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私はもう、七度も繰り返している。
初めて時間の巻き戻しができることに気付いたのは、婚約破棄されて落ち込んでいる時だった。
まだ初心で慣れていなかった私は、突然突き放されて困惑した。
信じたくなかった。
私にも運命の相手がいるのだと思いたかった。
だけど現実は残酷で、私はすべてを失った。
何が悪かったのだろう。
どこで失敗してしまったのだろう。
願わくばやり直したい。
この人生を。
そう願った時、感情の起伏に呼応して闇の魔法が暴走した。
自身の力に、闇に飲み込まれた私は死を覚悟した。
そうして目覚めた私は、時間を巻き戻したことに気が付いた。
以来、私は繰り返している。
失敗するたびに、婚約破棄されるたびに自死をきっかけに巻き戻らせる。
次こそは失敗しない。
そう誓って。
「また失敗しちゃったけど」
私は大きくため息をこぼす。
何が間違っていたのだろうか。
ちゃんと相手に好かれるように媚をうって、従順に従った。
時には騎士となり、商人となり、様々な役割も経験した。
その悉く失敗してしまってしまったけれど。
運命が定められていない私は、誰かの運命に寄り添って生きていくしかない。
そう、思っていた。
「……もう疲れたわね」
七度も経験すれば誰だって思うだろう。
見えもしない他人の運命に神経をとがらせ、正解ではなく失敗しないために気を遣う。
刺激しないように。
他人の運命を狂わせないように。
他人の幸せのおこぼれにあずかって、私も幸せになれるように……。
「くだらないわ」
改めて思うと滑稽な話だ。
他人の運命は他人のもの。
いくら尊重したところで、私の未来は保証されない。
その程度で幸せになれるなら、最初から私の運命は白紙じゃなかったはずだ。
神様は……意地悪だ。
そんな相手に、今さらこびへつらってどうするの?
「そうよね……どうせ神様は私のことが嫌いでしょう? いなくても困らないから、私の運命は白紙なんでしょう? だったら……いいわ」
決めた。
今回はもう、誰かの運命なんて気にしない。
他人の運命に私の名前が記されていて、誰かの運命の組み込まれているとしても、その悉くを否定してみせよう。
どうせ私の人生に意味なんてないんだ。
だったら好き勝手に生きてやる。
私は私のために、他人の運命をめちゃくちゃにしてでも幸福になってやる。
神様には頼らない。
私は、私自身の力で未来を掴む。
そうと決めたら――
「行動開始ね」
私自身の手で幸せを掴むためには、これまでの失敗をすべて回避する必要がある。
少なくとも、他人の運命書から外れる道を行かないと。
そのために最も重要なのは、私自身が変わることだ。
今日までの私を一言で表すなら、神様に嫌われて可哀そうな公爵令嬢……。
貴族としての地位はあるけど、運命書のせいで冷遇されている。
私は弱い立場だ。
その印象を払拭するために、私は強くならないといけない。
「五日……あれば十分ね」
幸いなことに、私には七度の失敗で培った経験がある。
今度こそ失敗はしない。
私は、前へ進むんだ。
初めて時間の巻き戻しができることに気付いたのは、婚約破棄されて落ち込んでいる時だった。
まだ初心で慣れていなかった私は、突然突き放されて困惑した。
信じたくなかった。
私にも運命の相手がいるのだと思いたかった。
だけど現実は残酷で、私はすべてを失った。
何が悪かったのだろう。
どこで失敗してしまったのだろう。
願わくばやり直したい。
この人生を。
そう願った時、感情の起伏に呼応して闇の魔法が暴走した。
自身の力に、闇に飲み込まれた私は死を覚悟した。
そうして目覚めた私は、時間を巻き戻したことに気が付いた。
以来、私は繰り返している。
失敗するたびに、婚約破棄されるたびに自死をきっかけに巻き戻らせる。
次こそは失敗しない。
そう誓って。
「また失敗しちゃったけど」
私は大きくため息をこぼす。
何が間違っていたのだろうか。
ちゃんと相手に好かれるように媚をうって、従順に従った。
時には騎士となり、商人となり、様々な役割も経験した。
その悉く失敗してしまってしまったけれど。
運命が定められていない私は、誰かの運命に寄り添って生きていくしかない。
そう、思っていた。
「……もう疲れたわね」
七度も経験すれば誰だって思うだろう。
見えもしない他人の運命に神経をとがらせ、正解ではなく失敗しないために気を遣う。
刺激しないように。
他人の運命を狂わせないように。
他人の幸せのおこぼれにあずかって、私も幸せになれるように……。
「くだらないわ」
改めて思うと滑稽な話だ。
他人の運命は他人のもの。
いくら尊重したところで、私の未来は保証されない。
その程度で幸せになれるなら、最初から私の運命は白紙じゃなかったはずだ。
神様は……意地悪だ。
そんな相手に、今さらこびへつらってどうするの?
「そうよね……どうせ神様は私のことが嫌いでしょう? いなくても困らないから、私の運命は白紙なんでしょう? だったら……いいわ」
決めた。
今回はもう、誰かの運命なんて気にしない。
他人の運命に私の名前が記されていて、誰かの運命の組み込まれているとしても、その悉くを否定してみせよう。
どうせ私の人生に意味なんてないんだ。
だったら好き勝手に生きてやる。
私は私のために、他人の運命をめちゃくちゃにしてでも幸福になってやる。
神様には頼らない。
私は、私自身の力で未来を掴む。
そうと決めたら――
「行動開始ね」
私自身の手で幸せを掴むためには、これまでの失敗をすべて回避する必要がある。
少なくとも、他人の運命書から外れる道を行かないと。
そのために最も重要なのは、私自身が変わることだ。
今日までの私を一言で表すなら、神様に嫌われて可哀そうな公爵令嬢……。
貴族としての地位はあるけど、運命書のせいで冷遇されている。
私は弱い立場だ。
その印象を払拭するために、私は強くならないといけない。
「五日……あれば十分ね」
幸いなことに、私には七度の失敗で培った経験がある。
今度こそ失敗はしない。
私は、前へ進むんだ。
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