13 / 27
第一章
13.チーム戦開幕
しおりを挟む
「アリスの弁当……豪華だな~」
「え、そうですか?」
「普通にオレより多いだろ。そんな食えるのか?」
「はい。食べられますよ」
木陰の下。
私は二人と一緒に昼食をとる。
「美味しそうですね。誰に作ってもらったんです?」
「自分で作りました」
「自分で? アリスさんって料理が出来るんですか?」
「はい。お母さんが忙しくて、使用人もいなかったから自分で作れるように練習したんです」
二人には、私の家のことを話した。
お父さんのこと、お母さんのこと、ライカとレナのこと。
どうして魔術師を目指しているのかも一緒に話して、二人はちゃんと聞いてくれた。
「すっげーな~ 料理なんてしたことないぞ」
「私も全然ですよ」
「イリーナは無理だろ。ガサツだし」
「それライルだけには言われたくないよ」
二人との会話は楽しい。
軽快なやり取りに思わず笑ってしまったりして。
生まれて初めて、同年代で楽しくお話しできる相手を見つけられた。
お友達と呼んでいいのかわからないけど、そうであってほしい。
「ライル君、イリーナさん、改めてありがとうございます。私に声をかけてくれて」
「別に良いって。オレたちも探してたし」
「そうですよ。それに同い年だし、敬語もやめませんか?」
「……良いんですか?」
イリーナが笑顔で答える。
「もちろん。というより私がそのほうが助かると言いますか。敬語って苦手で」
「ガサツだからな」
「だーかーら! ライルにだけは言われたくない!」
イリーナはライルの肩をポカポカ叩く。
見ているだけ面白くて、一緒にいると温かな気持ちになる。
そんな二人の関係は、ちょっぴり羨ましい。
「ふふっ、わかりました。あ、でも私いきなり砕けた話し方は難しいので、その……ゆっくり」
「おう!」
「もちろん。自分のペースで大丈夫」
「ありがとうございます」
ホッとして、感謝を口にした。
同い年の友人がいなかったから、距離感がイマイチわからない。
せっかく仲良くなれそうだし、嫌われないように注意しよう。
そんなことを考えながら昼食を終え、改まって実技試験について話し合いをした。
各々の術式と特徴、戦術を考える。
即興のチームだから、そこまで凝ったことは出来ないけど、出来る限りの準備をしておきたい。
そうして時間は過ぎて――
二次試験開始時刻になる。
会場は学園内にある疑似屋外訓練場。
室内の一室にあり、特殊な魔導具によって広い空間を構築している。
本来の部屋の奥行は無関係に、受験者全員が自由に動き回れる大自然が生成されていた。
「すっげぇな……これ全部作り物なんだろ?」
「そうだけど、感心してる暇はないよ。ほら集中!」
「わかってるって。アリスも準備良いか?」
「う、うん」
私の頭上には球体が浮かんでいる。
つまり、このチームのリーダーは私になった。
球体を割られたら終わりのルールだ。
嫌でも緊張してしまう。
「緊張してるな」
「深呼吸しよ! 大丈夫、私たちも頑張るから!」
「うん」
大丈夫、きっと勝てる。
私は私に言い聞かせる。
今日まで努力してきて、手応えもある。
何よりも、私は誰の弟子なのかを思い出せ。
「頑張ります」
先生の名に恥じないように。
一分後。
試験開始の合図が鳴り響く。
高く澄んだ鐘の音が聞こえて、周囲の気配が一斉に動き出す。
「始まったぜ!」
「作戦通りに行こう!」
「うん!」
◇◇◇
開始直後から次々に戦いが起こる。
一定するまでチームが減れば終了の条件。
場合によっては戦いを避け、最後まで逃げ切ることも戦術。
しかし結局はチームが減らなくては終わらない。
必然的に戦いは起こり、避けられない。
「おい見ろ。あそこに一チームいるぞ」
森の中、茂みに隠れる三人が見つけたのはアリスたちだった。
アリスたちは別チームと交戦した後で、球体を持つリーダー以外が負傷している。
「ねらい目だな」
「ああ。奇襲をかけよう」
「了解だ」
弱っているチームを狙う。
乱戦で不意を突く。
過酷な魔術師の世界を生き抜くのに、卑怯などとは言っていられない。
故に迷いなく、三人はアリスたちに襲い掛かる。
「二人とも後ろ!」
「ちっ!」
イリーナが感知し、ライルの大きな舌打ちが響く。
反応したがすでに手遅れ。
一斉に背後から強襲され、三人とも気絶してしまう。
「はっ! 呆気なかったな」
男の一人が浮かぶ球体に手を伸ばす。
破壊しようと触れた瞬間、球体が木の根に変化する。
「なっ!」
咄嗟に話そうとした手に巻き付き、全身をグルグル巻きにして動きを封じる。
後退しようとした二人の脚にも根が絡まる。
気付けば倒れていたアリスたちが消え、代わりに太い木の根が地面を這っていた。
「な、何だよこれ!」
「罠か? いやでも、さっきまで確かに……」
「ほらよっと!」
暴れる三人の背後からライルが飛び出し、浮かんでいた球体を殴り壊した。
「悪いなあんたら。オレたちの価値だ」
「そ、そんな……」
ガクッと力なく倒れる三人。
そんな彼らを背に、ライルはアリスに親指をたてる。
「完璧だったぜ!」
「うん!」
「え、そうですか?」
「普通にオレより多いだろ。そんな食えるのか?」
「はい。食べられますよ」
木陰の下。
私は二人と一緒に昼食をとる。
「美味しそうですね。誰に作ってもらったんです?」
「自分で作りました」
「自分で? アリスさんって料理が出来るんですか?」
「はい。お母さんが忙しくて、使用人もいなかったから自分で作れるように練習したんです」
二人には、私の家のことを話した。
お父さんのこと、お母さんのこと、ライカとレナのこと。
どうして魔術師を目指しているのかも一緒に話して、二人はちゃんと聞いてくれた。
「すっげーな~ 料理なんてしたことないぞ」
「私も全然ですよ」
「イリーナは無理だろ。ガサツだし」
「それライルだけには言われたくないよ」
二人との会話は楽しい。
軽快なやり取りに思わず笑ってしまったりして。
生まれて初めて、同年代で楽しくお話しできる相手を見つけられた。
お友達と呼んでいいのかわからないけど、そうであってほしい。
「ライル君、イリーナさん、改めてありがとうございます。私に声をかけてくれて」
「別に良いって。オレたちも探してたし」
「そうですよ。それに同い年だし、敬語もやめませんか?」
「……良いんですか?」
イリーナが笑顔で答える。
「もちろん。というより私がそのほうが助かると言いますか。敬語って苦手で」
「ガサツだからな」
「だーかーら! ライルにだけは言われたくない!」
イリーナはライルの肩をポカポカ叩く。
見ているだけ面白くて、一緒にいると温かな気持ちになる。
そんな二人の関係は、ちょっぴり羨ましい。
「ふふっ、わかりました。あ、でも私いきなり砕けた話し方は難しいので、その……ゆっくり」
「おう!」
「もちろん。自分のペースで大丈夫」
「ありがとうございます」
ホッとして、感謝を口にした。
同い年の友人がいなかったから、距離感がイマイチわからない。
せっかく仲良くなれそうだし、嫌われないように注意しよう。
そんなことを考えながら昼食を終え、改まって実技試験について話し合いをした。
各々の術式と特徴、戦術を考える。
即興のチームだから、そこまで凝ったことは出来ないけど、出来る限りの準備をしておきたい。
そうして時間は過ぎて――
二次試験開始時刻になる。
会場は学園内にある疑似屋外訓練場。
室内の一室にあり、特殊な魔導具によって広い空間を構築している。
本来の部屋の奥行は無関係に、受験者全員が自由に動き回れる大自然が生成されていた。
「すっげぇな……これ全部作り物なんだろ?」
「そうだけど、感心してる暇はないよ。ほら集中!」
「わかってるって。アリスも準備良いか?」
「う、うん」
私の頭上には球体が浮かんでいる。
つまり、このチームのリーダーは私になった。
球体を割られたら終わりのルールだ。
嫌でも緊張してしまう。
「緊張してるな」
「深呼吸しよ! 大丈夫、私たちも頑張るから!」
「うん」
大丈夫、きっと勝てる。
私は私に言い聞かせる。
今日まで努力してきて、手応えもある。
何よりも、私は誰の弟子なのかを思い出せ。
「頑張ります」
先生の名に恥じないように。
一分後。
試験開始の合図が鳴り響く。
高く澄んだ鐘の音が聞こえて、周囲の気配が一斉に動き出す。
「始まったぜ!」
「作戦通りに行こう!」
「うん!」
◇◇◇
開始直後から次々に戦いが起こる。
一定するまでチームが減れば終了の条件。
場合によっては戦いを避け、最後まで逃げ切ることも戦術。
しかし結局はチームが減らなくては終わらない。
必然的に戦いは起こり、避けられない。
「おい見ろ。あそこに一チームいるぞ」
森の中、茂みに隠れる三人が見つけたのはアリスたちだった。
アリスたちは別チームと交戦した後で、球体を持つリーダー以外が負傷している。
「ねらい目だな」
「ああ。奇襲をかけよう」
「了解だ」
弱っているチームを狙う。
乱戦で不意を突く。
過酷な魔術師の世界を生き抜くのに、卑怯などとは言っていられない。
故に迷いなく、三人はアリスたちに襲い掛かる。
「二人とも後ろ!」
「ちっ!」
イリーナが感知し、ライルの大きな舌打ちが響く。
反応したがすでに手遅れ。
一斉に背後から強襲され、三人とも気絶してしまう。
「はっ! 呆気なかったな」
男の一人が浮かぶ球体に手を伸ばす。
破壊しようと触れた瞬間、球体が木の根に変化する。
「なっ!」
咄嗟に話そうとした手に巻き付き、全身をグルグル巻きにして動きを封じる。
後退しようとした二人の脚にも根が絡まる。
気付けば倒れていたアリスたちが消え、代わりに太い木の根が地面を這っていた。
「な、何だよこれ!」
「罠か? いやでも、さっきまで確かに……」
「ほらよっと!」
暴れる三人の背後からライルが飛び出し、浮かんでいた球体を殴り壊した。
「悪いなあんたら。オレたちの価値だ」
「そ、そんな……」
ガクッと力なく倒れる三人。
そんな彼らを背に、ライルはアリスに親指をたてる。
「完璧だったぜ!」
「うん!」
0
お気に入りに追加
578
あなたにおすすめの小説
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
借金まみれの貧乏令嬢、婚約者に捨てられ王子様に拾われる ~家を再興するため街で働いていたら、実は王子様だった常連に宮廷へスカウトされました~
日之影ソラ
恋愛
五年前に両親が病で亡くなり、由緒正しき貴族の名家ルストワール家は没落寸前に追い込まれてしまった。何とか支援を受けてギリギリ持ち超えたたものの、今までの地位や権威は失ってしまった。
両親の想いを継ぎ、没落寸前の家を建て直すため街で働くアイリス。他の貴族からは『貧乏令嬢』と呼ばれる笑われながらも必死に働いていた。
そんなある日、婚約者で幼馴染のマルクから婚約破棄を言い渡される。女好きで最低だった彼の本性を知り、さらにはその父親もいやらしい目で彼女を見てくる。
それでもめげずに頑張ろうとするアイリスに、思わぬところから救いの手が伸びる。
これはどん底に落ちた一人の少女が、努力と無自覚な才能を駆使して幸せを掴む物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる