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24.過去の清算
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おそらくギリギリだった。
フィアンマ様が暴れ出そうとする一歩前に間に合ってくれたらしい。
見たところまだ何も起こっていない。
一先ずホッとして、目の前で怯える彼に挨拶を。
「十年ぶりですが、お元気そうで何よりです」
「リザリー……なぜここに。それにアレクシスも」
「申し訳ありません殿下、いえ今は陛下でしたね。貴方との話は後にしましょう」
私はフレールから目を逸らし、フィアンマ様と向き合う。
「フィアンマ様、どうか怒りをお納め下さい」
「なぜじゃ? 主とて怒っておるじゃろう? この者の愚かさに。それに疑いもせず従う者共に」
「……はい。怒りはあります。ですが私は争いを望んでいるわけではありません。きっとイザベラ様も同じはずです」
私にはイザベラ様のことはわからない。
だから当てずっぽうで、今の言葉にも根拠はない。
それでも私は信じている。
ドラゴンと出会い国を造った偉大な魔女が、争うことを望んでいないと。
「ならば許すというのか?」
「許しません。だから私も、私なりに考えました。彼らに与える報いを。どうかそれを見届けてはくださいませんか?」
「ほう、面白いのう。良いじゃろう。ワシの怒りより、主の怒りのほうが本来は多いはずじゃ。その主がどう報いを与えるのか興味はあるぞ」
「ありがとうございます」
なんとか踏みとどまってくださったようだ。
しかし依然として怒りは感じている様子。
だからその怒り、私が代わりに晴らして見せましょう。
私はフレールのほうへ振り返る。
「フレール陛下、私は貴方に起こっています。でも、今さら謝ってほしいとは思っていません。そもそも謝られても手遅れです。私はもうこの国には戻らない。だから今日は、返してもらうつもりで来ました」
「返す? 一体何をかな?」
「すべてです」。この国で私がしてきたこと、もたらした物全てを回収します
私は天に右手をかざす。
この魔法は、逃げ回る十年間で新しく作りあげたもの。
いつかこんな瞬間が訪れた時、私を陥れた彼らに報いようと考案した。
帝都を守っているのは私が作った結界だ。
その結界と連動させることで、新魔法の効果を帝都中に行きわたらせる。
「――【不在証明】」
発動と同時に結界が消失する。
「何をした? 結界を破壊したのか?」
「結界だけではありません。私がこの国で作った物、生み出した技術で動いている物や新しい魔法……その全てを抹消しました」
「なっ、抹消……だと? そんな馬鹿げたことができるわけ……」
「残念ながらできてしまうんですよ」
驚愕する彼に冷たく言い放つ。
信じられない、という表情になるのもわかるが事実だ。
痕跡を忘却する魔法、【不在照明】。
結界を起点に、帝都ないに残る私の魔法式を全て破壊し、金輪際使用不可能にする。
加えて記録についても同様に消える。
私が書いた書物や研究資料の多くは白紙になっただろう。
「結界、人々が生活に使う魔導具も、軍事面を支える兵器、それ以外の様々な技術。私がこの国で残した物はたくさんあります。三百年分ですからね。きっと陛下が思っているより多いですよ」
三百年前にこの国を訪れ、かの王との約束を守り続けた。
この国を支え続けると誓って過ごした日々は、今でも鮮明に覚えている。
寂しくはあるし、約束を守れなかったことは謝りたい。
それもで、寛大な心をもつ彼ならば、きっと許してくれるだろう。
私が三百年の間に作り上げた物は全て、今この瞬間に消滅した。
「覚悟したほうが良いですよ。この国を支えていた物の多くがなくなりました。今頃帝都中で大混乱が起こっているはずです。貴方は王として、民衆の生活を守る義務があります」
「リザリー……お前は……」
「恨み事なら聞く気はありません。貴方が私を切り捨てたんだ。その代償は、しっかり自分の手で受け取ってください」
これが私になりの復讐だ。
傷つけるより、壊すよりも、彼らにはこっちのほうが効くだろう。
思い知れば良いと思う。
悪だと断じ、切り捨ててた物の大きさを。
私たち魔女の力を。
「ふ、ふははははははははは! 面白いやり方じゃな! ワシには思いつかんかったわ!」
「満足して頂けましたか?」
「うむ、満足とはまだわからんがのう。今後が楽しみじゃな」
「はい」
大変な思いをするだろう。
三百年分の消失はとてつもなく大きいのだから。
「それでは帰りましょうか? もうこんな場所にいる必要はありません」
「そうじゃのう。一発ぐらいぶん殴ってやろうかと思ったが、それはまた今後のお楽しみじゃ」
ニコニコしながら怖いことを言う。
放っておくと今すぐにでも暴れ出しそうな予感がする。
早々に立ち去るが吉だ。
「アレクも良い?」
「はい」
「ま、待ってくれリザリー! 話をしようじゃないか」
「もう話すことなんてありませんよ。この場所にも二度と戻ってくることはありません。さようなら、フレール」
そしてさようなら、ソルシエール帝国。
私の半生が詰まった場所。
消失した痕跡は二度と戻らない。
決別は済ませた。
これからは、新しい日々。
明るい未来が、きっと待っている。
そう信じて進もう。
フィアンマ様が暴れ出そうとする一歩前に間に合ってくれたらしい。
見たところまだ何も起こっていない。
一先ずホッとして、目の前で怯える彼に挨拶を。
「十年ぶりですが、お元気そうで何よりです」
「リザリー……なぜここに。それにアレクシスも」
「申し訳ありません殿下、いえ今は陛下でしたね。貴方との話は後にしましょう」
私はフレールから目を逸らし、フィアンマ様と向き合う。
「フィアンマ様、どうか怒りをお納め下さい」
「なぜじゃ? 主とて怒っておるじゃろう? この者の愚かさに。それに疑いもせず従う者共に」
「……はい。怒りはあります。ですが私は争いを望んでいるわけではありません。きっとイザベラ様も同じはずです」
私にはイザベラ様のことはわからない。
だから当てずっぽうで、今の言葉にも根拠はない。
それでも私は信じている。
ドラゴンと出会い国を造った偉大な魔女が、争うことを望んでいないと。
「ならば許すというのか?」
「許しません。だから私も、私なりに考えました。彼らに与える報いを。どうかそれを見届けてはくださいませんか?」
「ほう、面白いのう。良いじゃろう。ワシの怒りより、主の怒りのほうが本来は多いはずじゃ。その主がどう報いを与えるのか興味はあるぞ」
「ありがとうございます」
なんとか踏みとどまってくださったようだ。
しかし依然として怒りは感じている様子。
だからその怒り、私が代わりに晴らして見せましょう。
私はフレールのほうへ振り返る。
「フレール陛下、私は貴方に起こっています。でも、今さら謝ってほしいとは思っていません。そもそも謝られても手遅れです。私はもうこの国には戻らない。だから今日は、返してもらうつもりで来ました」
「返す? 一体何をかな?」
「すべてです」。この国で私がしてきたこと、もたらした物全てを回収します
私は天に右手をかざす。
この魔法は、逃げ回る十年間で新しく作りあげたもの。
いつかこんな瞬間が訪れた時、私を陥れた彼らに報いようと考案した。
帝都を守っているのは私が作った結界だ。
その結界と連動させることで、新魔法の効果を帝都中に行きわたらせる。
「――【不在証明】」
発動と同時に結界が消失する。
「何をした? 結界を破壊したのか?」
「結界だけではありません。私がこの国で作った物、生み出した技術で動いている物や新しい魔法……その全てを抹消しました」
「なっ、抹消……だと? そんな馬鹿げたことができるわけ……」
「残念ながらできてしまうんですよ」
驚愕する彼に冷たく言い放つ。
信じられない、という表情になるのもわかるが事実だ。
痕跡を忘却する魔法、【不在照明】。
結界を起点に、帝都ないに残る私の魔法式を全て破壊し、金輪際使用不可能にする。
加えて記録についても同様に消える。
私が書いた書物や研究資料の多くは白紙になっただろう。
「結界、人々が生活に使う魔導具も、軍事面を支える兵器、それ以外の様々な技術。私がこの国で残した物はたくさんあります。三百年分ですからね。きっと陛下が思っているより多いですよ」
三百年前にこの国を訪れ、かの王との約束を守り続けた。
この国を支え続けると誓って過ごした日々は、今でも鮮明に覚えている。
寂しくはあるし、約束を守れなかったことは謝りたい。
それもで、寛大な心をもつ彼ならば、きっと許してくれるだろう。
私が三百年の間に作り上げた物は全て、今この瞬間に消滅した。
「覚悟したほうが良いですよ。この国を支えていた物の多くがなくなりました。今頃帝都中で大混乱が起こっているはずです。貴方は王として、民衆の生活を守る義務があります」
「リザリー……お前は……」
「恨み事なら聞く気はありません。貴方が私を切り捨てたんだ。その代償は、しっかり自分の手で受け取ってください」
これが私になりの復讐だ。
傷つけるより、壊すよりも、彼らにはこっちのほうが効くだろう。
思い知れば良いと思う。
悪だと断じ、切り捨ててた物の大きさを。
私たち魔女の力を。
「ふ、ふははははははははは! 面白いやり方じゃな! ワシには思いつかんかったわ!」
「満足して頂けましたか?」
「うむ、満足とはまだわからんがのう。今後が楽しみじゃな」
「はい」
大変な思いをするだろう。
三百年分の消失はとてつもなく大きいのだから。
「それでは帰りましょうか? もうこんな場所にいる必要はありません」
「そうじゃのう。一発ぐらいぶん殴ってやろうかと思ったが、それはまた今後のお楽しみじゃ」
ニコニコしながら怖いことを言う。
放っておくと今すぐにでも暴れ出しそうな予感がする。
早々に立ち去るが吉だ。
「アレクも良い?」
「はい」
「ま、待ってくれリザリー! 話をしようじゃないか」
「もう話すことなんてありませんよ。この場所にも二度と戻ってくることはありません。さようなら、フレール」
そしてさようなら、ソルシエール帝国。
私の半生が詰まった場所。
消失した痕跡は二度と戻らない。
決別は済ませた。
これからは、新しい日々。
明るい未来が、きっと待っている。
そう信じて進もう。
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