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「僕が負けたのは君のせいだ!」
「……はい?」
とある日の早朝。
偉大なる勇者様が突然、鍛冶場にやってきて言い放った一言に驚愕する。
私は耳を疑った。
聞き間違えだと思った。
だから、念のために聞き返すことにした。
「えっと……もう一度言ってもらえませんか?」
「聞こえなかったのか? まったくこれだから平民上がりは……目上の人間に同じ説明を二度もさせるなんて」
やれやれと首を横に振る勇者様。
若干イラっときたけどぐっとこらえて、私は表情を作って謝罪する。
「申し訳ありません」
「いいか? よく聞くんだ。僕は先日、魔王の幹部と交戦した」
「はい」
そこは知っている。
勇者と魔王の戦いは、身分を問わず大勢の人間が注目している。
宮廷で鍛冶師として働き、聖剣の調整や管理をしている私が知らないはずがない。
当然、勝敗についても把握済みだ。
「僕は……敗れた。魔王どころか……その幹部に惨敗したんだ」
そう、彼は敗北した。
人類の希望。
勇者エレイン・フォードは、魔王軍幹部の一人が率いる軍勢と交戦。
半日に及ぶ戦闘の末、勇者側の人間は全滅した。
唯一生き残ったのは勇者エレイン一人だけ。
幹部を倒すことも叶わず、むざむざと逃げ帰る結果となった。
勇者惨敗の知らせは瞬く間に王都中に広まり、不安や困惑の声があがっている。
「僕は負けるはずがなかったんだ。勇者である僕が、魔王の幹部ごときに敗れるなんてありえない。ならばなぜ負けたのか? 僕に原因がないのであれば、その他に原因はある。そう思わないか?」
「はぁ……」
「共に戦った騎士たちはよく頑張ってくれていたよ。命を賭して戦う姿は、まさに騎士の鑑だった。彼らに原因はない。ならば答えは一つだ」
そう言いながら、勇者エレインはピシッと指をさす。
「宮廷鍛冶師ソフィア! 君が原因だ!」
「……」
沈黙が流れる。
ダメだ。
もう一度確認して、順を追って説明してもらったけど、やっぱり意味がわからない。
私は困惑しながらエレイン様と視線を合わせる。
エレイン様はとても怒っていた。
「あの、おっしゃっている意味がわからないのですが……」
「愚かだな君は! 僕の聖剣を作り、管理しているのは誰だ?」
「私ですね」
「そうだ! 聖剣は勇者の力そのもの! 僕自身に問題がなかったのであれば、おのずと敗北の原因は聖剣にある!」
この人は……本当に何を言っているのだろう。
情報を追加されても理解できない。
というより、ただの言いがかりだとしか思えない。
「お言葉ですがエレイン様、聖剣の調整に問題はございません。出発前にエレイン様も確認なさり、問題ないとおっしゃっていたはずです」
「その時はそう感じた! 出発後に不具合が発生した! そうに違いない!」
「耐久性や威力の確認もしてあります」
「それが不十分だったと言っているんだ!」
エレイン様は私に怒声を浴びせる。
「……はい?」
とある日の早朝。
偉大なる勇者様が突然、鍛冶場にやってきて言い放った一言に驚愕する。
私は耳を疑った。
聞き間違えだと思った。
だから、念のために聞き返すことにした。
「えっと……もう一度言ってもらえませんか?」
「聞こえなかったのか? まったくこれだから平民上がりは……目上の人間に同じ説明を二度もさせるなんて」
やれやれと首を横に振る勇者様。
若干イラっときたけどぐっとこらえて、私は表情を作って謝罪する。
「申し訳ありません」
「いいか? よく聞くんだ。僕は先日、魔王の幹部と交戦した」
「はい」
そこは知っている。
勇者と魔王の戦いは、身分を問わず大勢の人間が注目している。
宮廷で鍛冶師として働き、聖剣の調整や管理をしている私が知らないはずがない。
当然、勝敗についても把握済みだ。
「僕は……敗れた。魔王どころか……その幹部に惨敗したんだ」
そう、彼は敗北した。
人類の希望。
勇者エレイン・フォードは、魔王軍幹部の一人が率いる軍勢と交戦。
半日に及ぶ戦闘の末、勇者側の人間は全滅した。
唯一生き残ったのは勇者エレイン一人だけ。
幹部を倒すことも叶わず、むざむざと逃げ帰る結果となった。
勇者惨敗の知らせは瞬く間に王都中に広まり、不安や困惑の声があがっている。
「僕は負けるはずがなかったんだ。勇者である僕が、魔王の幹部ごときに敗れるなんてありえない。ならばなぜ負けたのか? 僕に原因がないのであれば、その他に原因はある。そう思わないか?」
「はぁ……」
「共に戦った騎士たちはよく頑張ってくれていたよ。命を賭して戦う姿は、まさに騎士の鑑だった。彼らに原因はない。ならば答えは一つだ」
そう言いながら、勇者エレインはピシッと指をさす。
「宮廷鍛冶師ソフィア! 君が原因だ!」
「……」
沈黙が流れる。
ダメだ。
もう一度確認して、順を追って説明してもらったけど、やっぱり意味がわからない。
私は困惑しながらエレイン様と視線を合わせる。
エレイン様はとても怒っていた。
「あの、おっしゃっている意味がわからないのですが……」
「愚かだな君は! 僕の聖剣を作り、管理しているのは誰だ?」
「私ですね」
「そうだ! 聖剣は勇者の力そのもの! 僕自身に問題がなかったのであれば、おのずと敗北の原因は聖剣にある!」
この人は……本当に何を言っているのだろう。
情報を追加されても理解できない。
というより、ただの言いがかりだとしか思えない。
「お言葉ですがエレイン様、聖剣の調整に問題はございません。出発前にエレイン様も確認なさり、問題ないとおっしゃっていたはずです」
「その時はそう感じた! 出発後に不具合が発生した! そうに違いない!」
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「それが不十分だったと言っているんだ!」
エレイン様は私に怒声を浴びせる。
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