婚約破棄7回目の悪役令嬢が主役になるまで ~運命に従っても幸せになれないと気付いたので好き勝手に生きようと思います~

日之影ソラ

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 この世界が、誰かが書いた物語だとすれば。

「リリス、君との婚約を破棄させてもらうよ」
「……」

 私は……主役にはなれないだろう。

「君と婚約してからというもの、私の『運命書』はおかしくなってしまった。君と関わることで、私の運命に歪みが生じてしまったんだ。この意味がわかるかい?」
「……」

 ただ、脇役でもない。
 そうね。
 しいて上げるなら、悪役……かしら?

「無言……か。君のお父様とも話はついている。すまないがこれは決定事項だ」
「ええ、そうでしょうね」

 言われなくても知っている。
 理解している。
 私はここで婚約者を失い、惨めな思いをすることになる。
 その原因が妹であることもわかっている。
 嫌というほど思い知っている。
 だから――

 終わらせてしまおう。

「アブソル様、今日までありがとうございました。心配なさらなくても、あなたの運命は元通りになります」
「何を言って……おい、何をするつもりなんだ」

 私は右手をゆっくりと動かし、自分の胸に手を当てる。
 傷心の心を癒すように?
 違う。
 もう何度も経験して、私の心は傷つくことに慣れてしまった。
 今さらこの程度のことで傷心したりしない。
 これからするのは、単なる作業。
 やり直しのボタンを押すだけ。

「リリス……君は一体――」
「さようなら、私の婚約者様。次はもう、関わらないでくださいね?」

 私の身体を闇が包み込む。
 世界を暗黒に染め上げ、私の人生を終らせる。
 闇の引力によって私の身体は消滅し、魂は巻き戻る。
 
 さて、今回はどこまで巻き戻るのかしら?
 毎回バラバラだけど、もういっそ生まれる前に戻りたいわね。
 そうすれば……もしかしたら……神様からちゃんとした運命を与えられるかもしれないから。
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