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キセキレイと道案内

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「どうしてかわかる?」
「わかりませんでした。自分でも疑問に思って調べたんですけど」

 わからなかった。
 特別な付与を施しているわけじゃないのに、効果が長く続くのはどうしてだろう。
 一度、お姉様に聞いたことがある。
 その時は――

「弱い付与だから消費が少なくて、長く続いてるだけでしょ、って言われました」
「魔法使いならそういう可能性も考えるだろうね。けど、根本的に違うんだ。消費していないんだよ。この子は魔力を」
「え?」

 消費していない?
 そんなことがありえるの?

「どうしてですか?」
「それはね? 君の魔法は厳密には付与ではなくて、精霊術だからだよ」
「精霊術?」
「そう。君は精霊がどんな存在が知っているかい?」
「はい。えっと、意思をもった魔力の集合体、ですよね?」

 精霊はどこにでもいる。
 大自然に存在する命あるものは、内に魔力を宿している。
 動物や魔物だけではなく、植物もだ。
 私たち人間も含めて、魔力を持つ存在は世界中にいて、常に微弱な魔力を放出している。
 人間は鍛錬を積むことで魔力をコントロールし、身体から溢れる魔力を抑えることができるけど、その他の生物にはできない。
 命から溢れ出た魔力は、やがて同じ種類で集まり意思を持つ。
 それこそが精霊と呼ばれる存在だ。

「精霊術は、その精霊たちの力を借りて魔法を使う」
「私は知らないうちに、精霊の力を借りていたんですか?」
「ちょっと違うかな? 君の場合はもっと特別だ」

 特別?
 どんな風に?

「君は精霊の力を借りてるんじゃなくて、精霊を生み出せるんだよ」
「せ、精霊を?」

 生み出す?
 私が?

 驚愕した。
 精霊については魔法の勉強で調べたから知っている。
 一般知識レベルだけど、精霊がどういう存在で、どうやって発生するのか。
 精霊は自然発生するもので、意図的に生み出すなんてできないはずだ。
 それを……。

(していた? 無意識に……?)

 ファルス様の周りを飛んでいた折り紙の鶴が、私の手のひらに留まる。

「精霊は意思を持つ魔力の集合体だ。君はその子を生み出すとき、何を願ったんだい?」
「それは……困っている人に届いてほしい。助けになってほしい」
「そうだね。その想いが魔力に宿り、精霊となった」
「この子が……」

 精霊?
 私はただ、効果を付与しているだけだった。
 その時に願いも込めていた。
 純粋に、神様にお祈りするような気持ちで。

「気休めのつもりだったんですけど」
「本心から思っていたからこそ、君の願いを体現する精霊になったんだよ。そうじゃなければ、僕たちの元に辿りつくこともなかっただろうね」

 手のひらで私を見つめる折り紙の鶴。
 ただの折り紙だと思っていた。
 私は知らぬ間に、ただの折り紙に命を宿していたらしい。
 そう思うとすごく、この子たちに愛着がわく。
 まるで我が子を見ているようだ。
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