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キセキレイと道案内
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「効果が長く続くのも、付与魔法ではなく精霊として生まれたからだよ。精霊の魔力は、源流となった物に依存する。君が生み出した精霊は、君の想いが魔力に籠っている。故に、源流は人の想いだ」
「願うことで、魔力が補充されるということですか?」
「簡単に言うとそうだね。君、鶴が届いた人に、折り紙に願いを書くよう記していただろう?」
「はい。その効果が発動して、困っている人の助けになればと」
「付与魔法が使えない人が、願いを書くだけで効果を発揮するなんてありえないよ」
そう言いながらファルス様は笑っていた。
「ありえないは言い過ぎじゃ……そういう効果を付与しておけば可能じゃありませんか?」
「それができるのは君だけだよ」
「私だけ……」
「僕も多くの魔法使いを見てきたし、パーティーにも優秀な魔法使いがいる。彼も言っていたよ。こんな芸当は、同じ魔法使いにもできないってね」
勇者パーティーに選ばれるほどの魔法使い。
そんな人ですら、私がやってきたことが異常だと言っているらしい。
改めて思う。
私の力は……。
「どうして、こんなことができるんですか?」
「さぁね。それはわからない。君と同じことができる人に会ったことがないから」
「そう、ですか……」
「ただ一つ言えるのは、君が特別だということだ」
「――特別……」
なんでこの程度の魔法も使えないのか。
才能がない。
無能で、付与魔法以外に取り柄がない失敗作。
誰からも期待されなかった。
そんな私に彼は――
「誇るべきだよ。君が持つ才能は、君にだけ許された奇跡だ」
「――!」
誰かに認めてほしかった。
自分自身の欲に気づいたからこそ、欲しかった言葉がたくさんある。
ファルス様は私に、その一つをくれた。
君は特別だ。
貰った言葉を噛みしめるように、私はぎゅっと自分の胸に手を当てる。
「ありがとうございます」
「助けられているのは、僕のほうだけどね。ほら」
ファルス様が指をさす。
前方の森の中に、人工物が姿を見せる。
石を積んで作られた簡易的な門だ。
木の柵で覆われた小さな村が顔を出し、馬車が止まる。
「到着しました。この村で間違いありませんか?」
老夫婦が馬車の窓から外を覗く。
二人とも小さく頷いた。
「はい。ここが私たちの村です」
ファスル様はニコリと微笑み、老夫婦を馬車からゆっくりと降ろす。
私がその様子を見守っていると、案内してくれたキセキレイの折り紙がお爺さんの肩に乗った。
「これは……?」
「その子が道案内をしてくれたんです」
「そうでしたか。ありがとうね」
お婆さんがキセキレイを優しく撫でてあげた。
本物の鳥のように、頭をピコピコ動かして可愛らしい。
「あの、よければその子を、外出の際は連れて行ってあげてください。道案内を頼めばしてくれます」
「本当ですか? でもこの子は……」
見て、触れたから気づくだろう。
二人とも疑問を浮かべている。
「はい。折り紙です」
「彼女が作った折り紙の精霊です」。ちゃんと意思を持っていますよ」
「精霊……そんなに大切なもの、受け取っていいのですか?」
「はい。その子たちに込めた願いは、お二人が迷わず、行きたい場所に行けるように……でしたから」
想いが精霊の力になるのなら、二人が願い続けることで、キセキレイの折り紙は生き続ける。
次に孫の顔を見る機会があったら、ぜひとも紹介してあげてほしい。
そう伝えると、二人は嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。道案内だけじゃなく、こんなに素敵な贈り物までもらって」
「ワシらは幸せものだ」
「――いえ、こちらこそ」
感謝の言葉を貰えるだけで、私の心は満たされる。
そう、私はずっと……これがほしかったんだ。
「願うことで、魔力が補充されるということですか?」
「簡単に言うとそうだね。君、鶴が届いた人に、折り紙に願いを書くよう記していただろう?」
「はい。その効果が発動して、困っている人の助けになればと」
「付与魔法が使えない人が、願いを書くだけで効果を発揮するなんてありえないよ」
そう言いながらファルス様は笑っていた。
「ありえないは言い過ぎじゃ……そういう効果を付与しておけば可能じゃありませんか?」
「それができるのは君だけだよ」
「私だけ……」
「僕も多くの魔法使いを見てきたし、パーティーにも優秀な魔法使いがいる。彼も言っていたよ。こんな芸当は、同じ魔法使いにもできないってね」
勇者パーティーに選ばれるほどの魔法使い。
そんな人ですら、私がやってきたことが異常だと言っているらしい。
改めて思う。
私の力は……。
「どうして、こんなことができるんですか?」
「さぁね。それはわからない。君と同じことができる人に会ったことがないから」
「そう、ですか……」
「ただ一つ言えるのは、君が特別だということだ」
「――特別……」
なんでこの程度の魔法も使えないのか。
才能がない。
無能で、付与魔法以外に取り柄がない失敗作。
誰からも期待されなかった。
そんな私に彼は――
「誇るべきだよ。君が持つ才能は、君にだけ許された奇跡だ」
「――!」
誰かに認めてほしかった。
自分自身の欲に気づいたからこそ、欲しかった言葉がたくさんある。
ファルス様は私に、その一つをくれた。
君は特別だ。
貰った言葉を噛みしめるように、私はぎゅっと自分の胸に手を当てる。
「ありがとうございます」
「助けられているのは、僕のほうだけどね。ほら」
ファルス様が指をさす。
前方の森の中に、人工物が姿を見せる。
石を積んで作られた簡易的な門だ。
木の柵で覆われた小さな村が顔を出し、馬車が止まる。
「到着しました。この村で間違いありませんか?」
老夫婦が馬車の窓から外を覗く。
二人とも小さく頷いた。
「はい。ここが私たちの村です」
ファスル様はニコリと微笑み、老夫婦を馬車からゆっくりと降ろす。
私がその様子を見守っていると、案内してくれたキセキレイの折り紙がお爺さんの肩に乗った。
「これは……?」
「その子が道案内をしてくれたんです」
「そうでしたか。ありがとうね」
お婆さんがキセキレイを優しく撫でてあげた。
本物の鳥のように、頭をピコピコ動かして可愛らしい。
「あの、よければその子を、外出の際は連れて行ってあげてください。道案内を頼めばしてくれます」
「本当ですか? でもこの子は……」
見て、触れたから気づくだろう。
二人とも疑問を浮かべている。
「はい。折り紙です」
「彼女が作った折り紙の精霊です」。ちゃんと意思を持っていますよ」
「精霊……そんなに大切なもの、受け取っていいのですか?」
「はい。その子たちに込めた願いは、お二人が迷わず、行きたい場所に行けるように……でしたから」
想いが精霊の力になるのなら、二人が願い続けることで、キセキレイの折り紙は生き続ける。
次に孫の顔を見る機会があったら、ぜひとも紹介してあげてほしい。
そう伝えると、二人は嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。道案内だけじゃなく、こんなに素敵な贈り物までもらって」
「ワシらは幸せものだ」
「――いえ、こちらこそ」
感謝の言葉を貰えるだけで、私の心は満たされる。
そう、私はずっと……これがほしかったんだ。
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