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ダンジョン。
世界各地に点在する未知の建造物であり、空間。
いつ、誰が何の目的で生み出したのか不明。
多くの研究者たちが頭を悩ませている中、未だ解明されていない世界最大の謎だ。
唯一わかっているのは、ダンジョンには様々な宝が眠っているということ。
金銀財宝はもちろん、アーティファクトと呼ばれる現代技術では生み出せない奇跡の道具まで。
ダンジョンには無限大な夢が詰まっている。
故に、人々は欲する。
未知を解明するために、栄光を得るために。
俺たち冒険者は、ダンジョンを攻略するために存在している。
「おら、きびきび歩け!」
「わかってるよ。よいしょっと」
俺は特大の荷物を背負い、カインツが率いるパーティーの後方を歩く。
魔法使いのロゼ、弓使いのミリア、槍使いのパテオ。
彼らは皆、俺とカインより一か月後にギルドに加入した新人だ。
一応俺の後輩だけど、カインツ同様に冒険者としての才能あふれる彼らのほうが期待されている。
それ故に、このパーティーでの立場は、俺が一番下だった。
「リーダー、噂で聞いたんですけど、レオルス先輩クビなんですよね」
「らしいぞ」
「やっぱり! 可哀想」
ロゼが哀れなものを見る目を俺に向ける。
それに続くように、ミリアとパテオも憐れみを言語化する。
「荷物持ち以上できないんだから当然でしょ」
「ですね。むしろよく一年雇って貰えたと思います。組合の規定がなければ、僕ならとっくに解雇しています」
「そういうなって、役には立ってるだろ? 荷物持ちとしてな」
「そうですよー、一応先輩なんですから、ちゃんと敬わないとだめですからね」
とかいいながら、ロゼが一番俺のことを馬鹿にしている。
ロゼはリーダーであるカインツに心酔していて、同期の癖に役に立たない俺を見下し、軽蔑しているのだ。
他の二人も程度の差はあれ、俺のことを下に見ている。
苛立っても仕方がない。
いつものことだし、反論するだけの実力が俺にはなかった。
それに……あと一か月でこの関係も終わる。
「次の荷物持ちをさがさねーとな~」
「レオルス先輩より役立つ荷物持ちさんはいないと思いますよー」
「言えてるわね」
「無賃で働かせれば……は、さすがに酷いですか。組合が目を光らせていなければ……」
誰も彼も、言いたい放題してくれる。
けれど一つも言い返せないのが悲しいところだ。
俺はこのパーティーで、雑用や荷物持ち以上の存在理由がない。
腰の剣も飾りみたいなものだ。
ダンジョンに入って、一度も抜いたことがない。
そんな余裕も、必要もないから。
「さーて急ぐぞ~ このダンジョンは俺たちが最初に攻略してやるんだ!」
「はい!」
「ええ」
「僕たちならできますよ」
ダンジョンは広く、危険も多い。
一度潜れば何日、多い時だと一か月近く外に出られないことだってある。
それなりの準備は済ませてきた。
もしかすると、この冒険が俺にとって、彼らと過ごす最後の時間になるかもしれない。
そう思うと多少は感慨深さもある。
と同時に、不安もよぎる。
クビになった後、俺はどうなってしまうのだろう。
新しいギルドが雇ってくれるだろうか。
一年でクビになった時点で、役立たずの烙印は押されてしまう。
きっと……。
「……やめよう」
考えるのをやめる。
今はただ、この冒険の成功だけを考えよう。
最後になるかもしれないなら尚更、成功させて終わりたい。
もしかしたらこの冒険で、何かが変わるかもしれないんだから。
そんなありもしない期待を胸に、俺はカインツたちの後に続いて歩く。
二日後――
「そっち行ったぞ! ロゼ!」
「アイスクロス!」
魔法使いのロゼが氷の十字架を生成する。
裏へ回ろうとしたモンスターを食い止め、その隙にミリアとパテオがを攻撃する。
「ふん!」
「せい!」
ミリヤの矢が脳天に、パテオの槍が心臓を穿ち、モンスターはバタンと倒れて消滅する。
消滅したモンスターは透明な結晶となり、地面に転がる。
「お疲れ、レオルス!」
「うん」
俺は離れて戦闘を見ていた。
参加はしない。
いたところで邪魔になってしまうから。
仕事は戦闘が終わった後、モンスターが落とした結晶を回収する。
モンスターの種類や大きさによって形、大きさ、色が異なる結晶は、冒険者組合に提出すると高く売れる。
どうやら魔力の結晶体らしい。
仕組みはわからないけど、モンスターは死亡すると結晶になる。
この結晶を持ち帰ることで、モンスターの撃破報告ができる。
「レオルス、次はどっちだ?」
「えっと、地図だとこの先に分岐があって、右が未開拓になってるはずだよ」
「よし、じゃあ右に進むぞ」
マッピングや進む道の把握も俺の仕事だった。
地図も同じ資料だから、俺のスキルで読み取れば記憶に保管できる。
スキルで記憶したものは一生忘れない。
事前情報はすべて頭に入っている。
このダンジョンは一か月前に発見され、現在も探索が進んでいる。
先遣隊の報告では、ダンジョンは地下の階層に分かれている典型的なタイプで、最大十から二十階層くらいはあると予想される。
俺たちが今いるのが第六階層。
今のところ探索されている中では一番深い階層だ。
「気を引き締めろよ。ここから先は未開拓エリアだ」
カインツの言葉に皆が頷く。
ダンジョンで一番危険なのは、未開拓のエリアを進むこと。
どんな危険が待ち構えているのかわからない。
慎重に、集中して進む。
ただ、どれだけ準備し警戒しても、予測できない事態は起こってしまう。
世界各地に点在する未知の建造物であり、空間。
いつ、誰が何の目的で生み出したのか不明。
多くの研究者たちが頭を悩ませている中、未だ解明されていない世界最大の謎だ。
唯一わかっているのは、ダンジョンには様々な宝が眠っているということ。
金銀財宝はもちろん、アーティファクトと呼ばれる現代技術では生み出せない奇跡の道具まで。
ダンジョンには無限大な夢が詰まっている。
故に、人々は欲する。
未知を解明するために、栄光を得るために。
俺たち冒険者は、ダンジョンを攻略するために存在している。
「おら、きびきび歩け!」
「わかってるよ。よいしょっと」
俺は特大の荷物を背負い、カインツが率いるパーティーの後方を歩く。
魔法使いのロゼ、弓使いのミリア、槍使いのパテオ。
彼らは皆、俺とカインより一か月後にギルドに加入した新人だ。
一応俺の後輩だけど、カインツ同様に冒険者としての才能あふれる彼らのほうが期待されている。
それ故に、このパーティーでの立場は、俺が一番下だった。
「リーダー、噂で聞いたんですけど、レオルス先輩クビなんですよね」
「らしいぞ」
「やっぱり! 可哀想」
ロゼが哀れなものを見る目を俺に向ける。
それに続くように、ミリアとパテオも憐れみを言語化する。
「荷物持ち以上できないんだから当然でしょ」
「ですね。むしろよく一年雇って貰えたと思います。組合の規定がなければ、僕ならとっくに解雇しています」
「そういうなって、役には立ってるだろ? 荷物持ちとしてな」
「そうですよー、一応先輩なんですから、ちゃんと敬わないとだめですからね」
とかいいながら、ロゼが一番俺のことを馬鹿にしている。
ロゼはリーダーであるカインツに心酔していて、同期の癖に役に立たない俺を見下し、軽蔑しているのだ。
他の二人も程度の差はあれ、俺のことを下に見ている。
苛立っても仕方がない。
いつものことだし、反論するだけの実力が俺にはなかった。
それに……あと一か月でこの関係も終わる。
「次の荷物持ちをさがさねーとな~」
「レオルス先輩より役立つ荷物持ちさんはいないと思いますよー」
「言えてるわね」
「無賃で働かせれば……は、さすがに酷いですか。組合が目を光らせていなければ……」
誰も彼も、言いたい放題してくれる。
けれど一つも言い返せないのが悲しいところだ。
俺はこのパーティーで、雑用や荷物持ち以上の存在理由がない。
腰の剣も飾りみたいなものだ。
ダンジョンに入って、一度も抜いたことがない。
そんな余裕も、必要もないから。
「さーて急ぐぞ~ このダンジョンは俺たちが最初に攻略してやるんだ!」
「はい!」
「ええ」
「僕たちならできますよ」
ダンジョンは広く、危険も多い。
一度潜れば何日、多い時だと一か月近く外に出られないことだってある。
それなりの準備は済ませてきた。
もしかすると、この冒険が俺にとって、彼らと過ごす最後の時間になるかもしれない。
そう思うと多少は感慨深さもある。
と同時に、不安もよぎる。
クビになった後、俺はどうなってしまうのだろう。
新しいギルドが雇ってくれるだろうか。
一年でクビになった時点で、役立たずの烙印は押されてしまう。
きっと……。
「……やめよう」
考えるのをやめる。
今はただ、この冒険の成功だけを考えよう。
最後になるかもしれないなら尚更、成功させて終わりたい。
もしかしたらこの冒険で、何かが変わるかもしれないんだから。
そんなありもしない期待を胸に、俺はカインツたちの後に続いて歩く。
二日後――
「そっち行ったぞ! ロゼ!」
「アイスクロス!」
魔法使いのロゼが氷の十字架を生成する。
裏へ回ろうとしたモンスターを食い止め、その隙にミリアとパテオがを攻撃する。
「ふん!」
「せい!」
ミリヤの矢が脳天に、パテオの槍が心臓を穿ち、モンスターはバタンと倒れて消滅する。
消滅したモンスターは透明な結晶となり、地面に転がる。
「お疲れ、レオルス!」
「うん」
俺は離れて戦闘を見ていた。
参加はしない。
いたところで邪魔になってしまうから。
仕事は戦闘が終わった後、モンスターが落とした結晶を回収する。
モンスターの種類や大きさによって形、大きさ、色が異なる結晶は、冒険者組合に提出すると高く売れる。
どうやら魔力の結晶体らしい。
仕組みはわからないけど、モンスターは死亡すると結晶になる。
この結晶を持ち帰ることで、モンスターの撃破報告ができる。
「レオルス、次はどっちだ?」
「えっと、地図だとこの先に分岐があって、右が未開拓になってるはずだよ」
「よし、じゃあ右に進むぞ」
マッピングや進む道の把握も俺の仕事だった。
地図も同じ資料だから、俺のスキルで読み取れば記憶に保管できる。
スキルで記憶したものは一生忘れない。
事前情報はすべて頭に入っている。
このダンジョンは一か月前に発見され、現在も探索が進んでいる。
先遣隊の報告では、ダンジョンは地下の階層に分かれている典型的なタイプで、最大十から二十階層くらいはあると予想される。
俺たちが今いるのが第六階層。
今のところ探索されている中では一番深い階層だ。
「気を引き締めろよ。ここから先は未開拓エリアだ」
カインツの言葉に皆が頷く。
ダンジョンで一番危険なのは、未開拓のエリアを進むこと。
どんな危険が待ち構えているのかわからない。
慎重に、集中して進む。
ただ、どれだけ準備し警戒しても、予測できない事態は起こってしまう。
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