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荷物の整理を済ませ、別宅へ運ぶ。
「ありがとう。あとは私が自分でやるわ」
「かしこまりました」
この屋敷は使用人の人数も少ないみたいだ。
当主が人間嫌いだと周りも苦労しそうね。
「思った通りいい場所ね」
別宅の庭に出て呟く。
隣は森になっていて、庭には小さな池もある。
とても穏やかで居心地がいい。
街の中心から離れていて、立地はそれほどよくはない。
だけど雰囲気は完璧だ。
「あとは動物たちが……あら?」
森のほうから顔を出す。
狼、大きなクマ、鳥やウサギたち。
本来は狩り狩られる動物たちが一緒になって私の元へ。
「あなたたちついてきたの?」
彼らは皆、王都で私と出会った動物たちだった。
出会い方はバラバラだけど、私と仲良くしているうちに他の動物同士も仲良くなったらしい。
王都の近くにある小さな林に隠れ住んでいて、私がいくと出迎えてくれていた。
「わざわざ馬車を追って?」
よく見ると他にもいる。
私が王都を出るなんて初めてだったから、心配でついてきてくれたのかしら?
「ありがとう、みんな」
動物たちは素直で優しい。
ずらっと並ぶ彼らを見て感慨にふける。
この子たちは私で慣れているし、私のいうことなら聞いてくれる。
人間を襲うことはない。
「みんながいれば本当にできちゃいそうね」
私にはやりたいことがあった。
それは、動物たちと過ごせるカフェテリアを作ることだ。
動物たちの可愛さを、愛おしさを多くの人たちに知ってほしい。
なんて殊勝なことを考えているわけじゃない。
単に見せびらかせたいんだ。
私の大切な友人たちを。
人間には嫌われるけど、動物たちにはこんなにも好かれて幸せだということを。
彼には好きにしていいと言われている。
私は三日ほどかけて物を準備して、カフェテリアを開けるだけの環境を整えた。
実はこっそり勉強していて、料理や紅茶の入れ方も心得ている。
まだまだ未熟だけど、やろうと思えば今すぐにでも働けるように。
動物たちも準備を手伝ってくれた。
彼らは私の言葉を理解しているように、的確に動いてくれる。
「できたわね」
あっという間に場所だけは完成した。
形だけはカフェテリアだ。
しかも可愛らしい動物たちがいたるところにいる。
準備中に森の動物たちもこっちを観察していて、何匹かはすでに仲良くなった。
私たちが敵じゃないと認識してくれたみたいだ。
「紅茶でも飲みましょうか」
自分の分を入れて、テラスでくつろぐ。
形は完成しても所詮はガワだけだ。
本当にカフェを経営するわけじゃない。
ここはジークウェル家の敷地内。
人を呼び込むにはさすがに当主の許可が必要になる。
「許すわけないでしょうけど」
人間嫌いな当主がそれを許可するとは思えない。
この三日間、ろくに会話もしていない。
今までの婚約者の中で一番冷めている。
けどおかげで私も動きやすかった。
愛はないけど、このまま動物たちと快適に生活できるなら悪くない。
そんなことを思っていた。
「みゃー」
「ん? どうしたのプル」
プルが教えてくれる。
本館のほうから誰かが見ている。
視線を向けるとそこには……。
「アイセ様?」
じっとこちらを見ていた。
私のしていることが気に入らないのかと思ったけど、どうにも視線がおかしい。
なんだか……羨ましそうに見える。
「さすがに気のせいよね」
「ありがとう。あとは私が自分でやるわ」
「かしこまりました」
この屋敷は使用人の人数も少ないみたいだ。
当主が人間嫌いだと周りも苦労しそうね。
「思った通りいい場所ね」
別宅の庭に出て呟く。
隣は森になっていて、庭には小さな池もある。
とても穏やかで居心地がいい。
街の中心から離れていて、立地はそれほどよくはない。
だけど雰囲気は完璧だ。
「あとは動物たちが……あら?」
森のほうから顔を出す。
狼、大きなクマ、鳥やウサギたち。
本来は狩り狩られる動物たちが一緒になって私の元へ。
「あなたたちついてきたの?」
彼らは皆、王都で私と出会った動物たちだった。
出会い方はバラバラだけど、私と仲良くしているうちに他の動物同士も仲良くなったらしい。
王都の近くにある小さな林に隠れ住んでいて、私がいくと出迎えてくれていた。
「わざわざ馬車を追って?」
よく見ると他にもいる。
私が王都を出るなんて初めてだったから、心配でついてきてくれたのかしら?
「ありがとう、みんな」
動物たちは素直で優しい。
ずらっと並ぶ彼らを見て感慨にふける。
この子たちは私で慣れているし、私のいうことなら聞いてくれる。
人間を襲うことはない。
「みんながいれば本当にできちゃいそうね」
私にはやりたいことがあった。
それは、動物たちと過ごせるカフェテリアを作ることだ。
動物たちの可愛さを、愛おしさを多くの人たちに知ってほしい。
なんて殊勝なことを考えているわけじゃない。
単に見せびらかせたいんだ。
私の大切な友人たちを。
人間には嫌われるけど、動物たちにはこんなにも好かれて幸せだということを。
彼には好きにしていいと言われている。
私は三日ほどかけて物を準備して、カフェテリアを開けるだけの環境を整えた。
実はこっそり勉強していて、料理や紅茶の入れ方も心得ている。
まだまだ未熟だけど、やろうと思えば今すぐにでも働けるように。
動物たちも準備を手伝ってくれた。
彼らは私の言葉を理解しているように、的確に動いてくれる。
「できたわね」
あっという間に場所だけは完成した。
形だけはカフェテリアだ。
しかも可愛らしい動物たちがいたるところにいる。
準備中に森の動物たちもこっちを観察していて、何匹かはすでに仲良くなった。
私たちが敵じゃないと認識してくれたみたいだ。
「紅茶でも飲みましょうか」
自分の分を入れて、テラスでくつろぐ。
形は完成しても所詮はガワだけだ。
本当にカフェを経営するわけじゃない。
ここはジークウェル家の敷地内。
人を呼び込むにはさすがに当主の許可が必要になる。
「許すわけないでしょうけど」
人間嫌いな当主がそれを許可するとは思えない。
この三日間、ろくに会話もしていない。
今までの婚約者の中で一番冷めている。
けどおかげで私も動きやすかった。
愛はないけど、このまま動物たちと快適に生活できるなら悪くない。
そんなことを思っていた。
「みゃー」
「ん? どうしたのプル」
プルが教えてくれる。
本館のほうから誰かが見ている。
視線を向けるとそこには……。
「アイセ様?」
じっとこちらを見ていた。
私のしていることが気に入らないのかと思ったけど、どうにも視線がおかしい。
なんだか……羨ましそうに見える。
「さすがに気のせいよね」
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