2 / 5
2.女嫌いな王子
しおりを挟む
「ぇ……フロア殿下!?」
フロア・ウェスティ。
ウェンディム王国に三人いらっっしゃる王子様の第一。
特に彼は、女嫌いで有名な王子様だった。
銀色の髪と冷ややかで冷たそうな青い目で、私を睨むように見ている。
何で王子様がここに?
しかもよりによって女嫌いのフロア殿下が!?
私何か悪いことしたっけ?
身に覚えはないけど、殿下がわざわざ私の所を訪れるなんて考えられない。
「あ、あの……」
「……すまないが胃の調子が悪い。改善するポーションはあるか?」
「え、あ、はい。回復系のポーションなら、そこのポーション台の右端にあれば使って頂いて大丈夫です」
「わかった。感謝する」
私はホッとする。
どうやら身体の調子が悪くて、ポーションを貰いに来ただけだったみたい。
何でわざわざ私の所なのかは不明だけど、ポーションを飲んだらすぐ……
ん?
ちょっと待って?
今ポーション台の右端って確か――
「これか」
「あ、ちょっ――」
ごくり、と殿下が紫色のポーションを飲み干した。
それは回復系のポーションなのではなく、私が何となくで作ってしまった惚れ薬だ。
効果は単純。
飲んだ直後に異性を目にすると、その人のことを強く意識するようになる。
胸がドキドキしたり、身体が熱くなったり。
特定の条件下で身体が反応するようになってしまう。
「うっ、何だこの甘さ……」
「で、殿下!」
フロア殿下が頭に手を当ててふらつく。
まずいまずいまずい!
殿下が惚れ薬を飲んでしまった。
しかも身体に合わなかったのかふら付いている。
「だ、大丈夫ですか? 殿下!」
「ぅ、ああ……甘さは気に入らないが、不思議と腹の調子は……」
目と目が合う。
私という異性と。
惚れ薬の発動条件は、飲んだ後に異性を見ること。
今、その条件を満たしてしまった。
「――!」
「で、殿下?」
無反応?
殿下は私を見つめたまま、無表情で固まっている。
あれ、もしかして効果が出ていない?
まさか女嫌いの人に使っても効果が薄かったのかな。
だとしたら助かった。
適当に作ったポーションの所為で、殿下に迷惑をかけずに済む。
そう思って心の中でホッとする。
が、突然――
「お前、名前は何というんだったか?」
「え? あ、ユーリア・インレアスです」
「ユーリアか」
「……ぇ」
フロア殿下の手が、私の頬に優しく触れる。
彼は今まで見せたことないような穏やかな表情で、私の眼を見つめる。
「良い名だな。覚えておこう」
「は、はい」
「ふっ、ではな。仕事中に邪魔をした」
え?
フロア殿下は手を降ろし、私に背を向けて部屋を出て行く。
私はそれを、ポケーっと見送る。
「な、な……なに今の?」
あの女嫌いのフロア殿下が、まるで愛しの女性を見えるような目で私を……
ま、まさか普通に惚れ薬が効いちゃった?
で、でも予想してた効果よりは薄いというか、反応は微妙だったし。
わからない。
わからないけど……なんか。
「ど、ドキドキしたぁ」
男の人とあんなに近くで見つめ合うなんて経験、今までしかたことがなかったから。
私はどんな顔をしていたのだろう。
何となく顔が熱いし、赤くなっていたのは自分でもわかる。
恋愛なんてする機会一生ないと思っていたけど、ちょっと興味は湧いたりした。
ただまぁ、惚れ薬の影響でああなっているだけだと思うし。
効果も一時的だから、きっと明日には元通り。
「ちょっと残念……でも良いよね。薬の力で好きになったって、そんなの長続きするはずないし」
何よりフロア殿下に迷惑をかけてしまう。
効果がキレた時も怖いから、なるべく関わらないようにしよう。
フロア・ウェスティ。
ウェンディム王国に三人いらっっしゃる王子様の第一。
特に彼は、女嫌いで有名な王子様だった。
銀色の髪と冷ややかで冷たそうな青い目で、私を睨むように見ている。
何で王子様がここに?
しかもよりによって女嫌いのフロア殿下が!?
私何か悪いことしたっけ?
身に覚えはないけど、殿下がわざわざ私の所を訪れるなんて考えられない。
「あ、あの……」
「……すまないが胃の調子が悪い。改善するポーションはあるか?」
「え、あ、はい。回復系のポーションなら、そこのポーション台の右端にあれば使って頂いて大丈夫です」
「わかった。感謝する」
私はホッとする。
どうやら身体の調子が悪くて、ポーションを貰いに来ただけだったみたい。
何でわざわざ私の所なのかは不明だけど、ポーションを飲んだらすぐ……
ん?
ちょっと待って?
今ポーション台の右端って確か――
「これか」
「あ、ちょっ――」
ごくり、と殿下が紫色のポーションを飲み干した。
それは回復系のポーションなのではなく、私が何となくで作ってしまった惚れ薬だ。
効果は単純。
飲んだ直後に異性を目にすると、その人のことを強く意識するようになる。
胸がドキドキしたり、身体が熱くなったり。
特定の条件下で身体が反応するようになってしまう。
「うっ、何だこの甘さ……」
「で、殿下!」
フロア殿下が頭に手を当ててふらつく。
まずいまずいまずい!
殿下が惚れ薬を飲んでしまった。
しかも身体に合わなかったのかふら付いている。
「だ、大丈夫ですか? 殿下!」
「ぅ、ああ……甘さは気に入らないが、不思議と腹の調子は……」
目と目が合う。
私という異性と。
惚れ薬の発動条件は、飲んだ後に異性を見ること。
今、その条件を満たしてしまった。
「――!」
「で、殿下?」
無反応?
殿下は私を見つめたまま、無表情で固まっている。
あれ、もしかして効果が出ていない?
まさか女嫌いの人に使っても効果が薄かったのかな。
だとしたら助かった。
適当に作ったポーションの所為で、殿下に迷惑をかけずに済む。
そう思って心の中でホッとする。
が、突然――
「お前、名前は何というんだったか?」
「え? あ、ユーリア・インレアスです」
「ユーリアか」
「……ぇ」
フロア殿下の手が、私の頬に優しく触れる。
彼は今まで見せたことないような穏やかな表情で、私の眼を見つめる。
「良い名だな。覚えておこう」
「は、はい」
「ふっ、ではな。仕事中に邪魔をした」
え?
フロア殿下は手を降ろし、私に背を向けて部屋を出て行く。
私はそれを、ポケーっと見送る。
「な、な……なに今の?」
あの女嫌いのフロア殿下が、まるで愛しの女性を見えるような目で私を……
ま、まさか普通に惚れ薬が効いちゃった?
で、でも予想してた効果よりは薄いというか、反応は微妙だったし。
わからない。
わからないけど……なんか。
「ど、ドキドキしたぁ」
男の人とあんなに近くで見つめ合うなんて経験、今までしかたことがなかったから。
私はどんな顔をしていたのだろう。
何となく顔が熱いし、赤くなっていたのは自分でもわかる。
恋愛なんてする機会一生ないと思っていたけど、ちょっと興味は湧いたりした。
ただまぁ、惚れ薬の影響でああなっているだけだと思うし。
効果も一時的だから、きっと明日には元通り。
「ちょっと残念……でも良いよね。薬の力で好きになったって、そんなの長続きするはずないし」
何よりフロア殿下に迷惑をかけてしまう。
効果がキレた時も怖いから、なるべく関わらないようにしよう。
1
お気に入りに追加
509
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~
日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。
十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。
さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。
異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】百年に一人の落ちこぼれなのに学院一の秀才をうっかり消去しちゃいました
平田加津実
ファンタジー
国立魔術学院の選抜試験ですばらしい成績をおさめ、百年に一人の逸材だと賞賛されていたティルアは、落第を繰り返す永遠の1年生。今では百年に一人の落ちこぼれと呼ばれていた。
ティルアは消去呪文の練習中に起きた誤作動に、学院一の秀才であるユーリウスを巻き込んでしまい、彼自身を消去してしまう。ティルア以外の人の目には見えず、すぐそばにいるのに触れることもできない彼を、元の世界に戻せるのはティルアの出現呪文だけなのに、彼女は相変わらずポンコツで……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。
椎名 富比路
ファンタジー
王国の四男坊ディートヘルム・ボニファティウス王子は、
「冒険者志望なら結婚したくないです」
と、婚約者の王女殿下から婚約破棄されてしまった。
(実際は、家族ともども自由を尊重される)
親族の顔を立てるため、一応「追放」という名目で、追い出してもらう。
僻地の開拓を命じられた体で、冒険者ディータとしての道を進む。
王族はディータに危害は加えないが、資金援助もしない。できない。
わずかな金と武具を持って、たったひとりでの開拓が始まると思っていた。
だが、そこには悪役令嬢が先客として、冒険をしていた。
リユという令嬢は、デカい魔剣を片手に並み居る魔物たちをバッタバッタとやっつけている。
「一人でさみしい」
そんな彼女の独り言を聞いてしまったディータは、命を助けてもらう代わりにリユに食事を振る舞う。
すぐに意気投合した二人は、交際しつつも冒険する。
思っていたより広大な土地を開拓しつつ、二人の領地拡大冒険が始まった。
作物の育たない近隣の土地を活性化し、隣接する王都の騎士団を立て直す。
魔物の攻撃を受け続ける中、ディータはリユがドラゴン族の末裔だと知った。
しかし、彼は恐れることなく、ただのリユとして接する。
お互いの人柄に惚れて、二人は本当の夫婦になっていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?
まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。
☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。
☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。
☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。
☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。
☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
借金完済のために惚れ薬を第二王子にかけました。そろそろ効果が切れるはずなのですが溺愛が止まりません
石田空
恋愛
王立学園に通うぽやぽや下級貴族のイルザは、ある日実家が借金で破産寸前、破産回避のために年齢差四倍の富豪に身売り同然で後妻に入らないといけない危機に直面する。
「年齢差四倍はない。そうだ、惚れ薬を適当にお金持ちな人にかけて借金肩代わりしてもらおう」
唯一の特技の魔法薬調合で惚れ薬をつくったイルザは、早速金持ちを見繕おうとしたら、それをうっかりとクールなことで有名な第二王子のクリストハルトにかけてしまった。
「私なんかが第二王子のお嫁さんなんて無理ぃー!!」
「そんなこと言わないでおくれ、私のバラ、私の小鳥」
「あなた普段のクールをどこで落としてきたんですかぁー!?」
惚れ薬の効力が切れるまでなんとか逃げ切ろうとするイルザと、クールキャラがすっかりとぶっ壊れてしまったクリストハルトが、必死で追いかけっこをする。
*カクヨム、サイトにて先行公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる