5 / 9
5
しおりを挟む
宮廷鍛冶師をクビになった私は、王都を離れることにした。
もっとも栄えていて王国の中心と言える街。
平民にとっても憧れの街だけど、私はあまり好きじゃない。
何より王都には王城があり、宮廷がある。
せっかく辞められたのに、王城なんて毎日見える場所にいたら、嫌でもきつい日々を思い出してしまう。
気持ちをリセットするためにも、新天地へ向かうことを決めた。
特に行く当てもない。
なんとなく王都から北へ進み、ラクストという大きな街にやってきた。
王都ほどじゃないけど栄えた街だ。
特にギルドと呼ばれる冒険者の組織がいくつも拠点を構えているとか。
ギルドについてはあまり詳しくないけど、王国に属さない独自の組織らしい。
街中にはギルドが経営するお店も多く並んでいた。
飲食店に洋服屋さん、アイテムショップなんかもある。
チラッと見た限り、武器屋さんもあるみたいだ。
「そろそろ仕事見つけないとな~」
王都を出てすでに一週間が経過した。
当てもなく彷徨って、何もすることなく一日を負える。
休暇としては十分すぎるだろう。
のんびりな時間も悪くないけど、あたしはどうやら落ち着きがないらしい。
忙しくしていた頃の癖か、何かしていないと落ち着かない。
いや、それ以前にお金の問題もある。
「さすがに減ってきたな……」
宮廷で働いてた頃の給料はほとんど貯金していた。
使う暇なんてないほど忙しかったから。
おかげで相当な金額は持っている。
ただ、お金は有限だ。
徐々に減っていくことを実感し、お金は使えばなくなるという当たり前の事実を痛感する。
まだまだ余裕はあるけど、焦りは感じられてきた。
「新しい仕事場、仕事……」
探さないといけない。
街に武器屋はあったし、鍛冶師として雇ってもらう?
現実的だけど、ちょっと不安だ。
また宮廷みたいな環境だったら、地獄のような日々に逆戻り。
さすがに勘弁してほしい。
仕事量は適切、残業代も支払われて、パワハラを受けない環境がいい。
もしくはいっそ……。
「そこの君ー、暇そうだねぇ~」
「よかったらオレたちと遊ばねぇーかー?」
「は?」
道端でぼーっと考えていたら、いつの間にか知らない男たちに囲まれていた。
ガラの悪い男たちが私を見てニヤニヤしている。
「なんだよ」
「俺らもちょうど暇なんだよ」
「別に、あたしは暇してないから。どっか行ってくれる?」
「ちょっと待ってって。少し遊ぶだけだからさー」
その場から立ち去ろうとした私の手を、男の一人がガシっと掴む。
「離して!」
私は思いっきり振りほどいた。
すると男はギロっと私のことを睨む。
「っつ、痛ぇな。何しやがる」
「そっちが掴んできたのが悪いだろ」
「てめぇ……調子に乗ってんじゃねーぞ。ガキのくせに」
男たちは私を取り囲み、威圧するように見下ろしてくる。
私の態度が気に入らなかったのか、全員が怒っていた。
怒りたいのはこっちのほうだ。
この先のことを真剣に悩んでいる時に邪魔されて……。
「どいてくれ」
「口の利き方がなってねーな? そういう奴には教育的指導をしてやらねーと」
こいつら……。
あたしが女だから油断してるんだな。
人数も六対一。
私に乱暴するつもりなのは、やらしい視線から丸わかりだ。
「はぁ……」
もういいや。
我慢してたけど、ここは宮廷じゃない。
相手も王女や勇者じゃないんだ。
我慢する必要なんてどこにもない。
「退かないなら……」
「――何してるんだ? お前たち」
「あん? なんだて……あ……」
「あ、あんたは……」
もっとも栄えていて王国の中心と言える街。
平民にとっても憧れの街だけど、私はあまり好きじゃない。
何より王都には王城があり、宮廷がある。
せっかく辞められたのに、王城なんて毎日見える場所にいたら、嫌でもきつい日々を思い出してしまう。
気持ちをリセットするためにも、新天地へ向かうことを決めた。
特に行く当てもない。
なんとなく王都から北へ進み、ラクストという大きな街にやってきた。
王都ほどじゃないけど栄えた街だ。
特にギルドと呼ばれる冒険者の組織がいくつも拠点を構えているとか。
ギルドについてはあまり詳しくないけど、王国に属さない独自の組織らしい。
街中にはギルドが経営するお店も多く並んでいた。
飲食店に洋服屋さん、アイテムショップなんかもある。
チラッと見た限り、武器屋さんもあるみたいだ。
「そろそろ仕事見つけないとな~」
王都を出てすでに一週間が経過した。
当てもなく彷徨って、何もすることなく一日を負える。
休暇としては十分すぎるだろう。
のんびりな時間も悪くないけど、あたしはどうやら落ち着きがないらしい。
忙しくしていた頃の癖か、何かしていないと落ち着かない。
いや、それ以前にお金の問題もある。
「さすがに減ってきたな……」
宮廷で働いてた頃の給料はほとんど貯金していた。
使う暇なんてないほど忙しかったから。
おかげで相当な金額は持っている。
ただ、お金は有限だ。
徐々に減っていくことを実感し、お金は使えばなくなるという当たり前の事実を痛感する。
まだまだ余裕はあるけど、焦りは感じられてきた。
「新しい仕事場、仕事……」
探さないといけない。
街に武器屋はあったし、鍛冶師として雇ってもらう?
現実的だけど、ちょっと不安だ。
また宮廷みたいな環境だったら、地獄のような日々に逆戻り。
さすがに勘弁してほしい。
仕事量は適切、残業代も支払われて、パワハラを受けない環境がいい。
もしくはいっそ……。
「そこの君ー、暇そうだねぇ~」
「よかったらオレたちと遊ばねぇーかー?」
「は?」
道端でぼーっと考えていたら、いつの間にか知らない男たちに囲まれていた。
ガラの悪い男たちが私を見てニヤニヤしている。
「なんだよ」
「俺らもちょうど暇なんだよ」
「別に、あたしは暇してないから。どっか行ってくれる?」
「ちょっと待ってって。少し遊ぶだけだからさー」
その場から立ち去ろうとした私の手を、男の一人がガシっと掴む。
「離して!」
私は思いっきり振りほどいた。
すると男はギロっと私のことを睨む。
「っつ、痛ぇな。何しやがる」
「そっちが掴んできたのが悪いだろ」
「てめぇ……調子に乗ってんじゃねーぞ。ガキのくせに」
男たちは私を取り囲み、威圧するように見下ろしてくる。
私の態度が気に入らなかったのか、全員が怒っていた。
怒りたいのはこっちのほうだ。
この先のことを真剣に悩んでいる時に邪魔されて……。
「どいてくれ」
「口の利き方がなってねーな? そういう奴には教育的指導をしてやらねーと」
こいつら……。
あたしが女だから油断してるんだな。
人数も六対一。
私に乱暴するつもりなのは、やらしい視線から丸わかりだ。
「はぁ……」
もういいや。
我慢してたけど、ここは宮廷じゃない。
相手も王女や勇者じゃないんだ。
我慢する必要なんてどこにもない。
「退かないなら……」
「――何してるんだ? お前たち」
「あん? なんだて……あ……」
「あ、あんたは……」
1
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説


王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。
守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。
だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。
それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。


国護りの力を持っていましたが、王子は私を嫌っているみたいです
四季
恋愛
南から逃げてきたアネイシアは、『国護りの力』と呼ばれている特殊な力が宿っていると告げられ、丁重にもてなされることとなる。そして、国王が決めた相手である王子ザルベーと婚約したのだが、国王が亡くなってしまって……。

【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。
ちゃむふー
恋愛
この国の全ての女性を虜にする程の美貌を備えた『華の騎士』との愛称を持つ、
アイロワニー伯爵令息のラウル様に一目惚れした私の妹ジュリーは両親に頼み込み、ラウル様の婚約者となった。
しかしその後程なくして、何者かに狙われた皇子を護り、ラウル様が大怪我をおってしまった。
一命は取り留めたものの顔に傷を受けてしまい、その上武器に毒を塗っていたのか、顔の半分が変色してしまい、大きな傷跡が残ってしまった。
今まで華の騎士とラウル様を讃えていた女性達も掌を返したようにラウル様を悪く言った。
"醜草の騎士"と…。
その女性の中には、婚約者であるはずの妹も含まれていた…。
そして妹は言うのだった。
「やっぱりあんな醜い恐ろしい奴の元へ嫁ぐのは嫌よ!代わりにお姉様が嫁げば良いわ!!」
※醜草とは、華との対照に使った言葉であり深い意味はありません。
※ご都合主義、あるかもしれません。
※ゆるふわ設定、お許しください。


お妃様に魔力を奪われ城から追い出された魔法使いですが…愚か者達と縁が切れて幸せです。
coco
恋愛
妃に逆恨みされ、魔力を奪われ城から追い出された魔法使いの私。
でも…それによって愚か者達と縁が切れ、私は清々してます─!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる