優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ

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千羽鶴と勇者様

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 十六歳になった頃。
 私はお姉様の補佐役として、宮廷魔法使い見習いとなった。

「わかってるわね? ミモザが宮廷に入れたのは、私が宮廷魔法使いになれたからよ」
「はい。お姉様が推薦してくださったんですよね?」
「ええ、小間使いにはちょうどいいわ」
「それでも嬉しいです。こうして誰かの役に立てるなら」

 心からの言葉だった。
 お姉様はなぜか不機嫌そうだったけど、こうして宮廷で働く機会を得たことを感謝している。
 付与魔法しか使えない私じゃ、何年かけても宮廷で働くなんてできなかったはずだ。
 多くの魔法使いが目指す場所の一つ、それが宮廷魔法使い。
 この国を生きる人々のために才能を使う。
 私たちの頑張りが、多くの人々の生活を支える。
 なんてすばらしいことだろう。
 これが私の目指していたことだった。

 宮廷での仕事は激務だった。
 毎日朝から晩まで働く。
 お姉様の補佐として、お姉様から与えられた仕事をこなす。
 毎日、毎日……。
 辛くはなかった。
 前世では働くことすらできない身体だったから。
 働けることが嬉しかった。
 けれど時折、思ってしまうことがある。

 これでいいのか、と。
 本当にこれが、私のやりたいことなのか?

 疑問に思ってしまう私は、毎日を振り返るために日記を書くことにした。
 今日は何ができたとか、明日の課題ややるべきことをまとめた。
 時に気づきを記し、新しい付与の発想に繋がった。
 日記を書いて、数日空けて過去の内容に目を通す。
 すると、自分の働きが客観的に見られる。
 私は働けるだけで嬉しかった。
 けれど、これじゃ足りないと思えるようになった。
 ただお姉様の補助をしているだけじゃダメだ。
 私にできることを増やそう。

「お姉様! 私にも、お姉様がやっている魔導具開発を手伝わせてください!」
「いきなり何? 手伝えることがあると思う?」
「はい! 私にもできることがあると思います」
「……そう。別にいいわよ」
「ありがとうございます!」

 お姉様は魔法使いであり、優秀な魔導具師でもあった。
 魔導具は国民の生活を支えている重要な要素の一つ。
 新しい魔導具を開発し、人々の生活を豊かにして、文明を先へ進める。
 お姉様の仕事を手伝えば、より多くの人が幸せになる。
 私の付与魔法は、使い方次第で魔導具の効率化や、効果を向上することができる。
 それをわかって、お姉様も了承してくれたのだろう。

「頑張ります!」
「ええ、頑張ってもらうわ。私のために」

 それからお姉様の研究を手伝うことになった。
 通常の業務が終わってからの作業だ。
 休みの日も研究に勤しんだ。

「これ、明日までに用意しておいて」
「はい。お姉様は?」
「私はパーティーがあるの」

 お姉様は私に仕事だけじゃなく、研究も任せてくれるようになった。
 もちろん肝心な部分は手伝えない。
 準備や資料まとめ、私にできることだけだ。
 それでも嬉しかった。
 頼られていると思った。
 けど……違った。
 本当は最初から気がついていたんだ。
 お姉様は私を、利用しているだけだということに。
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