上 下
7 / 8

7

しおりを挟む
 翌日から学園での生活が始まる。
 今までは運命の相手に流されるがままだった。
 今回は違う。
 誰にも合わせず、私は私がやりたいように生きる。
 もっとも、すでに運命の相手候補は牽制した。
 みんな私じゃなかったと思って、他を選んだはずだ。
 
 と、思っていたのに……。

「やぁリリス、僕の運命の人。昨日はちゃんと話せなかったし、今日はゆっくり話さないかい?」
「おいお前、昨日はよくも俺を無視してくれたな」
「やめろと言っただろう? 彼女に迷惑をかけるな」
「あ、あの……ボクの隣の席であんまり騒がないで……なんでもないです」
「人気者だね。昨日は君を探していたんだ。一緒のクラスになれて嬉しく思うよ」
「……どうして」

 どうしてこうなったのかしら?
 全員が同じクラス、同じ部屋で密集している。
 五人とも席が近い。
 素っ気ない態度を取ったはずなのに。

「……面倒ね」

 このまま付きまとわれるのは嫌だ。
 ならいっそ、ここで全てをさらけ出してしまいましょう。
 これまでは一度も見せてこなかった。
 お父様の言いつけもあって、誰にも知られることは許されなかった。
 けど、もう関係ない。
 私は私のままで生きると決めたから。

「ダークネス」

 私は全身から闇を開放する。
 闇の圧に押し流されて、元婚約者たちは咄嗟に距離を取る。

「な、なんだこれは?」
「闇の力だと?」
「なんと禍々しい力なんだ」
「こ、こんなの初めて見ましたよぉ」
「……これが君の力なのかい? リリス・クローリーさん」
「ええ、そうよ」
 
 部屋にいる全員が、廊下を歩いていた人たちの視界に闇が映る。
 恐ろしいでしょう?
 近づきたくないと思うでしょう?
 歴史上、闇の魔法を授かった者は、必ず周囲の人間を不幸にする。
 そう決められているらしい。
 私は信じないけど、運命書を信じている皆には、さぞ私は恐ろしい魔王にでも見えるのでしょうね。

 さぁ、畳みかけましょう。

「これが私の運命書よ」
「く、黒い?」
「それに……」
「なんだそりゃ? 真っ白じゃねーか!」
「ええ、何も記されていないの。私の運命は神様に縛られていない。だから、私は私がやりたいように生きる。誰の運命にも従わない。私に近寄らないで。私の邪魔をするなら」

 最後の威嚇をする。
 全身の闇を際立たせて、周囲に恐怖を与える。

「この闇があなたを吞み込むわよ」

 決定的な恐怖を示した。
 もうこれでいい。
 多くの人に嫌われるだろう。
 お父様にも、どうして勝手に秘密を話したのかと責められるはずだ。
 でも、関係ないんだ。
 どうせ私は、運命に従っても幸せにはならない。
 
 闇は私を呑み込み、教室から消える。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子

深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……? タイトルそのままのお話。 (4/1おまけSS追加しました) ※小説家になろうにも掲載してます。 ※表紙素材お借りしてます。

悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。 (あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?) シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。 しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。 「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」 シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。

悪役令嬢は、婚約破棄の原因のヒロインをざまぁしたい!

公爵 麗子
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄なんて、許せませんわ! ヒロインの嘘で何もかも全て奪われた罪、償ってもらいますわ。 絶対に誰よりもしあわせになってみせますわ。

辺境伯令嬢が婚約破棄されたので、乳兄妹の守護騎士が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  王太子の婚約者で辺境伯令嬢のキャロラインは王都の屋敷から王宮に呼び出された。王太子との大切な結婚の話だと言われたら、呼び出しに応じないわけにはいかなかった。  だがそこには、王太子の側に侍るトライオン伯爵家のエミリアがいた。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

悪役令嬢に転生して主人公のメイン攻略キャラである王太子殿下に婚約破棄されましたので、張り切って推しキャラ攻略いたしますわ

奏音 美都
恋愛
私、アンソワーヌは婚約者であったドリュー子爵の爵士であるフィオナンテ様がソフィア嬢に心奪われて婚約破棄され、傷心…… いいえ、これでようやく推しキャラのアルモンド様を攻略することができますわ!

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

婚約破棄させようと王子の婚約者を罠に嵌めるのに失敗した男爵令嬢のその後

春野こもも
恋愛
王子に婚約破棄をしてもらおうと、婚約者の侯爵令嬢を罠に嵌めようとして失敗し、実家から勘当されたうえに追放された、とある男爵令嬢のその後のお話です。 『婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~』(全2話)の男爵令嬢のその後のお話……かもしれません。ですがこの短編のみでお読みいただいてもまったく問題ありません。 コメディ色が強いので、上記短編の世界観を壊したくない方はご覧にならないほうが賢明です(>_<) なろうラジオ大賞用に1000文字以内のルールで執筆したものです。 ふわりとお読みください。

処理中です...