悪役令嬢もふもふカフェ ~人間には嫌われる私の嫁ぎ先は冷徹公爵様でした。勝手に生きろと言われたので動物カフェを作ります~

日之影ソラ

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 ここはジルムット家の本宅。
 当主であるお父様は当然、プルとベルの存在には気づいている。
 お父様は動物が嫌いで、滅多に私の部屋には入ってこない。
 顔を見る度に嫌味を言ってくる。
 私のことを悪く言うより、二匹のことを悪く言われるほうが……正直嫌だった。

「言われなくてもそうしますわ。この子たちを、こんな場所に置いていくつもりはありませんから」
「そうか、ならいい。忘れて行けばこちらで処分するつもりだった」

 処分……殺すつもりだったのね。
 動物だって生きている。
 それを簡単に殺すなんて……本当に最低な人。

「話はそれで最後ですね? でしたら出て行ってくださいますか? 準備の邪魔です」
「……二度と戻ってこないことを期待する」
「ええ、私もですわ」

 お父様は私のことも、プルとベルのことも嫌いだ。
 だから私も、お父様のことを嫌いになった。
 ガチャリとしまった扉を見つめながら、大きくため息をこぼす。
 
「……本当に親子なのかしら」

 疑わしさを感じながら、ベッドへと視線を向ける。

「あら?」

 二匹とも出てこない。
 いつもなら、私だけになった途端に顔を出すのに。
 よほどお父様が怖かったのかしら?
 それとも……。

 ガチャリ。
 ノックもなしに、部屋の扉が開く。
 どうやら、それとも……のほうだったらしい。
 私は呆れながら振り返り、予想通りの人物が部屋に入ってくる。

「こんにちは、お姉さま」
「リベル……勝手に入ってこないでと言っているでしょう?」
「いいじゃないですか。私たちは姉妹なんですもの」

 ニコリと無邪気に微笑むのは、私の実の妹リベル。
 彼女だけは頻回に私のところに顔を出してくる。
 ただしもちろん、私のことは嫌いだ。

「聞きましたわ。また婚約を破棄されてしまったみたいですね」
「ええ、そうよ」
「可哀そうなお姉さま……こんなに魅力的なお姉さまなのに、どうして嫌われるんでしょう」
「どうしてでしょうね」

 白々しい。
 表面上はニコニコしていて明るいけど、彼女の腹の中は真っ黒だ。
 リベルは私とは正反対。
 人間に、特に男性には好かれやすい。
 今も日に何通もの恋文を貰い、多くの男性から求婚されている。
 私の元婚約者たちも、私から離れてすぐにリベルのもとに求婚しに行っている。
 さっき破棄した五人目もそのつもりだった。
 
「私も困っているのですよ。お姉さまが婚約を破棄されるたびに私のところに来るんです。私よりお姉さまと結婚していただきたいのに」
「そう? いいじゃない。あなたが結婚しても」
「嫌ですよぉー。結婚するお相手は、ちゃんと好きになった人って決めているんです。政略結婚なんて愛がないこと絶対に嫌です。だからそういうのは、お姉さまにお任せします」

 表情や仕草は可愛らしくても、言動には腹黒さがにじみ出ている。
 特に私に対しては顕著だった。
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