2 / 9
2
しおりを挟む
「心を見透かす? そんなことできたらもっと楽だったわね」
呆れてしまう。
彼らが私を嫌う理由は、単純にイメージだ。
私の瞳が、雰囲気がそうさせる。
心を覗く力なんて私の眼には宿っていない。
人の心なんてわかったことがない。
幾度も悪感情をぶつけられ、裏切られてきた。
おかげで表情や仕草から、相手の考えを予想することはできるようになった。
その程度なんだ。
私には特別な力なんてない。
彼らにもそう伝えている。
けど、信じてもらえない。
本能的な恐怖でもあるのだろうか。
私を見た人たちは、こぞって同じ反応をする。
恐ろしい者でも見るみたいに眉を顰め、自然に足が後ろへと向く。
小さいころからずっと、私は人間に嫌われてきた。
それでも婚約の話が続けてくるのは、私がジルムット家の長女だからだろう。
王国に属する貴族の中でも古株で、王族に追随する権力、地位を持っている私の家と懇意にすることで、自分たちの地位を確かなものにする。
そのために長女である私との婚約は美味しい話だった。
加えて私は嫌われ者で、競争率は低い。
所詮は政治的な道具、愛のない婚約だ。
適当に相手をして、地位と権力だけ手に入れられたらそれでいい。
私と婚約した五人の貴族たちは、皆そういう考えだっただろう。
ただ、彼らは耐えられなかった。
私と対面し、会話し、共に時間を過ごすことに。
耐えかねて婚約破棄を言い渡す。
平均して一月くらいが限界のようだ。
「そんなに怖いかしら? 私の眼は」
鏡に向かって問いかける。
別段、自分で見ても恐怖は感じない。
ただの瑠璃色の眼だ。
他人は先入観があっていけない。
私は心が読めるなんて噂もあって、関わりのない人間にすら怖がられている。
人間であれば誰でも、私のことを嫌うのだろう。
両親……肉親でさえそうなのだから。
「みゃあ~」
「ん? ああ、ごめんなさい。もう出てきていいわよ」
ベッドの下から二匹の猫が顔を出す。
白い毛並みの猫と、虎の猫。
二匹は私の足元にすり寄って、甘えて声で鳴く。
「みゃー」
「マーオ」
「わかってるわ。ご飯の時間ね」
ちょうどお昼過ぎ。
二匹にご飯をあげている時間だ。
私はせっせと二匹分のご飯を用意してあげる。
ご飯を見た途端にはしゃぎだす。
夢中になって食べている姿はとても愛らしい。
「ふふっ、そんなに急がなくてもなくならないわよ」
動物はいい。
人間と違って、悪感情を向けてこない。
私は人間には嫌われるけど、動物たちには好かれるらしい。
白いほうはプル、虎柄はベル。
一年ほど前、外を歩いている時に子猫を見つけて保護したのがきっかけで、今ではこうして一緒に生活している。
「みゃ、みゅあー」
「水ね。すぐに用意するわ」
私には人の心を覗く力はない。
だけどなんだか、動物たちの言葉は感じられる。
聞こえて理解できるわけじゃない。
本当になんとなく、何を伝えたいのかが頭に浮かぶんだ。
そのおかげもあって、動物たちとのコミュニケーションは良好。
「人間相手とは大違いね……」
呆れてしまう。
彼らが私を嫌う理由は、単純にイメージだ。
私の瞳が、雰囲気がそうさせる。
心を覗く力なんて私の眼には宿っていない。
人の心なんてわかったことがない。
幾度も悪感情をぶつけられ、裏切られてきた。
おかげで表情や仕草から、相手の考えを予想することはできるようになった。
その程度なんだ。
私には特別な力なんてない。
彼らにもそう伝えている。
けど、信じてもらえない。
本能的な恐怖でもあるのだろうか。
私を見た人たちは、こぞって同じ反応をする。
恐ろしい者でも見るみたいに眉を顰め、自然に足が後ろへと向く。
小さいころからずっと、私は人間に嫌われてきた。
それでも婚約の話が続けてくるのは、私がジルムット家の長女だからだろう。
王国に属する貴族の中でも古株で、王族に追随する権力、地位を持っている私の家と懇意にすることで、自分たちの地位を確かなものにする。
そのために長女である私との婚約は美味しい話だった。
加えて私は嫌われ者で、競争率は低い。
所詮は政治的な道具、愛のない婚約だ。
適当に相手をして、地位と権力だけ手に入れられたらそれでいい。
私と婚約した五人の貴族たちは、皆そういう考えだっただろう。
ただ、彼らは耐えられなかった。
私と対面し、会話し、共に時間を過ごすことに。
耐えかねて婚約破棄を言い渡す。
平均して一月くらいが限界のようだ。
「そんなに怖いかしら? 私の眼は」
鏡に向かって問いかける。
別段、自分で見ても恐怖は感じない。
ただの瑠璃色の眼だ。
他人は先入観があっていけない。
私は心が読めるなんて噂もあって、関わりのない人間にすら怖がられている。
人間であれば誰でも、私のことを嫌うのだろう。
両親……肉親でさえそうなのだから。
「みゃあ~」
「ん? ああ、ごめんなさい。もう出てきていいわよ」
ベッドの下から二匹の猫が顔を出す。
白い毛並みの猫と、虎の猫。
二匹は私の足元にすり寄って、甘えて声で鳴く。
「みゃー」
「マーオ」
「わかってるわ。ご飯の時間ね」
ちょうどお昼過ぎ。
二匹にご飯をあげている時間だ。
私はせっせと二匹分のご飯を用意してあげる。
ご飯を見た途端にはしゃぎだす。
夢中になって食べている姿はとても愛らしい。
「ふふっ、そんなに急がなくてもなくならないわよ」
動物はいい。
人間と違って、悪感情を向けてこない。
私は人間には嫌われるけど、動物たちには好かれるらしい。
白いほうはプル、虎柄はベル。
一年ほど前、外を歩いている時に子猫を見つけて保護したのがきっかけで、今ではこうして一緒に生活している。
「みゃ、みゅあー」
「水ね。すぐに用意するわ」
私には人の心を覗く力はない。
だけどなんだか、動物たちの言葉は感じられる。
聞こえて理解できるわけじゃない。
本当になんとなく、何を伝えたいのかが頭に浮かぶんだ。
そのおかげもあって、動物たちとのコミュニケーションは良好。
「人間相手とは大違いね……」
3
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説

【完結】契約結婚だったはずが、冷徹公爵が私を手放してくれません!
21時完結
恋愛
公爵家の没落を救うため、冷徹と名高い公爵ヴィンセントと契約結婚を結んだリリア。愛のない関係のはずが、次第に見せる彼の素顔に心が揺れる。しかし契約の期限が近づく中、周囲の陰謀や彼の過去が二人を引き裂こうとする。契約から始まった偽りの結婚が、やがて真実の愛へと変わる――。

婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!

国王陛下は仮面の下で笑う ~宮廷薬師がダメなら王妃になれ、ってどういうことですか~
佐崎咲
恋愛
若くして国王となったユーティス=レリアードは、愚王と呼ばれていた。
幼少の頃に毒を盛られた後遺症でネジが飛んだのだろうともっぱらの噂だった。
そんなユーティスが幼い頃縁のあった薬師の少女リリアの元を訪ねてくる。
用件は「信頼できるリリアに宮廷薬師として王宮に来てほしい」というもの。
だがリリアは毒と陰謀にまみれた王宮なんてまっぴらごめんだった。
「嫌。」の一言で断ったところ、重ねられたユーティスの言葉にリリアはカッとなり、思い切り引っぱたいてしまう。
しかしその衝撃によりユーティスは愚王の仮面を脱ぎ、再び賢王としての顔を町の人々に向ける。
リリアは知っていた。そのどちらも彼がかぶっている仮面に過ぎないことを。
だけど知らなかった。それら全てが彼の謀略であることを。
すべては、リリアを王妃にするためだった。
張り巡らされたユーティスの罠に搦めとられたリリアは、元ののんびりした生活に戻ることはできるのか。
========
本編完結しましたが、書ければ番外編など追加していく予定です。
なろうにも掲載していますが、構成など異なります。
最終章は、こちらではじれじれ編。
なろうは、一発殴りに行っての砂糖吐く激甘仕様(アイリーン無双入り)です。
どっちも書きたくてこうなりました……。
※無断転載・複写はお断りいたします。
平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子
深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……?
タイトルそのままのお話。
(4/1おまけSS追加しました)
※小説家になろうにも掲載してます。
※表紙素材お借りしてます。

身代わりで嫁入りした先は冷血公爵でした
日之影ソラ
恋愛
公爵家に仕える侍女サラ。彼女が仕えるリーゼお嬢様はとっても我儘で夢見がち。運命の相手と出会うことを夢見るお嬢様は、いつも侍女のサラに無理難題を押し付ける。それに何とか応えようと努力するサラ。
ある日、貴族同士の交流目的で開かれたパーティーに出席したことをきっかけに、リーゼに縁談の話が持ちかかる。親同士が勝手に盛り上がり決めてしまった縁談に、表向きは嬉しそうに従うリーゼだったが、内心は怒り心頭だった。
親が勝手に決めた相手、しかもその人物は冷血公爵とさえ呼ばれる不愛想な男。絶対に結婚したくないリーゼは、サラに思わぬ提案をする。
「ちょっとサラ! 私の代わりに冷血公爵に嫁入りしなさい」
またしても無理難題を押し付けられ、従うしかないサラは変装して嫁入りすることに。
自分をリーゼと偽り窮屈な日々が始まる……と思ったら、冷血だと思っていた公爵様の意外な優しさに触れて?

虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~
日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。
十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。
さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。
異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。

お前は整形した醜い顔だと婚約破棄されたので溺愛してくれる王子に乗り換えます! 実は整形なんてしていなかったと気づいてももう遅い
朱之ユク
恋愛
美しい顔をしたスカーレットは突如それまで付き合ってくれていた彼氏にお前の顔は整形だと言われて婚約破棄を言い渡されてしまう。彼氏はそのままスカーレットのことを罵りまくるが実はスカーレットは整形なんてしてない。
正真正銘の美しい顔でいただけだ。多少メイクはしているけど、醜いと罵られる覚えはありません。
溺愛してくれる王子と新たに婚約することになったので、いまさら復縁したいと言ってももう遅い!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる