無能と罵られた落ちこぼれの貴族、英雄たちの力を手に入れヒーローになる ~ハズレギフト『司書』が実は最強の無敵のユニークギフトでした~

日之影ソラ

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13.千変万化

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「僕たちで犯人を見つけ出そう」
「うん! 女の子を怖がらせるなんて許せないよ! 絶対見つけてやめさせなきゃ!」
「そうだね」
「……ありがとう、ございます」

 彼女の瞳から涙がこぼれる。
 堪えていたものが溢れ出るように。
 ニナが慌てて慰めてあげていた。
 今日まで我慢していた分、誰かに相談できた安心が大きかったのかもしれない。
 僕も、きっとニナも、彼女の涙を見せられて余計にやる気がでた。

「まずどうやって見つけるかだね。候補を絞ったほうがいいかな」
「どうやって絞るの?」
「『不可視』か『千里眼』のギフトを持っている人を探すんだ。一先ずは学園の生徒に限定してね」
「そうしよう! じゃあさっそく相談役の特権を使わせてもらおうよ!」

 ニナのいう特権というのは、学園内の情報を閲覧する権利のことだ。
 学園に通う生徒の情報は、本来生徒には開示されない。
 理由は説明するまでもない。
 だけど僕たちは課題を遂行するため、特別に一部を閲覧できる権利を貰った。
 今回探すのは生徒のギフト情報だ。
 
「職員室で聞いてくるよ。二人は待っていてもらっていいかな?」
「うん。いってらっしゃい」
 
 フレンダさんは軽く会釈を返す。
 今は授業中だし、ニナも一緒なら彼女も安心できるだろう。
 それでも何か起こったら嫌だから、僕は急ぎ足で職員室に向かう。
 道中、手に入れた情報から状況を整理した。

 一月前から視線を感じる。
 登下校中だけだったのが、最近は家の中でもある。
 学園内では感じない。
 今のところ何かをしてくるわけでもなく視線だけに留まっている。

「『鷹の眼』にも引っかからないとなると、どうやって見つけるか……」

 僕は職員室で生徒のギフト情報を閲覧した。
 詳しい事情は本人のプライバシーの観点と、容疑者が教員である可能性も考慮し伏せている。
 相談を受けたからといったら先生はすぐに見せてくれた。

 僕は手に入れた情報をもって図書館に戻る。
 戻ってすぐにニナの明るい声が聞こえた。
 どうやら僕がいない間に、彼女を元気づけようと頑張ってくれていたみたいだ。
 そのおかげか、さっきよりフレンダさんも落ち着いている。

「ただいま、二人とも」
「おかえり! わかったの?」
「うん。一先ず候補は絞ったよ」

 生徒の中で候補にあがったのは三人。
 全員が『千里眼』のギフトを所持している。
 そのうち男性は一人だけだった。

「じゃあその人が犯人なのかな?」
「断定は難しいかな。それをこれから確かめようと思う。フレンダさんの下校中を僕たちで見張るんだ。ニナはフレンダさんと一緒に下校して。女の子同士なら警戒もされにくいと思う」

 逆に一緒に帰るだけで退くなら、しばらく一緒に行動していれば自然といなくなるかもしれない。
 犯人を逃がすことにはなるけど、優先すべきは彼女の安全だ。

「ブランはどうするの?」
「僕は途中まで別行動をするよ。下校中に候補の人たち、一応三人に不審な動きがないかチェックする」
「一度に三人も? どうやって?」
「こういう場面でうってつけの本があるんだ」

 今回の相談を受けて、何なら役に立てるか考えた。
 そして一冊の童話にたどり着く。
 僕は左手をかざす。
 本のタイトルは――

「【動物たちと茶会】」

 ギフトによって本が召喚される。
 これにより、本を開いている間の僕は物語の主人公と同じ力を得る。
 この童話の主人公は動物たちに憧れていた。
 彼は『千変万化』という変身能力を使って、動物たちと仲良くなっていく。
 僕は能力を発動させ、身体を黒い猫へと変化させた。
 
「ブランが猫になっちゃった!」
「僕のギフトは、本の主人公の力を使えるようになるんだ」
「ね、猫がしゃべった」
「姿は猫だけど僕だからね。変わったのは姿だけじゃないよ? この状態の僕は、動物の感覚をそのまま体験できるんだ」

 動物は人間よりも感覚が鋭い。
 特に聴覚や嗅覚は、人間の何倍も強い。
 透明化で姿を消せても、匂いや音までは消せない。
 動物だから警戒もされにくい。

「動物の感覚なら不可視の存在も見つけられると……ニナ?」

 なんだか異様にソワソワしていることに気付く。
 僕が声をかけると、ニナは目を輝かせて言う。

「か、可愛い! ねぇブラン、ちょっと抱っこしてもいいかな?」
「え、別にい――」
「ありがとう!」

 答えきる前に彼女の手は伸びていた。
 一瞬で抱きかかえられ、彼女の腕の中に。

「可愛い! 私動物大好きなんだ!」
「そういえばそうだったね」
「で、でもその猫はプラトニア君で……」
「はー可愛い! うちのペットにしたいよぉ」

 さすがにペットは困るなぁ。
 でも、こうして彼女に抱きかかえられるのは悪くない。
 凄く安心する。
 ちょっと強く抱きしめ過ぎだけど。

「と、とにかくこの能力で確かめるから! ニナたちはなるべく自然な感じで帰ってくれると嬉しいな」
「わ、わかりました」
「可愛いよー」
「ちょっとニナ聞いてる?」

 二ナの動物好きは知っていたけど僕の予想以上だった。
 しばらく夢中になっていて、僕の話も聞いてくれない。
 初めからこんな状態で大丈夫なのかと……少しだけ不安になった。
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