抜きゲーみたいな世界に転生した童貞〔オレ〕は嫁を100人作ると決心した!※決心しただけなので出来るとは言っていない。でも出来なきゃ死ぬらしい

日之影ソラ

文字の大きさ
上 下
4 / 40
第一章 転生したけど死にそう

転生したら人生オワタ④

しおりを挟む
 いきなり天使が駆け寄ってきて、俺の胸倉をつかんできた。
 突然のことで驚く俺の首を勢いよく絞める。

「く、苦しい……」
「最悪中の最悪ですよ! これじゃ私の計画が! 女神への道が遠のくどころじゃないですよ!」
「な、何言って……」

 本気で苦しい。
 女なのに俺より腕力はあるんじゃないのか?
 胸倉をつかまれ呼吸困難になる俺の声は、彼女には届いていなかった。
 取り乱した天使は涙目で叫ぶ。

「嫌ですよ私! こんな童貞と運命を共にするなんて! 無効! こんなの無効ですから!」
「い……いい加減にしろおおおおおおおおお!」
「ぶへっ!」

 我慢と呼吸の限界に達した俺は、思いっきり女神の腹に前蹴りを食らわせた。
 狙ったわけじゃないけど鳩尾に入ったらしい。
 女神は後ろに吹き飛んで、苦しそうにお腹を押さえる。

「ぐ、ぐ……天使のお腹に……蹴りを入れるなんて……」
「ごほっ、ごほっ! 関係あるか! こっちは殺されかけてるんだよ!」

 ようやく首絞めから解放されて、新鮮な空気を目いっぱいに吸い込む。
 また首を絞められないように距離をとり、身構えながら乱暴天使に質問する。

「さっきの装置なら正常に作動したんじゃないのか? 俺はなんともないぞ!」
「それが困るんですよ! いっそ不具合でも起きればよかったのにぃ……うぅ……」
「えぇ……」

 今度は泣きだしたんだが……。
 なんだこいつ?
 情緒不安定すぎるだろ。
 天使ってみんなこんな感じなのか?
 俺の中のイメージが崩れ去る。

「なんでそんなに悲しんでるんだよ。何か問題あったのか?」
「大ありですよ! なんですかあの目標は!」
「え、いや、この世界での目標だろ? お前が書けっていたんじゃないか」
「問題は内容ですよ! あんな目標無理に決まってるじゃないですか!」

 俺はムカッとした。
 確かに俺自身、かなりハードルが高い目標だとは思っている。
 無茶な目標だ。
 ただ、それを他人から無理だと断言されるのは腹が立つ。
 
「そんなの、やってみないとわからないだろ?」
「わかりますよ! 二十年以上童貞だった人が一か月で卒業できるわけないじゃないですか!」
「ぬっ! う、うるさいな! お前には関係ないだろ!」
「関係大ありですよ! あなたが目標達成できないと、一緒にペナルティーを受けるんですから!」

 天使の口から聞き慣れない言葉が飛び出した。

「ぺ、ペナルティ?」
「そうですよ!」
「え? 目標達成できないとペナルティーがあるの?」
「あるに決まってるじゃないですか!」
「聞いてねーぞ! そういうのはちゃんと説明しろよ!」
「忘れてたんですよぉ!」

 忘れてんじゃねーよ馬鹿野郎!
 ペナルティー?
 罰があるっていうのか?
 いや待て!
 問題はペナルティーその者じゃなく、その内容だ。

「ペナルティーの内容はどこでわかるんだ?」
「そこに書いてありますよ!」

 怒れる天使が指をさしたのは、彼女がいじっていた操作盤だった。
 勝手に見ろと言い放つ天使に苛立ちながらも、俺は操作盤を覗き込む。
 無茶な目標とはいえ、大それたことはしていない。
 しかも俺は善行の末に転生させてもらったんだ。
 ペナルティーとか言っても、腹筋百回とかそのくらいだろ。

 短期目標:童貞卒業。
      未達成のペナルティー【一生独身】
 中期目標:嫁を100人作る!
      未達成のペナルティー【死亡】
 長期目標:自分の国を作る。
      未達成のペナルティー【世界の裏側で強制労働(永遠)】

「おいクソ天使! なんだこのペナルティー!」
「私に言わないでくださいよ! 目標を設定したのは自分じゃないですか!」
「俺だってこんなペナルティーがあるならもっと軽めにしたわ!」

 なんだよこのふざけたペナルティーは!
 一か月童貞だっただけで一生独身?
 しかもその時点で嫁はできないから、一年後に死亡確定じゃねーか!

「こんなの無効だ! ただちにやり直しを要求する!」
「それができたらとっくにやってますよ! できないから嘆いてるんじゃないですか! このクソ童貞の夢見がち引きニート!」
「こっ! 引きこもりは事実だがニートじゃない! ちゃんと株で稼いでたから!」
「関係ありませんよ! こんなクソショボ童貞のせいで、私の人生も終わりですぅ……」

 クソ天使は本気で泣き始めた。
 泣きたいのはこっちだ。
 一か月以内に童貞卒業しないと死ぬんだぞこっちは!

「ん? てかなんでお前まで嘆いてんだよ。お前には関係ないだろ?」
「あるから困ってるんですよ!」
「は?」
「あのですね? 私たち天使はただの案内役でここにいるわけじゃないんです! 中期目標の達成までサポートするのが天使としての私の役目で、もし失敗すると同じペナルティーを私も受けるんです!」
「え? じゃあつまり……」
「そうですよ! あなたが童貞のままだと私も死ぬんです!」

 ま、マジか……。
 俺の童貞卒業に、天使の命までかかってるってこと?
 責任重大過ぎるだろ。

「だったら尚更しっかり説明しろよ! なんてことしてくれてんだ!」
「こっちのセリフですよ!」

 天使と俺でいがみ合っていると、俺たちがいた部屋から鐘の音が鳴り響く。
 その音に天使がハッと気づく。

「も、もう出発の時間ですか!」
「出発? ここはもう異世界じゃないのか?」
「ここは天界の孤島です! やることが終わったら、それぞれの目標の難易度にあった場所に強制転移されるんですよ!」
「おい、お前今なんて言った?」

 それぞれの目標の難易度にあった場所……だとぉ!?
 もうすでに落ちが見える。
 達成できなきゃ死ぬレベルの目標だぞ。
 難易度は劇高だ。

「一応聞くが、難易度が高い目標を掲げた場合、どこに飛ぶんだ?」
「ランダムだから私にもわかりませんよ! ただ間違いなく……安全な場所じゃないですね」
「……終わった」
「終わりました」

 怒りを通り越して嘆き、互いに諦めモードのまま強制転移が発動した。
 光に包まれてどこかへ飛ぶ。
 次に視界が開けた時、目の前に広がっていたのは……。

「どこだよここぉ!」
 
 俺と天使は森の中にいた。
 しかも見るからに危険そうな、元の世界じゃ見たことのない植物だらけだ。

「ちょっ、何叫んでるんですか!」 
「うるせぇ! こんなもん叫ばずにいられるか!」
「ダメですよ! どう見てもここモンスターの生息地ですよ!」
「え、モンスター……?」

 俺の叫び声に反応して、がさがさと周囲から音が近づく。
 忘れていた。
 考えていなかった。
 ここはすでに異世界、俺が知らない世界だということに。

「に、逃げろおおおおおおおおおおおおおお!」
「ひぃい! なんで私までぇ!」
「お前天使だろ! 飛べないのかよ!」
「無理ですよ! 下界に降りるときに力は大幅に制限されるんですから!」
「つかえねええええええええええええええ!」
 
 こうして、俺の新しい人生は最悪なスタートを迎えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

処理中です...