抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した!※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい

日之影ソラ

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第一章 転生したけど死にそう

一難去ってまたですか②

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「はっはっはっ! お前は面白い男だな。どうだ? お前もアダムストに入らないか?」
「アダムスト? なんだよそれ」
「知らないのか? 世界最大の犯罪者組織、咎落ちで構成され、窃盗、殺人、強姦なんでもやりたい放題! この世でもっとも自由に生きる人間たちのことだ!」
「ふざけるな! それの何が自由だ! 一般市民から平穏を奪っているゲスが!」

 囚われているジーナが激高する。
 ふと思い出す。
 以前に捕縛した盗賊たちが落とした模様の入った石板、あれもアダムストだった。
 そしてジーナが俺たちに尋ねた言葉も……。

「お前たちのような奴がいるから! 皆が安心して暮らせないんだ!」
「うるさい女だな。何だお前? もしかしてアダムストの誰かに肉親でも殺されたか?」
「――! 貴様……」
「なんだ図星か? 天下の騎士様が復讐ために戦ってたなんて笑いものだな? ひょっとして、あのアイギスも同じか」
「姉上を侮辱するな!」

 ジーナが暴れる。
 拘束された手足を鎖ごと引きちぎりそうな勢いで。
 あまりに無茶な動きをするから、拘束された手足から血がにじんでいる。

「待ってろジーナ! 今助ける!」
「おっと、邪魔されては困るな。こいつは餌なんだ。アイギスをおびき出すための――!」

 カナタが剣を抜き飛び出し、パークに斬りかかる。
 とっさにパークは剣を抜き、彼女の斬撃を受け止めた。

「タクロウ! 今のうちに!」
「わかった!」
「こいつ……」 

 カナタがパークの相手をしているうちに、俺はジーナの元へ駆けつける。
 パークは阻もうと身体の向きを変えた。

「行かせないぞ!」
「このガキ……まずはお前からだ」

 パークはカナタと互角の戦いを繰り広げる。
 レベルはおそらくパークのほうが上だ。
 カナタの素早さと、サラスが習得した補助魔法で強化することで何とか拮抗している。
 今のうちにさっさと拘束を解除しよう。

「くっ……外れない……」

 ダメだ。
 力じゃ壊せそうにない。
 こういう時こそ加護の力を借りよう!

 『弱点開示』!

 鎖のもろい部分を見つけ、至近距離でマジックボウを撃つ。

「よし! 動けるか?」
「どうして助けに来たんだ? 私は騎士で、貴様は冒険者なのに」
「は? ピンチを知って助けないわけないだろ? 立場なんて関係あるか」
「――!」
「あ、あと前隠してくれ!」
「み、見るな変態!」

 この状況で無茶を言わないでくれ。
 さて、反撃開始だ。
 カナタと攻防を繰り広げるパークの背後から矢を撃ちこむ。
 ギリギリで気づいたパークは回避するが、体勢を崩してカナタに追撃される。
 カナタの剣が、パークの剣を弾いた。

「勝負ありだな!」

 カナタが切っ先をパークに向ける。
 俺も背後からマジックボウを向けて言う。

「降参しろ! パーク!」
「……チッ、これだけは使いたくなかったが!」

 パークは懐から何かを取り出す。
 黒くて丸い何か。
 ボール? 
 ドクンと脈動するような音が響いている。

「生まれろ! そして暴れ回れ!」

 パークは取り出した黒い球を地面に投げつけた。
 砕けた球体は液体を飛び散らせ、光が明滅して何かを放出する。
 それは卵だった。
 生まれたのはモンスターだ。
 
「な、なんだよこれ……」
「見たか! これがアダムストの力だ!」

 見たことがないモンスターが召喚される。
 紫色のヘドロみたいな見た目だが、目と口があり、かろうじて手があるように見える。
 俺が無知なだけかと思ったが、ジーナも驚愕していた。

「まさか……アダムストはモンスターの育成に成功しているのか?」
「その通りだ! さぁ暴れろ! ――へ?」

 生み出されたモンスターは、パークを頭から飲み込んだ。
 一瞬の出来事で全員が固まる。

「う……」

 嘘だろおおおおおおおおおおお!
 召喚主を食いやがったぞあのヘドロモンスター!
 まったく制御出来てねーじゃんか!

 心の中で騒いでいると、パークを食べたヘドロは巨大化を始める。
 部屋を飲み込むほどの膨張。

「あのモンスター……捕食することで成長するのか?」
「暢気に分析してる場合か! 逃げるぞ!」

 俺はジーナの手を引き、カナタたちと共に外へ抜ける。
 建物は一瞬で破壊され、モンスターが露出する。
 街はずれの廃墟でよかった。
 これが街中なら、すでに大惨事になっていただろう。
 
「どうする? このまま逃げるか? 戦うか?」
「明らかに普通じゃないですよ! 私たちの手には負えません。逃げましょう! 私逃げます!」
「待った!」
「なんですか!」

 逃げようとするポンコツ天使の首根っこを掴む。

「冷静に考えろ。ここで俺たちが逃げたら、こいつは街を襲うかもしれないんだぞ。関係ない人まで巻き込まれる」
「タクロウ……貴様はまさか……」
「俺たちが食い止める! ジーナ、お前は援軍を呼んできてくれ!」
「わ、わかった! 死ぬなよ」
「あったりまえだ!」

 こんなところで死んでたまるか。
 まだ童貞のままなんだよぉ!

「いくぞカナタ!」
「おう! タクロウならそう言うと思った!」
「サラス! 俺とカナタに支援魔法を!」
「わかりましたよ! やばくなったら私だけでも逃げますからね!」
「絶対逃がさん!」
「ひぃ!」

 ヘドロモンスターは街の中心部へ移動を開始する。
 通るだけで家は瓦礫となる。
 周りの建物を取り込み、徐々に大きくなっている気がする。

「どこ行くんだこの野郎!」

 俺はマジックボウを、カナタは剣で攻撃をしかける。
 しかし意にも返さない。
 動きを止めることはできそうにない。
 
「くそっ……正面に回り込むぞ!」
「わかった!」

 せめて意識させる。
 注意を俺たちに向けて、進行を阻害するために。

「おいヘドロお化け! こっちに餌があるぞ!」

 大声で叫び注意を引く。
 僅かにこちらへ意識が向いて、進行方向が変わる。

「よし……あとはどうやって……」
 
 倒すかだ。
 例のごとく、俺の加護に活躍してもらおう!
 加護の力で弱点を見る。
 僅かに光っているのはヘドロの中心部分だった。
 
「これもしかして、中心に核があるとかそういうパターンか」
「どうすればいいんだ? あの光ってるところに攻撃すればいいのか?」
「いや、そうなんだけど……」

 周りのヘドロをどうにかしないと攻撃が届かない。
 俺とカナタの火力じゃヘドロを貫通できないぞ。
 どうする?
 
 ヘドロモンスターが小さな腕を動かす。
 腕は伸縮自在。
 鞭のように撓り、建物を抉りながら攻撃を繰り出す。
 カナタは咄嗟に剣で防御するが、その衝撃で吹き飛ばされる。

「くっ」
「カナタ!」
「タクロウも避けてください!」

 サラスの声が響く。
 ヘドロの鞭攻撃はすでに方向を変え、俺に向かっていた。
 俺はカナタほど素早くない。
 レベル的にも、カナタが吹き飛ぶような攻撃を受ければ――

 やばい。
 死ぬかも。

「させるか!」
「――!」

 大きな盾が攻撃を防御する。
 ドーンと金属が震える音が鳴り響き、俺を守ってくれたのは……。
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