優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ

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キセキレイと道案内

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 ファルス様が何かに気がついて、馬車をゆっくり停車させた。
 何だろうと窓から外を覗き込む。
 街道の端にある石に、杖をついたお爺さんとお婆さんが腰かけていた。
 ファルス様は馬車を降りて、二人の元へ駆け寄る。
 私もその後に続いた。

「こんにちは」
「ん? ああ、旅のお方かい?」
「はい。こんなところでどうされたのですか?」
「いや、実は道に迷ってしまってねぇ」

 二人の老人は、孫の顔を見るために王都へ行った帰りだった。
 王都周辺にはいくつも小さな村がある。
 二人はその中の一つの出身で、帰り道だったが道に迷い、途方に暮れていたそうだ。

「二人とも目が悪くてねぇ。方向は間違っていないはずなんだが、ここがどこかもわからなくて」
「婆さんや。あまり旅のお人に迷惑をかけてはいけん。さぁ、お行きになってください。ワシらは大丈夫ですから」
「そういう訳にはいきません。困っている人に手を差し伸べるのが、僕たちの役目ですから。そうだろう? ミモザ」
「――! はい!」

 私たちの役目。
 ファルス様はそう言ってくれた。
 それは私が、勇者パーティーの一員であるという証だ。
 勇者パーティーなら、困っている人がいたら助けるのが当たり前。
 自然に、彼は手を差し伸べる。

「馬車に乗ってください。村まで送っていきましょう」
「いいんですか?」
「ワシらはお金も大して持っていません」
「お金なんていりません。これくらい、当然のことですから」

 ファルス様は温かな笑みを見せる。
 目が不自由な二人にも、彼の優しさは伝わったのだろう。
 差し伸べられた手を、二人はとって立ち上がる。

「ありがとうございます」
「親切な方に巡り合えて、ワシらは幸せですな」
「どういたしまして」

 ファルス様は優しくエスコートして、二人を馬車へ乗せた。
 後ろに二人が乗ったから、私はファルス様の隣へ座ることになる。
 
「ファルス様、道はわかるんですか?」
「いいや」
「え?」
「地図はあるけど、さすがに載ってない小さな村の場所まではわからないよ」

 意外だった。
 てっきり場所がわかるから、案内するのだとばかり。

「どうするんですか?」
「僕には案内できない。でも、君ならできるはずだよ」
「――私が?」
「うん。君の力を貸してくれ」

 ファルス様は私をまっすぐ見つめながらそう言った。
 私の力……。
 付与魔法でこの状況を解決できるのだろうか。
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