抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した!※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい

日之影ソラ

文字の大きさ
上 下
17 / 40
第一章 転生したけど死にそう

初デートです①

しおりを挟む
 この世に生まれて二十二年。
 前世も含めて、俺は一度も恋人ができたことがない。
 どころか、女友達すら皆無だった。
 デートや結婚というイベントも、俺には縁のない空想上の出来事だと思っていたほどだ。
 故に現在も童貞である。

 そんな俺が……新しい世界に生まれ直して十二日。
 奇跡が起こる。

「おはよ! タクロウ」
「お、おはよう、カナタ」
「待たせちゃってたか? 悪いな」
「いや、俺も今来たところだから」

 デートの待ち合わせで定番と呼ばれているセリフを、俺自身が口にする機会があるなんて思わなかった。
 恋人なし歴二十二年の俺が、初めて女の子とデートをする。
 しかも異世界、そして可愛い年下の女の子と。
 夢だと言われたら納得してしまいそうだ。

「今日は来てくれてありがとな」
「ううん、あたしもデート楽しみだったからいいぞ!」
「そ、そっか」
 
 無邪気な笑顔をみせられて、ドキッとする。
 カナタとは出会って数日だけど、一緒に森を彷徨ったり、クエストを受けたり、短いながら濃い時間を過ごしたと思っている。
 剣士として素晴らしい強さを持つ彼女の姿を見てきたせいか、これまで女性として意識する場面が少なかった。
 それがどうだ?
 今はものすごくドキドキしている。
 最初から可愛い子だとは思っていたけど、こんなに可愛かったか?
 
「なんだ? あたしの顔に何かついてるか?」
「い、いや、なんでも――!」

 ふとここで、天使から貰ったアドバイスを思い出す。

 いいですか?
 女の子の容姿は素直に褒めてください!

 実践せねば。
 これはデートなのだから。

「か、可愛いなと思ってみてたんだよ。カナタのこと」
「お? そうか? ありがとな!」
「……」

 ダメだ。
 全然響いていない気がする。
 喜ばれてはいるけど、カナタの女性の部分には届いていない。
 これは中々……手ごわい相手だ。

「それで、デートって何するんだ? あたしよくわかってないんだよな」
「大丈夫だ。プランは考えてあるから」
「そうなのか? じゃあタクロウに任せるよ!」
「ああ、任せてくれ」

 とは言ったが、俺もデートなんて知らん。
 だってやったことないし。
 知識としてあるのは、エロゲやギャルゲの中で得たものくらいだ。
 現実とゲームは違う。
 あんな妄想の世界での設定、毛ほども役に立たないことは承知している。
 俺一人ではデートなど失敗する。
 だから仕方なく、本当に仕方なく……俺の周りで唯一の女性である彼女に相談した。

  ◆◆◆

「仕方ありませんね~ 童貞のタクロウに、この私がデートをレクチャーしてあげますよ!」
「……」
「なんですかその顔は」
「いや、よろしくお願いします」

 ものすごく不本意だが、背に腹は代えられない。
 この際、彼女の意見でも聞かないよりマシだ。
 一応天使だし、愛と平和の女神様の下で働いていた奴だからな。
 少なくとも俺よりは詳しいだろ。

「デートって何すればいいんだ?」
「簡単ですよ。一緒に楽しく過ごせばいいんです」
「抽象的すぎないか?」
「そういうものですよ。場所や時間、何をするかは関係ありません。男女が二人で何かをする。お互いがデートだと思えばデートなんですから」

 なるほど、そういうものなのか?
 男女が二人、デートだと思えばデートになる。
 そうなると、余計に困ったな。
 何をすればいいのかさっぱりわからん。

「街を回るだけでもいいんですよ。聞く限りカナタもこの街は詳しくないみたいですからね」
「回ってどうするんだ?」
「気になるお店に入ったり、食事をしたり、何をするかはカナタと話しながら決めましょう。そのほうが会話も生まれます」
「なるほどな」

 ちゃんとしたアドバイスだ。
 このポンコツ、デートに関しては信用できるんじゃないか?

「大事なのは、カナタを楽しませることです! デートで使うお金も、基本的にこっちが出します。今回のデートはカナタにタクロウを好きになってもらうためのデートですから。間違っても対等なんて考えちゃダメですよ?」
「わ、わかった」

 クエストとモンスター討伐で得たゴールドがある。
 ほとんど使っていないし、一日くらい贅沢しても罰は当たらないだろう。
 
「とにかく自分をアピールして、カナタを楽しませてください!」
「わ、わかった」
「頑張ってくださいよ! タクロウがクソ童貞のままだと、私も死ぬんですからね? 結婚さえしちゃえばあとは簡単ですよ。寝込みを襲っても合法です!」
「……」

 このポンコツはやっぱり一言多いな。

  ◆◆◆

 偉そうな物言いは腹が立ったが、あいつのアドバイスは役に立った。
 具体的に何をするかは決まらなくても、心は決まっている。
 カナタを惚れさせる。
 そのためのデートだと意識できた。

「カナタはこの街は長いのか?」
「いや全然初めて! タクロウたちと一緒くらいだな」
「そっか。じゃあせっかくだし、街を探検してみないか? ついでに欲しい物があったら買えばいいし」
「それがいいな! 一人だと迷子になるからで歩けなかったんだよ!」

 街の中でもカナタは迷うのか……。
 今まで買い物とかはどうしていたのか気になるな。

「カナタは何かほしいものとかあるか?」
「うーん……新しい剣!」
「カナタらしいな」
「村を出てから使ってるんだけど、刃こぼれが酷くなったんだよなぁ」

 可愛い服とかアクセサリーじゃなくて、実用的な剣が欲しいというところが彼女らしさだ。
 適当に街を散策しながら、武器屋があったら入ることにした。
 武器屋の場所はこれから活動する上で必要になる。
 今さら知ったが、この街の名前はスタットというらしい。
 周囲に生息するモンスターは比較的弱い個体が多く、駆け出し冒険者が多く集まる。
 森の中に転移したのは鬼畜だが、一応配慮はされていたようだ。

「お! あれ武器屋じゃないか?」

 剣のマークが書かれた看板をカナタが指さす。
 見た目は武器屋っぽい。
 
「入ってみるか」
「そうだな!」

 なんとなくカナタのテンションが上がった気がした。
 気持ち駆け足になり、二人で武器屋に入る。
 そういえば、サラスは何してるんだ?
 邪魔しないように宿屋で寝てるとか言ってたが……。

「おお! ちゃんと武器屋だったな!」

 中に入るとたくさんの剣や槍、防具なんかが並んでいた。
 ゲーム世界でイラストや映像で見る光景が、現実に目の前で広がっている。
 俺も少し感動していた。

「武器屋ってこんな広いんだな!」
「え? 初めてなのか?」
「うん。村にはなかったし、街はいくつか回ったけど、自分じゃ見つけられなかったからな」
「それって……」

 ずっと迷子状態だったってことじゃ……。
 よく生きてこられたな。
 今後は迷子にならないように、しっかり見張っておこう。

「どれがいいかなー」
「普段使ってる剣は?」
「置いてきた。今日はクエストじゃないし、デートに剣って邪魔かなと思って。でも大丈夫だ! 大きさとか重さとかは覚えてるからな!」

 話しながらカナタは並べられた剣を一つずつ見て行く。
 瞳を輝かせながら。
 まるでおもちゃ屋さんに連れてこられた幼い子供のように。

「楽しそうだな」
「うん! 剣士だからな! 剣は好きなんだ」
「ほしい物があったら言ってくれ。お金は俺が出すよ」
「え? いいのか? あたしが使う物だし、お金ならあたしが出したほうがよくないか?」
「デートだからな! こういう時は男が払うものらしい」

 天使のアドバイス通り。
 値段はさっきチラッと確認した。
 さすがに法外な値段の武器はなくてホッとしている。
 駆け出し冒険者の街だし、値段もリーズナブルだ。
 残金半分は消し飛ぶが、今日だけなら問題ない。

 カナタは新しい剣を選び、購入した。
 大きさや長さは変わらない。
 見た目がちょっぴり豪華になった気がする。

「なんか悪いな。ありがと! 今度お返しするよ!」
「別にいいよ。デートだからな」
「ダメだって! 絶対にお返しするから!」

 律儀だな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...