虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~

日之影ソラ

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 襲い掛かる暗殺者たちに、私は右手をかざす。
 振り下ろされた刃は空で止まる。
 一つとして、私の肌には届いていない。

「――! これは光の結界! 貴様も異能者か!?」
「当然でしょう? ここは王家のパーティー会場よ。集まったほとんどの人間が貴族か王族……異能者しかいないわ」
「チッ!」

 結界に阻まれた暗殺者たちは距離をとる。
 彼らは私を囲むように回り、一人の男が合図した直後、全員の姿が消える。

「消えた……?」

 なるほどね。
 これが暗殺者たちの異能というわけ?
 姿を消し、音や気配も感じられない。
 全員が同じ異能を持っている。
 暗殺者にピッタリな異能……この力があったから、私もギリギリまで気配に気づけなかった。
 ただ、私に見つかった時は異能を発動していなかったところを見ると、制限時間があるのかしら?
 少なくとも無制限に使えるわけじゃないわね。
 それに……。

「姿を消しているだけで、実体が消えるわけじゃない……よね?」

 見えないだけでいる。
 それなら、私の異能で捕えることはできる。

 ペキペキペキ。
 瞬間、私の四方から斬りかかろうとした暗殺者たちが氷に足をとられる。
 
「な、なんだこれは!」
「氷だと!」

 声を発した後で姿が見える様になる。
 制限時間なのか。
 それとも何かに触れられることで効果が切れてしまうのか。
 どちらでもいいけど、全員の姿がハッキリと見えるようになった。
 
「残念だったわね」
「くそっ! 他にも異能者がいたのか?」
「そんなわけないでしょう? ここにいるのは私一人、これも私の異能よ」
「ば、馬鹿な! ありえない! お前はさっき光の結界を使っていただろう! 異能は一人につき一つだけ! 例外は存在しない!」

 そう、異能は一人一つしかもっていない。
 炎を操る異能、水を操る異能、時間を操る異能、結界の異能。
 様々な種類が存在するけど、複数の異能を持っている例は存在しない。
 
「私もそうよ」
「だ、だったらこの力は!」
「一つよ。私が持つ異能は――」

 私は凍っていく暗殺者に触れる。

「触れた相手の異能を強化する代わりに、その異能を模倣すること」
「な、なんだ……急に力が溢れて」
「あなたの異能、とっても便利そうだから貰っていくわ。代わりに強化してあげるけど、もう使う機会はないでしょうね」
「や、やめろ!」

 ペキペキと足元から氷が全身へとめぐる。
 表面だけではない。
 足先から徐々に、体の芯を凍結する。

「さようなら。パーティーが終わる頃には、溶けてなくなっているわ」

 氷の彫刻が完成する。
 完全に氷漬けになった暗殺者たちが目覚めることはない。

「はぁ……せっかくのんびりできそうな場所だったのに」
「――面白いものを見せてもらったぞ」
「え――」

 背後から声がした。
 気配に気づけなかった。
 暗殺者の生き残り?
 咄嗟に身構え、大きく下がりながら振り向く。
 背後に立っていたのは青い瞳の男性だった。
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