没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ

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プロローグ⑥

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 強くなる決心をした私は、すぐに行動を開始した。
 向かったのは騎士団だった。

「お願いします! 私に剣の稽古をつけてください!」

 稽古していた騎士の方々に向かって、私は頭を下げた。
 強くなりたい。
 でも、一人では限界がある。
 剣術を磨き、実戦経験を積むためにも、指導してくれる相手が必要だと思った。
 王国騎士団には、国中から剣士が集まる。
 
 当然、騎士たちは困惑していた。
 十歳の子供が一人、稽古をつけてほしいなんて頭を下げてきたら困るだろう。 

「いや、そういうのは困るんだ」
「お願いします! 私はどうしても強くなりたいんです!」
「……」
「わかった。俺たちでよければ」
「――! 本当ですか!」

 頭を上げて気づいた。
 声をかけてくれたのは、あの日お父様の訃報を知らせてくれた人だった。
 他にも数名、協力してくれると名乗りを上げた。

「俺たちはロイドさんに救われた。恩返しをさせてくれ」
「ありがとうございます」

 ありがとう、お父様。
 亡くなった今でも、私のことを支えてくれている。
 感謝を胸に、私は空いている時間に、騎士の方々に指導をしてもらうことになった。
 剣術の稽古と並行して、魔法についても勉強する。
 人間には魔力が流れていて、剣士のほとんどは魔力で肉体を強化している。
 強い剣士を目指すなら、魔力の扱いも卓越していなくてはならない。
 無論、それだけじゃ足りない。
 騎士として、当主として立派になるためには、剣術だけ学べばいいわけじゃなかった。
 私は屋敷にあった書斎で本を読み漁った。
 必要な知識は全て網羅する。
 訓練以外の空いている時間は、勉学に勤しむことにした。

 他にも、街に出てお仕事も探した。
 ブレイブ家には資産があるし、それを使えば数年は食べていける。
 ただ、それじゃダメだと思った。
 お父様とお母様が必死に残してくれた財産だ。
 ブレイブ家が貴族であり続けるために、最低限の資産は必要になる。
 お金もなくなったら、いよいよ貴族を名乗る資格はない。
 自分一人が暮らすお金くらい、自分で働いて稼ごう。
 社会勉強にもなるし、体力づくりもできる。
 十歳の私を雇ってくれるところなんてほとんどなかったけど、どこは頑張ってお願いして、力仕事でも雑用でも、やれることはなんでもやった。
 
 ただひたすらに、強くなることを目指して。

 そして――

  ◇◇◇

 七年後。
 私は、十七歳になっていた。

「三百二、三百三」

 日課の素振りも欠かさず、毎朝やっている。
 かなり様になってきただろう。
 魔力操作も毎日繰り返し練習することで、格段に向上していた。

「そろそろ時間だ」

 私は剣を腰にさげ、騎士団へ向かった。
 あの頃から、指導は継続している。

「おはようございます!」
「ああ、おはよう。ミスティアちゃん」
「今日もお願いします! ラントさん!」

 父の元同僚で部下でもあったラントさんは、今は部隊長になっている。
 私のことも贔屓にしてくれて、特別に騎士見習いとして働かせてもらっていた。
 正式に入団できるのは十八歳からだ。
 そのためには試験を受けなくてはならず、その試験は三か月後にある。

「もうすぐ試験なので、もっと訓練の時間を増やしたいと思います」
「頑張りすぎないように。君はもう十分に強いよ」
「そんなことありません! 私はまだまだ未熟です。騎士になるならもっと強くならないと」
「本当に努力家だ。ロイドさんにそっくりだよ」

 父に似ている。
 そう言って貰えることが嬉しくて、誇らしかった。

「そんな君に、一つ朗報がある」
「はい?」

 ラントさんは一枚の紙を私にくれた。
 記されていたのは、第一王子ラインハルト殿下の専属騎士の選抜試験について。

「選抜試験……開催されるんですか?」
「うん。急だけど、二週間後に行われる。受けてみないか?」
「いいんですか? これってラントさん宛の参加資格なんじゃ……」
「そうだけど、俺には騎士団の仕事があるし、こっちを投げ出すわけにはいかない。それに君には必要なチャンスだろう?」
「ラントさん……」
「これも恩返しだ」
 
 私は応募用紙を抱きしめる。

「ありがとうございます!」
 
 巡ってきた大きなチャンス。
 ラントさんの厚意と、お父様とお母様の意思を引き続くためにも、私は受けることにした。
 かつてブレイブ家が担った専属騎士の役割。
 私の代で、返り咲いてみせる!
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