10 / 28
キセキレイと道案内
2
しおりを挟む
ファルス様が何かに気がついて、馬車をゆっくり停車させた。
何だろうと窓から外を覗き込む。
街道の端にある石に、杖をついたお爺さんとお婆さんが腰かけていた。
ファルス様は馬車を降りて、二人の元へ駆け寄る。
私もその後に続いた。
「こんにちは」
「ん? ああ、旅のお方かい?」
「はい。こんなところでどうされたのですか?」
「いや、実は道に迷ってしまってねぇ」
二人の老人は、孫の顔を見るために王都へ行った帰りだった。
王都周辺にはいくつも小さな村がある。
二人はその中の一つの出身で、帰り道だったが道に迷い、途方に暮れていたそうだ。
「二人とも目が悪くてねぇ。方向は間違っていないはずなんだが、ここがどこかもわからなくて」
「婆さんや。あまり旅のお人に迷惑をかけてはいけん。さぁ、お行きになってください。ワシらは大丈夫ですから」
「そういう訳にはいきません。困っている人に手を差し伸べるのが、僕たちの役目ですから。そうだろう? ミモザ」
「――! はい!」
私たちの役目。
ファルス様はそう言ってくれた。
それは私が、勇者パーティーの一員であるという証だ。
勇者パーティーなら、困っている人がいたら助けるのが当たり前。
自然に、彼は手を差し伸べる。
「馬車に乗ってください。村まで送っていきましょう」
「いいんですか?」
「ワシらはお金も大して持っていません」
「お金なんていりません。これくらい、当然のことですから」
ファルス様は温かな笑みを見せる。
目が不自由な二人にも、彼の優しさは伝わったのだろう。
差し伸べられた手を、二人はとって立ち上がる。
「ありがとうございます」
「親切な方に巡り合えて、ワシらは幸せですな」
「どういたしまして」
ファルス様は優しくエスコートして、二人を馬車へ乗せた。
後ろに二人が乗ったから、私はファルス様の隣へ座ることになる。
「ファルス様、道はわかるんですか?」
「いいや」
「え?」
「地図はあるけど、さすがに載ってない小さな村の場所まではわからないよ」
意外だった。
てっきり場所がわかるから、案内するのだとばかり。
「どうするんですか?」
「僕には案内できない。でも、君ならできるはずだよ」
「――私が?」
「うん。君の力を貸してくれ」
ファルス様は私をまっすぐ見つめながらそう言った。
私の力……。
付与魔法でこの状況を解決できるのだろうか。
何だろうと窓から外を覗き込む。
街道の端にある石に、杖をついたお爺さんとお婆さんが腰かけていた。
ファルス様は馬車を降りて、二人の元へ駆け寄る。
私もその後に続いた。
「こんにちは」
「ん? ああ、旅のお方かい?」
「はい。こんなところでどうされたのですか?」
「いや、実は道に迷ってしまってねぇ」
二人の老人は、孫の顔を見るために王都へ行った帰りだった。
王都周辺にはいくつも小さな村がある。
二人はその中の一つの出身で、帰り道だったが道に迷い、途方に暮れていたそうだ。
「二人とも目が悪くてねぇ。方向は間違っていないはずなんだが、ここがどこかもわからなくて」
「婆さんや。あまり旅のお人に迷惑をかけてはいけん。さぁ、お行きになってください。ワシらは大丈夫ですから」
「そういう訳にはいきません。困っている人に手を差し伸べるのが、僕たちの役目ですから。そうだろう? ミモザ」
「――! はい!」
私たちの役目。
ファルス様はそう言ってくれた。
それは私が、勇者パーティーの一員であるという証だ。
勇者パーティーなら、困っている人がいたら助けるのが当たり前。
自然に、彼は手を差し伸べる。
「馬車に乗ってください。村まで送っていきましょう」
「いいんですか?」
「ワシらはお金も大して持っていません」
「お金なんていりません。これくらい、当然のことですから」
ファルス様は温かな笑みを見せる。
目が不自由な二人にも、彼の優しさは伝わったのだろう。
差し伸べられた手を、二人はとって立ち上がる。
「ありがとうございます」
「親切な方に巡り合えて、ワシらは幸せですな」
「どういたしまして」
ファルス様は優しくエスコートして、二人を馬車へ乗せた。
後ろに二人が乗ったから、私はファルス様の隣へ座ることになる。
「ファルス様、道はわかるんですか?」
「いいや」
「え?」
「地図はあるけど、さすがに載ってない小さな村の場所まではわからないよ」
意外だった。
てっきり場所がわかるから、案内するのだとばかり。
「どうするんですか?」
「僕には案内できない。でも、君ならできるはずだよ」
「――私が?」
「うん。君の力を貸してくれ」
ファルス様は私をまっすぐ見つめながらそう言った。
私の力……。
付与魔法でこの状況を解決できるのだろうか。
22
お気に入りに追加
356
あなたにおすすめの小説


品がないと婚約破棄されたので、品のないお返しをすることにしました
斯波@ジゼルの錬金飴②発売中
ファンタジー
品がないという理由で婚約破棄されたメリエラの頭は真っ白になった。そして脳内にはリズミカルな音楽が流れ、華美な羽根を背負った女性達が次々に踊りながら登場する。太鼓を叩く愉快な男性とジョッキ片手にフ~と歓声をあげるお客も加わり、まさにお祭り状態である。
だが現実の観衆達はといえば、メリエラの脳内とは正反対。まさか卒業式という晴れの場で、第二王子のダイキアがいきなり婚約破棄宣言なんてするとは思いもしなかったのだろう。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

悪役令嬢ですか?……フフフ♪わたくし、そんなモノではございませんわ(笑)
ラララキヲ
ファンタジー
学園の卒業パーティーで王太子は男爵令嬢と側近たちを引き連れて自分の婚約者を睨みつける。
「悪役令嬢 ルカリファス・ゴルデゥーサ。
私は貴様との婚約破棄をここに宣言する!」
「……フフフ」
王太子たちが愛するヒロインに対峙するのは悪役令嬢に決まっている!
しかし、相手は本当に『悪役』令嬢なんですか……?
ルカリファスは楽しそうに笑う。
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。


『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月
りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。
1話だいたい1500字くらいを想定してます。
1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。
更新は不定期。
完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。
恋愛とファンタジーの中間のような話です。
主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。

婚約破棄は結構ですけど
久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」
私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。
「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」
あーそうですね。
私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。
本当は、お父様のように商売がしたいのです。
ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。
王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。
そんなお金、無いはずなのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる