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 領主様との出会いから五日後。

「ほ、ホントに……」

 あたしの店が完成した。
 元は道具屋さんだった店舗の改装して、鍛冶場と武器屋をセットにしてもらった。
 建物は領主様が用意してくれて、鍛冶場の工事も領主様が人を集めてくれた。
 ほとんど全て、領主様が準備してくれたもので成り立っている。

「よかったんですか?」
「ん?」
「こんなにしてもらって、やっぱり店舗分のお金は払います!」
「いやいいって。これは俺からのプレゼントだ。どうせ使ってなかったしな」

 鍛冶場を作る工事費用は私が出した。
 それ以外にかかったお金は、領主様が必要ないと言ってくれている。
 おかげで貯金もまだ半分残っている。
 有難いけど、心苦しくもある。

「でも……」
「いいんだよ。今まで国を守ってくれた恩返しだ。これでも足りないくらいだぞ?」
「そんなことは! 私はただ、聖剣を管理していただけですから」
「君がそうしなければ勇者は戦えない。勇者が戦えたのは君のおかげだ。直接的じゃなくても、君は国を守っていた英雄だと俺は思うよ」
「英雄……」

 それは、勇者エレンから言われた言葉とは真逆。
 私のせいで負けた。
 私が未熟だから、勇者が勝てない。
 そう言われてクビになり、たどり着いた先で出会った領主様は、私のおかげだと言ってくれる。
 この温かさはなんだろう?
 胸が熱くなって、全身がポカポカしてくるような……。

「それに、この店が出来て繁盛して、街の活気に繋がれば俺も嬉しい。領主として、みんなが楽しく幸せに生活できることが何よりだからな。もちろん、これからは君も入っているぞ」
「……あの!」

 今、心から思えることがある。
 鍛冶師になって、働き続けて……一度も思えなかったことを。

「頑張ります! あたし、この街で頑張ってみます!」
「ああ、期待してるよ」

 こうして、新天地で鍛冶師として再スタートする。
 自分でお店をするなんて初めてだ。
 大変なことはわかっている。
 それでもきっと、この選択は間違っていない。

  ◇◇◇

「まったく、なんだんだあれは!」
「もういいじゃありませんか」
「だがあの態度と言い分! 僕や君への暴言は許しがたいことだ」
「単なる負け惜しみですわ」

 鍛冶師ソフィアが宮廷を出た後、勇者エレインは激怒していた。
 彼女にさんざん言われた時は圧倒されていた彼も、いなくなって落ち着き、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。

「負けたのは僕のせいだと……ふざけるな」
「ええ、悪いのは彼女です。エレイン様は完璧な勇者ですもの」
「その通りだ。やはり君は僕のことをわかってくれているね」
「当然です。婚約者ですのも」

 二人はべたつく。
 責任転嫁した勇者を肯定し、甘やかす。
 今の勇者を作ったのは、彼女の甘さも原因の一つだろう。

「それでエレイン様、新しい鍛冶師は雇われますか?」
「そうだな。一人欠員が出たんだ。とりあえず一人募集すればいいだろう」
「わかりました。それでは募集のほうをかけさせていただきます」
「ああ、頼むよ。彼女よりも優秀な人材なんてたくさんいる。すぐに見つかるだろう」

 エレインは心からそう思っていた。
 が、現実は違う。

 一週間後――
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