ゴミスキルから始める異世界英雄譚 ~〖○○〗がインストールされました。つまり無敵です!~

日之影ソラ

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〖決断〗がインストールされました①

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 久しぶりの太陽、心地よい風が吹く。
 地上に出た俺は大きく深呼吸をして、この光景が現実であることを確認する。

「出られたんだな……本当に」

 夢みたいだ。
 ダンジョンの最深部までたどり着き、ボスモンスターを攻略して脱出する。
 完璧なダンジョン攻略を一人で達成した。
 ソロでダンジョン攻略を成し遂げた冒険者なんて、長い歴史の中でも一握りだろう。
 そのうちの一人に俺はなったんだ。

「……いや、一人じゃないか」

 俺の隣には彼女がいる。
 綺麗で可愛い人間みたいだけど、人間ではない不思議な少女が、太陽に向かって大きく両腕を広げ、小さな身体いっぱいに日差しを浴びている。
 
「うーん、なんだか身体がヒリヒリする。久しぶりすぎて刺激が強かったかな」

 本って日光があまり得意じゃなかったはずだけど……。
 彼女には関係ないかと一人で納得する。
 ライラが俺の視線に気づき、こちらを向いて視線が合う。

「どうしたんだい? 私が可愛すぎて見惚れちゃってたのかな?」
「別にそんなんじゃ……」
「照れなくてもいいよ~ お前さんが私に見惚れるのは当然のことだからね」
「凄い自信だな」

 確かに可愛い。
 これまで見てきた女の子、といっても多くはないけど、数少ない情報の中ではダントツだといえる。
 可愛さと美しさ、二つのよさを兼ね備えた容姿だ。
 背丈は小さいけどスタイルはよくて、子供とは思えないほど胸も……いや、なんでもない。

「でも子供なんだよなぁ」
「何を言ってるんだ? お前さんが望んだんだぞ?」
「……え?」

 俺が望んだ?
 何の話だ?
 キョトンとする俺に、ライラは呆れながら言う。

「私の容姿は、私を目覚めさせた者が理想とする姿の投影だ」
「……投影……え、じゃあつまり……」
「そう。この姿、スタイル、雰囲気を望んだのは他でもない、お前さんだよ」
「……嘘だろ」

 この容姿を求めたのが俺?
 小さくて可愛くて、でもスタイルだけは一丁前によくて。
 一部の男性の欲望を具現化したような容姿を……俺が望んだっていうのか。
 冗談だろ。
 これじゃまるで俺が――

「お前さんはあれだな。ロリコ――」
「それ以上は止めて! 引き返せなくなるから!」
「いや、もう手遅れだからな?」
「くっ……」

 認めるしかないのか?
 俺がロリ……いや、まだ決まったわけじゃない。
 偶々……そう偶々あの時にぱっと浮かんだ容姿がこれだっただけかもしれない。
 
「今際の際に浮かべた時点で欲望の形そのままだろ」
「こ、心を読まないでくれよ」
「お前さんと私は見えない糸で繋がっておるからな。隅々までとはいかないまでも、ある程度お前さんの感情は伝わるぞ」
「プライバシーは守られないのか……」

 俺は大きく肩の力を落とす。
 強大な力には相応のリスクが伴うものだ。
 この力を手に入れた代償だと思えば、まだ安いものだろう。
 俺はため息をこぼす。

「そう気を落とすことはない。私はお前さんの全面的に味方だ! お前さんが何を望んでも、どんな道を行こうとも肯定する。この身体も、お前さんの好きにするといい」

 とんと、ライラは自分の胸を叩いてすごいことを言い出した。
 俺は目と耳を疑う。

「好きにって……」
「言葉通りだ。お前さんがやりたいことをすればいい。私はそれに従うまでだ」
「やりたいこと……」

 彼女の容姿を改めて見て、俺はごくりと唾を飲みこむ。
 俺だって年相応の男だ。
 一応便宜上、タイプな容姿の女の子にそんなことを言われたら……。

「な、なんでそこまでしてくれるんだ?」
「なんでも何もない。私がいないとお前さんは戦えんし、お前さんがいないと私は無力だ。お前さんに目覚めさせれた瞬間から、ワシらは一心同体。自分の身体をどうしようと自分の勝手だろ?」
「す、すごい理屈だな、それ」
「間違ってはいないだろう? お前さんは私を守るために戦ってくれる。なら私も、お前さんが望むものを返す」

 た、確かに道理にはかなっている?
 俺たちは利害で繋がっている。
 俺が彼女を守る代わりに、彼女は俺に必要なものを提供する。
 なるほど、しっくりくる。
 ……ん?

「その理屈だと、お前も俺の身体を好きにできるってことじゃ……」
「そうだぞ? 頑張って私のために働いてくれ!」
「……いい性格してるな。まさかと思うけど、その性格も俺の好みとかじゃ……」
「安心しろ! 性格のほうは私個人のオリジナルだ!」

 心からホッとした。
 他人を食ったような性格の女性が好みだなんて、さすがにそこまで感性がねじ曲がっていると思いたくないから。
 ロリコンだけで充分……いやいや、まだ確定じゃない。
 諦めるんじゃないぞ!

「無駄な努力だな」
「くっ……」
「それで? この後はどうするんだ?」
「どうするも何も、街へ戻るよ。ダンジョンを攻略したこと、ギルドに報告しないといけないし」

 腰のポーチの中には、ボスモンスターである阿修羅の結晶が入っている。
 ボスモンスターの結晶は色が赤く、形が正円だ。
 大きさも手の平に乗るくらいで、他の結晶とは明らかに違う。
 この結晶を持ち帰ることで、ダンジョン攻略を達成した照明になる。
 きっと驚かれるだろう。
 ボスがどんな反応をするのか楽しみだ。
 と同時に、不安もある。 
 俺をダンジョンで囮にし、置き去りにしたカインツたち……彼らは今、どうしているだろうか。
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