に逃げ込んだはずが、いつの間にか一人になっていることに気付く。
慕ってくれていた仲間もいない。
ただ一人、未知のモンスターから逃げ惑う。
「何が起こってんだ!」
叫ぶ。
空しく響くばかりで誰にも聞こえない。
カインツの眼前は行き止まり。
振り返れば、漆黒のモヤがゆっくりと近づいてくる。
「こ、こんなところで終われるか! 俺はあいつに……レオルスに目にもの見せてやるって――うぷっ!」
憎悪と憎しみが膨れ上がった時、黒いモヤは巨大化し、カインツを飲み込む。
彼は気づいていなかった。
黒いモヤが負の感情の起伏に呼応して襲い掛かってくることに。
未知への畏怖にて歩み寄り、死する恐怖に悲鳴を上げれば、黒き怪物は歓喜する。
かの者は獣にあらず。
しかし人でもなく、明確な意志のみが存在する。
人類のみならず、世界の敵。
その名は――星食い。
◇◇◇
「七日前に出発したパーティーの半数が、入り口付近で謎のモンスターと接触し消息不明。後日調査隊を結成し、ダンジョン探索を試みましたが、いずれも連絡が途絶えました」
「謎のモンスター……」
俺とライラは組合の支部で、ラクテルさんから報告を受けていた。
手渡された資料には、モンスターの特徴や、探索に参加したギルドメンバーの名簿が記載されている。
その中には、見知った名前もあった。
カインツ……。
「我々としても放置はできません。次なる調査隊を編成し、ダンジョン探索を決行します」
「そのメンバーに参加してほしい、ということですね」
「はい。本案件は非常に危険です。相応の実力者を集め、速やかに対処が必要だと考えております。レオルス様のお力もお借りしたい」
「……」
俺は改めて資料を眺める。
漆黒のモヤに、形が不明瞭なモンスター……か。
ライラと視線を合わせると、彼女が小さく頷いた。
「もちろん強制ではありません。参加するかどうかはお任せします」
「いえ、参加させてもらいます」
「よろしいのですか?」
「はい。自分の眼で、確かめたいので」
◇◇◇
組合からの帰り道、ライラと二人で話す。
「星食い、世界と隙間で生まれた捕食者。世界から漏れでた不純物の集合体だ。奴らは星、世界を呑み込み食らおうとする。そういう生き物だ」
「前にライラが言っていた世界の敵、だよな」
「そう、私たちが対峙すべき存在だ。ようやく姿を見せ始めたようだな」
星食いに飲まれた世界は完全に消滅する。
破壊ではなく、消えてなくなる。
故に俺たちは、世界を星食いから守らなければならない。
ライラが目覚め、俺がスキルを手にしたのは、星食いを倒すためだと彼女は教えてくれた。
それこそが俺たちの存在意義だと。
「もっと早く教えてほしかったよ」
「言ったつもりになっておった。これについては素直に謝罪する。まぁ遅かれ早かれ、お前さんは対峙することになっただろうがな。私たちはそういう運命の中におる」
「運命……」
「逃れられんぞ。私たちは向き合わなければならん。そうでなければ、この世界は消える。この世界が消えるということは、繋がる他の世界も消えるということだ」
この世界は、あらゆる世界の分岐点であり、中心。
もし星食いに飲まれてしまえば、遠く離れた世界にも影響を及ぼす。
最悪連鎖的に、あらゆる世界が星食いに飲まれる。
この世界だけじゃない。
全ての世界の命運は、俺たちの手に委ねられたということらしい。
正直、話が壮大過ぎて実感が湧かない。
「だからこそ、この目で確かめる。俺たちが戦うべき敵を……」
調査に参加する理由の根本はそれだ。
危険な依頼だということも承知している。
だから今回は……。
◇◇◇
「俺とライラの二人で行く。みんなは留守番だ」
「「「……」」」
三人とも悲しい表情をする。
厳しいことだが、今回の依頼は危険すぎる。
上位ギルドのメンバーも参加していた第二陣すら音沙汰なし。
無事に帰れる保証はない。
「大丈夫……なんですか?」
「ちゃんと帰ってくるよな?」
「ぽ、ポーションなら必要なだけ作ります」
「ありがとう。大丈夫、ちゃんと戻るよ」
彼女たちを危険にさらさないための選択。
心苦しいが、これが最善だ。
心配するなというのは、中々難しいと思うけど。
「安心しておれ。こいつが死ぬ時は世界の敗北だ。どうせみんな同じ場所に行くだけだからな」
「縁起でもないこと言わないでくれ……」
「事実だ。故に負けられんな? お前さんは」
「――ああ」
世界とか、未来とか、大それたことはしっくりこない。
それでも彼女たちが生きる日々を守れるように、俺はただ、最善を尽くそう。
「みんな、信じて待っていてほしい」
「はい! 必ず帰ってきてくださいね?」
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