13 / 28
キセキレイと道案内
5
しおりを挟む
「さぁ、君の力は精霊を生み出すことだ。その力で、新しい命を生み出してくれ」
「はい!」
自分のことは案外、自分じゃわからない。
ファルス様に力を教わった。
私に何ができるのか。
やることは変わらないのに、いつものよりも気持ちが楽だ。
折り紙を取り出し、膝の上で折る。
それをファルス様は眺めている。
「鶴かい?」
「いえ、今回はキセキレイという鳥をイメージして折っています」
「キセキレイ? 聞いたことのない鳥の名前だね」
それは当然だろう。
この世界には存在しない鳥の種類だ。
前世ではほとんどベッドの上で過ごした。
退院しても自宅待機で、退屈な時間を紛らわすために、動画を眺めていたりした。
その中で、動物の紹介をしている動画があった。
キセキレイ。
体長二十センチほどの小鳥で、見た目はスズメに少し似ている。
彼らは人や車の行く先を少しずつ移動しながら、餌となるカゲロウやユスリカなどの餌をさがす習性がある。
その様子は、まるで道案内をしてくれているようだった。
村までの道案内をしてもらうには、この鳥が一番だろうと思った。
折り方のレシピはない。
私が知っているキセキレイの見た目から、それに近づくように折っていく。
前世でもやることがなかった私は、暇を見つけて折り紙を折っていた。
お陰で今は、初見の物でもある程度は近い形に折ることができる。
「できました!」
「凄いな。ちゃんと鳥に見える。鶴とも違う」
「ありがとうございます」
ここに魔法を……ううん、精霊を宿す。
方法は今までと同じ、付与魔法の要領でいいはずだ。
飛行、探索、案内。
付与する効果をイメージして、一緒に私の願いを込める。
二人の住む村を探してほしい。
二人を無事に送り届けられますように。
効果が付与されたことで、キセキレイの折り紙はパタパタと飛び上がる。
そのまま上昇し、ぐるぐると周囲を飛び回る。
「探してくれているんだね」
「はい」
しばらく待つ。
すると、キセキレイの折り紙はゆっくりと降下してきた。
私の手のひらに留まる。
「見つかった?」
小さく頷いたように見えた。
「じゃあ、案内してもらっていいかな?」
私がお願いすると、キセキレイの折り紙は跳び上がり、馬車の先頭を舞う。
こっちだぞ、と、教えてくれている。
「よし、出発だ」
「はい!」
キセキレイの道案内に従いながら、ファルス様が馬車を走らせる。
飛ぶ鳥を見つめながら思う。
確かに、あれがただの付与魔法による行動には見えない。
私の想いに応えて村を探し、案内を頼んで頷いた。
まるで、生きている本物の鳥のように羽ばたく。
「本当に……」
「精霊だよ。君の想いから生まれた。いわば君の心の分身だ」
「私の……」
分身。
私は自分の胸に手を当てる。
今までも、私の心が形になって、命を宿して羽ばたいていた。
それが多くの人の元に届き、支えになっていたのだとしたら……。
「嬉しいです」
「そうか」
自己満足なんかじゃなかった。
私の想いは、善意は、誰かに伝わっていたんだ。
精霊となり、折り紙に宿って。
「はい!」
自分のことは案外、自分じゃわからない。
ファルス様に力を教わった。
私に何ができるのか。
やることは変わらないのに、いつものよりも気持ちが楽だ。
折り紙を取り出し、膝の上で折る。
それをファルス様は眺めている。
「鶴かい?」
「いえ、今回はキセキレイという鳥をイメージして折っています」
「キセキレイ? 聞いたことのない鳥の名前だね」
それは当然だろう。
この世界には存在しない鳥の種類だ。
前世ではほとんどベッドの上で過ごした。
退院しても自宅待機で、退屈な時間を紛らわすために、動画を眺めていたりした。
その中で、動物の紹介をしている動画があった。
キセキレイ。
体長二十センチほどの小鳥で、見た目はスズメに少し似ている。
彼らは人や車の行く先を少しずつ移動しながら、餌となるカゲロウやユスリカなどの餌をさがす習性がある。
その様子は、まるで道案内をしてくれているようだった。
村までの道案内をしてもらうには、この鳥が一番だろうと思った。
折り方のレシピはない。
私が知っているキセキレイの見た目から、それに近づくように折っていく。
前世でもやることがなかった私は、暇を見つけて折り紙を折っていた。
お陰で今は、初見の物でもある程度は近い形に折ることができる。
「できました!」
「凄いな。ちゃんと鳥に見える。鶴とも違う」
「ありがとうございます」
ここに魔法を……ううん、精霊を宿す。
方法は今までと同じ、付与魔法の要領でいいはずだ。
飛行、探索、案内。
付与する効果をイメージして、一緒に私の願いを込める。
二人の住む村を探してほしい。
二人を無事に送り届けられますように。
効果が付与されたことで、キセキレイの折り紙はパタパタと飛び上がる。
そのまま上昇し、ぐるぐると周囲を飛び回る。
「探してくれているんだね」
「はい」
しばらく待つ。
すると、キセキレイの折り紙はゆっくりと降下してきた。
私の手のひらに留まる。
「見つかった?」
小さく頷いたように見えた。
「じゃあ、案内してもらっていいかな?」
私がお願いすると、キセキレイの折り紙は跳び上がり、馬車の先頭を舞う。
こっちだぞ、と、教えてくれている。
「よし、出発だ」
「はい!」
キセキレイの道案内に従いながら、ファルス様が馬車を走らせる。
飛ぶ鳥を見つめながら思う。
確かに、あれがただの付与魔法による行動には見えない。
私の想いに応えて村を探し、案内を頼んで頷いた。
まるで、生きている本物の鳥のように羽ばたく。
「本当に……」
「精霊だよ。君の想いから生まれた。いわば君の心の分身だ」
「私の……」
分身。
私は自分の胸に手を当てる。
今までも、私の心が形になって、命を宿して羽ばたいていた。
それが多くの人の元に届き、支えになっていたのだとしたら……。
「嬉しいです」
「そうか」
自己満足なんかじゃなかった。
私の想いは、善意は、誰かに伝わっていたんだ。
精霊となり、折り紙に宿って。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
359
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる