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序盤に出会う敵じゃない①
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「もう一周追加ぁ!」
「はい!」
今日も騎士団のトレーニングに混ざって特訓中である。
若い騎士たちと同じペースで走っている。
「余裕そうですね、勇者様」
「いやいや、これくらいは毎日やっていれば当然ですよ」
さすがに毎日王城の周りを何十周もしているんだ。
嫌でも体力はついてくる。
それ以外にも筋力トレーニングもやっていて、身体もガッチリしてきた。
目にわかる成果が表れると、辛い特訓にもやる気が出てくる。
不思議な気分だ。
始めたばかりの頃は嫌々だったのに、今はそこまで嫌な気分じゃない。
気持ちにも余裕ができて、若い騎士たちと談笑しながら走ることだってできる。
俺って意外と運動得意だったのか?
「勇者様、少しよろしいですか?」
「姫様?」
ランニングが終わった所で、姫様が俺を呼び止めた。
騎士たちは畏まって敬礼している。
姫様はニコリと微笑む。
俺の前以外では猫を被っているから、今はお淑やかモードだ。
だから俺も、勇者らしく丁寧に振舞う。
「どうかされましたか?」
「紹介したい人たちがいます。一緒に来ていただけませんか?」
「この後は訓練の続きがあるんですが……」
「本日は欠席で構いません。騎士団にも伝達してあります」
そういうことなら断る理由はない。
若い騎士たちに手を振って、俺は姫様と一緒にその場を立ち去る。
しばらく歩き、俺たち二人だけが廊下を進む。
「随分と打ち解けたみたいね」
「おかげ様で」
二人きりになると、いつもの姫様だ。
「で、話って?」
「紹介したい人がいるって言ったでしょう?」
「だから誰なんだよ」
「私たちと一緒に魔王討伐にいく仲間よ」
姫様は面倒くさそうにそう言った。
一緒に旅をする仲間か。
「俺たちだけじゃなかったんだな」
「当たり前でしょう? 私たちだけで魔王討伐なんて絶対に無理よ」
「それもそうか」
「ただでさえお荷物が一人いるのよ」
「誰のことだよ」
「あら? 言わなきゃわからないかしら?」
呆れと煽りが交じり合った表情でこちらを向く。
イラっとした俺は言い返す。
「俺だってこの一か月鍛えたんだぞ?」
「それは頼もしいわね。いきなり幹部と遭遇してバッサリいかれないことを祈るわ」
「縁起でもないこと言うなよ」
こういうのは序盤は弱い敵からって相場が決まってるんだよ。
幹部戦はレベルが上がってから。
確かに強くはなったけど、実戦はしたことないからな。
「ついたわ。この部屋よ」
案内された王城の一室。
この部屋に、これから共に旅をする仲間が待っている。
少しだけ緊張してきた。
「断っておくけど、私の目的とか余計なことを話さないようにね?」
「わかってるよ。そっちこそ、俺の正体バラさないでくれよ」
「それはあなたの頑張り次第ね」
こいつ……。
相変わらず主導権は握られっぱなしだ。
いつか逆転する日がくるのだろうか。
一生このままな気もする……。
俺は小さくため息をこぼす。
姫様が扉をノックし、中に声をかける。
「エリカです。勇者様をお連れしました」
「どうぞー!」
甲高い声がした。
女の子だろうか?
姫様が扉を開けると、待っていたのは二人。
「待ってたぜ! 姫様!」
一人は豪快に手を振っている小柄な少年?
赤茶色のショートカットで、シュッとしまったお腹が露出した服を着ている。
背中には自分の身体よりも大きな大剣を背負っていた。
見た目的に戦士だろうか。
「アルカ、エリカ様にその態度は失礼ですよ」
「あ、ごめんなさい……姫様」
「ふふっ、構いません。私たちは共に旅をする仲間ですから。階級や地位など気にせず、一人の仲間として接してください」
「なんとお優しいことでしょう。姫様の寛大さに感謝いたします」
もう一人は丁寧でお淑やかな雰囲気のお姉さん。
修道服っぽい見た目で、髪色は薄い桃色でウェーブがかかっている。
ぱっと見は戦える感じじゃない。
僧侶とかの回復が得意な職業だろうか。
それにしても胸が大きい。
姫様も大きいけど、それ以上に大きい。
やばいな。
自然と視線が胸元に吸い寄せられて……。
「君が勇者?」
「うおっ!」
いつの間にかアルカと呼ばれていた少年が、俺の眼前にきていた。
下から見上げるように顔を近づけてくる。
整った顔立ちは、まさに美少年と呼ぶべきものだ。
「うーん……思ったよりパッとしないね!」
「ふっ」
おい姫様、今笑っただろ?
「こら、アルカ。失礼よ」
「あ、ごめんなさい! またやっちゃった……」
「いや、気にしないていいから」
地味な顔だっていうのは自覚しているし。
ブサイクとか言われなかっただけマシだと思おう。
「僕はアルカ! 見ての通り戦士だよ!」
「あ、ああ。俺はソウジ。よろしく」
「よろしくね! ソウジ君!」
アルカは強引に俺の手をとり、握手をしてブンブンと上下に動かす。
体格が小柄だからか手も小さいし、体温が高くて暖かい。
あと力が強い。
さすが戦士だ。
「勇者様、私はセミレナ・ローレンスです。役職は聖女、女神様の輝きを皆様に届けることが、私の使命になります」
聖女だったのか。
ゲームでも回復キャラで、アンデッドとかに有効な攻撃を得意としている。
確かに見た目それっぽい。
雰囲気もお淑やかだし、汚れなき乙女って感じがする。
「どうぞ、これからよろしくお願いいたしますね? 女神様に選ばれし勇者様」
「あ、はい。よろしく」
彼女とも握手をした。
なぜだろう?
単なる挨拶なのに、背筋が一瞬だけゾッとしたのは……。
気のせいだよな?
「えっと、この四人で魔王討伐に行くんだよな?」
「ええ、そうなります」
姫様に改めて確認した。
魔法使いである姫様と、戦士のアルカ、聖女のセミレナ。
そして偽勇者の俺。
全員若いし、半数は女の子だった。
なんかもっと、頼りになる歴戦の戦士が一人くらい加わってほしかった感はあるが、年齢が近い方が接しやすくはある。
一長一短だな。
姫様が改まって俺たちに言う。
「本日は顔合わせだけです。出発の日まで残り三日となりました。それぞれに最後の準備に取り掛かってください」
「はーい!」
「かしこまりました」
「……」
三日後……。
いよいよ魔王討伐の旅に出発する。
果たして無事に帰還することはできるのだろうか。
自由を手ににするために、残りの日々を訓練に費やした。
「はい!」
今日も騎士団のトレーニングに混ざって特訓中である。
若い騎士たちと同じペースで走っている。
「余裕そうですね、勇者様」
「いやいや、これくらいは毎日やっていれば当然ですよ」
さすがに毎日王城の周りを何十周もしているんだ。
嫌でも体力はついてくる。
それ以外にも筋力トレーニングもやっていて、身体もガッチリしてきた。
目にわかる成果が表れると、辛い特訓にもやる気が出てくる。
不思議な気分だ。
始めたばかりの頃は嫌々だったのに、今はそこまで嫌な気分じゃない。
気持ちにも余裕ができて、若い騎士たちと談笑しながら走ることだってできる。
俺って意外と運動得意だったのか?
「勇者様、少しよろしいですか?」
「姫様?」
ランニングが終わった所で、姫様が俺を呼び止めた。
騎士たちは畏まって敬礼している。
姫様はニコリと微笑む。
俺の前以外では猫を被っているから、今はお淑やかモードだ。
だから俺も、勇者らしく丁寧に振舞う。
「どうかされましたか?」
「紹介したい人たちがいます。一緒に来ていただけませんか?」
「この後は訓練の続きがあるんですが……」
「本日は欠席で構いません。騎士団にも伝達してあります」
そういうことなら断る理由はない。
若い騎士たちに手を振って、俺は姫様と一緒にその場を立ち去る。
しばらく歩き、俺たち二人だけが廊下を進む。
「随分と打ち解けたみたいね」
「おかげ様で」
二人きりになると、いつもの姫様だ。
「で、話って?」
「紹介したい人がいるって言ったでしょう?」
「だから誰なんだよ」
「私たちと一緒に魔王討伐にいく仲間よ」
姫様は面倒くさそうにそう言った。
一緒に旅をする仲間か。
「俺たちだけじゃなかったんだな」
「当たり前でしょう? 私たちだけで魔王討伐なんて絶対に無理よ」
「それもそうか」
「ただでさえお荷物が一人いるのよ」
「誰のことだよ」
「あら? 言わなきゃわからないかしら?」
呆れと煽りが交じり合った表情でこちらを向く。
イラっとした俺は言い返す。
「俺だってこの一か月鍛えたんだぞ?」
「それは頼もしいわね。いきなり幹部と遭遇してバッサリいかれないことを祈るわ」
「縁起でもないこと言うなよ」
こういうのは序盤は弱い敵からって相場が決まってるんだよ。
幹部戦はレベルが上がってから。
確かに強くはなったけど、実戦はしたことないからな。
「ついたわ。この部屋よ」
案内された王城の一室。
この部屋に、これから共に旅をする仲間が待っている。
少しだけ緊張してきた。
「断っておくけど、私の目的とか余計なことを話さないようにね?」
「わかってるよ。そっちこそ、俺の正体バラさないでくれよ」
「それはあなたの頑張り次第ね」
こいつ……。
相変わらず主導権は握られっぱなしだ。
いつか逆転する日がくるのだろうか。
一生このままな気もする……。
俺は小さくため息をこぼす。
姫様が扉をノックし、中に声をかける。
「エリカです。勇者様をお連れしました」
「どうぞー!」
甲高い声がした。
女の子だろうか?
姫様が扉を開けると、待っていたのは二人。
「待ってたぜ! 姫様!」
一人は豪快に手を振っている小柄な少年?
赤茶色のショートカットで、シュッとしまったお腹が露出した服を着ている。
背中には自分の身体よりも大きな大剣を背負っていた。
見た目的に戦士だろうか。
「アルカ、エリカ様にその態度は失礼ですよ」
「あ、ごめんなさい……姫様」
「ふふっ、構いません。私たちは共に旅をする仲間ですから。階級や地位など気にせず、一人の仲間として接してください」
「なんとお優しいことでしょう。姫様の寛大さに感謝いたします」
もう一人は丁寧でお淑やかな雰囲気のお姉さん。
修道服っぽい見た目で、髪色は薄い桃色でウェーブがかかっている。
ぱっと見は戦える感じじゃない。
僧侶とかの回復が得意な職業だろうか。
それにしても胸が大きい。
姫様も大きいけど、それ以上に大きい。
やばいな。
自然と視線が胸元に吸い寄せられて……。
「君が勇者?」
「うおっ!」
いつの間にかアルカと呼ばれていた少年が、俺の眼前にきていた。
下から見上げるように顔を近づけてくる。
整った顔立ちは、まさに美少年と呼ぶべきものだ。
「うーん……思ったよりパッとしないね!」
「ふっ」
おい姫様、今笑っただろ?
「こら、アルカ。失礼よ」
「あ、ごめんなさい! またやっちゃった……」
「いや、気にしないていいから」
地味な顔だっていうのは自覚しているし。
ブサイクとか言われなかっただけマシだと思おう。
「僕はアルカ! 見ての通り戦士だよ!」
「あ、ああ。俺はソウジ。よろしく」
「よろしくね! ソウジ君!」
アルカは強引に俺の手をとり、握手をしてブンブンと上下に動かす。
体格が小柄だからか手も小さいし、体温が高くて暖かい。
あと力が強い。
さすが戦士だ。
「勇者様、私はセミレナ・ローレンスです。役職は聖女、女神様の輝きを皆様に届けることが、私の使命になります」
聖女だったのか。
ゲームでも回復キャラで、アンデッドとかに有効な攻撃を得意としている。
確かに見た目それっぽい。
雰囲気もお淑やかだし、汚れなき乙女って感じがする。
「どうぞ、これからよろしくお願いいたしますね? 女神様に選ばれし勇者様」
「あ、はい。よろしく」
彼女とも握手をした。
なぜだろう?
単なる挨拶なのに、背筋が一瞬だけゾッとしたのは……。
気のせいだよな?
「えっと、この四人で魔王討伐に行くんだよな?」
「ええ、そうなります」
姫様に改めて確認した。
魔法使いである姫様と、戦士のアルカ、聖女のセミレナ。
そして偽勇者の俺。
全員若いし、半数は女の子だった。
なんかもっと、頼りになる歴戦の戦士が一人くらい加わってほしかった感はあるが、年齢が近い方が接しやすくはある。
一長一短だな。
姫様が改まって俺たちに言う。
「本日は顔合わせだけです。出発の日まで残り三日となりました。それぞれに最後の準備に取り掛かってください」
「はーい!」
「かしこまりました」
「……」
三日後……。
いよいよ魔王討伐の旅に出発する。
果たして無事に帰還することはできるのだろうか。
自由を手ににするために、残りの日々を訓練に費やした。
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