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17.第三の試練『知恵』
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「クリアしたのは良かったです。さすが先生ですね」
「はい」
「ただ何の説明もなく飛び込むのはどうでしょう? もし間違っていたら落ちていたんですよ?」
「……そうですね」
私の機転で第二の試練は無事にクリアした。
のだが……
向こう側へ渡ってすぐに、アレクのお説教が始まりました。
「あの一瞬で僕がどれだけ心配したかわかりますか?」
「ご、ごめんなさい……」
「次からは気を付けてくださいね?」
「はい……」
まさかアレクにお説教される日がくるなんて。
成長したね……
「それでは次の試練へ向かいましょうか」
「そ、そうね。気を取り直して行きましょう」
壁には新たな扉が生成されていた。
罠がないことを確認してから扉を開け、長く続く一本道を歩く。
今度の明かりは緑色だ。
そうして次の部屋にたどり着く。
「こ、これは……」
同じく巨大な空間。
二つ目のように橋や大穴はない。
代わりに壁や天井、床の一面まで敷き詰められているものがある。
「扉だらけですね」
「ええ……」
一面の扉。
右を見ても左を見ても、同じ見た目の扉がある。
列もバラバラ、向きもそれぞれ。
数は多すぎて数えられない。
「やーやーやー! 第三の試練にたどり着くとは中々じゃな! さっそくじゃが次の試練を言い渡すぞ? 第三の試練は『知恵』じゃ!」
「今度は知恵の試練みたいだね」
「はい。問題でも出すのでしょうか? もっとも先生なら、答えられない問いはないと思いますが」
「それはさすがに買いかぶり過ぎだよ」
魔法のことなら自信はあるけどね。
それでも全ては無理だよ。
だって出題者はドラゴンで、私なんかよりずっと前に生まれた存在なんだし。
さすがに知恵で勝てるとは思えないな。
「それにたぶん質問とかじゃないと思うよ」
「ですね」
私たちの視界には、おびただしい数の扉が見える。
この扉が試練に関係しているのは間違いなさそうだ。
「目の前に扉が見えるじゃろう? それらは全部で千あるのじゃ! その中に一つだけ、次の試練へ向かうための扉がある。それを引き当てるのじゃ! ちなみに外れの扉は他の扉に通じておるぞ」
「え、それだけ?」
「意外と簡単そう――」
「ただし! 開けて良いのは千回までじゃ! それから外れの扉を開ける度、当たりの場所も変わるから注意するのじゃぞ!」
少女の説明は以上で終わった。
扉は千か所、内当たりは一か所のみで、外すたびに場所が変わる。
加えて千回の回数制限付き。
「試しに一か所開けてみようかな」
そう呟いて、近くにあった壁の扉を開けてみる。
扉を開けた先は、紫色の幕で覆われていた。
開けただけじゃ繋がっている先は見えないらしい。
「アレク」
「他の扉は開いていませんよ」
尋ねる前に答えが返ってきた。
さすがアレク、私が言う前に意図をくみ取ってくれたみたいだ。
「もしかしていきなり正解?」
「行ってみましょう」
期待して扉の中へ。
幕を抜ける感覚はちょっぴり気持ちが悪い。
湿った空気の幕を通り抜けているようだった。
そして肝心の結果は――
「「あっ」」
不正解。
しかも出た先は、天井にあった扉。
つまり、真っ逆さま。
「わっ!」
「先生!」
間一髪、落下のギリギリでアレクが体勢を立て直し、私を抱きかかえて着地する。
「大丈夫ですか?」
「うん。ありがとうアレク」
咄嗟のことで魔法発動が遅れてしまったな。
だいぶ実戦の感覚が鈍っている?
それとも単に衰えたとか……それは考えたくないな。
「今のでわかったけど、扉を開けてすぐに別の扉に繋がるわけじゃないんだね」
「そのようですね。加えて出た先が同じ面とは限らない。あと上下左右もバラバラなので、感覚を保つのが難しい」
扉を出た途端に重力の向きが変わる。
初めての体験に身体が驚いてしまったけど、理解して挑めば逆に楽しいかも?
なんて遊んでいる暇はないんだった。
「正解が移動してしまうなら、全て開ける方法は使えませんね」
「……そうでもないよ? 今回は魔法も封じられてないしね」
「先生?」
実はとっくに気付いていた。
この試練の攻略法に。
「【影握手】」
私が発動したのは影を自在に操る魔法。
自身の影を媒体に、無数の黒い手を発現させる。
手の数は火力量に起因する。
魔女である私にかかれば、千や二千を生み出すくらい簡単だ。
「扉を開ける度に場所が移動するんでしょ? だったら全部開けちゃえば、正しい扉は逃げ道をなくすよね?」
「なるほど、その手がありましたか。さすが先生」
「ありがとう。でも正直これ、知恵って感じじゃないのよね」
「確かにそうですね。っと、ありましたよ」
アレクが指をさす。
開いた扉の一か所だけ、紫の幕がかかっていない。
先には道が続いていた。
「第三の試練も難なくクリアですね」
「ええ」
知恵の試練をクリアした私だけど、どうにも引っかかる。
アレクにも言ったけど、この解決方法は知恵と呼べるだろうか?
さっきの機転もそうだけど、迷宮の試練は名前と内容が微妙に合ってないような気が……
「もしかしてドラゴンって」
かなり大雑把な性格なのかな?
「はい」
「ただ何の説明もなく飛び込むのはどうでしょう? もし間違っていたら落ちていたんですよ?」
「……そうですね」
私の機転で第二の試練は無事にクリアした。
のだが……
向こう側へ渡ってすぐに、アレクのお説教が始まりました。
「あの一瞬で僕がどれだけ心配したかわかりますか?」
「ご、ごめんなさい……」
「次からは気を付けてくださいね?」
「はい……」
まさかアレクにお説教される日がくるなんて。
成長したね……
「それでは次の試練へ向かいましょうか」
「そ、そうね。気を取り直して行きましょう」
壁には新たな扉が生成されていた。
罠がないことを確認してから扉を開け、長く続く一本道を歩く。
今度の明かりは緑色だ。
そうして次の部屋にたどり着く。
「こ、これは……」
同じく巨大な空間。
二つ目のように橋や大穴はない。
代わりに壁や天井、床の一面まで敷き詰められているものがある。
「扉だらけですね」
「ええ……」
一面の扉。
右を見ても左を見ても、同じ見た目の扉がある。
列もバラバラ、向きもそれぞれ。
数は多すぎて数えられない。
「やーやーやー! 第三の試練にたどり着くとは中々じゃな! さっそくじゃが次の試練を言い渡すぞ? 第三の試練は『知恵』じゃ!」
「今度は知恵の試練みたいだね」
「はい。問題でも出すのでしょうか? もっとも先生なら、答えられない問いはないと思いますが」
「それはさすがに買いかぶり過ぎだよ」
魔法のことなら自信はあるけどね。
それでも全ては無理だよ。
だって出題者はドラゴンで、私なんかよりずっと前に生まれた存在なんだし。
さすがに知恵で勝てるとは思えないな。
「それにたぶん質問とかじゃないと思うよ」
「ですね」
私たちの視界には、おびただしい数の扉が見える。
この扉が試練に関係しているのは間違いなさそうだ。
「目の前に扉が見えるじゃろう? それらは全部で千あるのじゃ! その中に一つだけ、次の試練へ向かうための扉がある。それを引き当てるのじゃ! ちなみに外れの扉は他の扉に通じておるぞ」
「え、それだけ?」
「意外と簡単そう――」
「ただし! 開けて良いのは千回までじゃ! それから外れの扉を開ける度、当たりの場所も変わるから注意するのじゃぞ!」
少女の説明は以上で終わった。
扉は千か所、内当たりは一か所のみで、外すたびに場所が変わる。
加えて千回の回数制限付き。
「試しに一か所開けてみようかな」
そう呟いて、近くにあった壁の扉を開けてみる。
扉を開けた先は、紫色の幕で覆われていた。
開けただけじゃ繋がっている先は見えないらしい。
「アレク」
「他の扉は開いていませんよ」
尋ねる前に答えが返ってきた。
さすがアレク、私が言う前に意図をくみ取ってくれたみたいだ。
「もしかしていきなり正解?」
「行ってみましょう」
期待して扉の中へ。
幕を抜ける感覚はちょっぴり気持ちが悪い。
湿った空気の幕を通り抜けているようだった。
そして肝心の結果は――
「「あっ」」
不正解。
しかも出た先は、天井にあった扉。
つまり、真っ逆さま。
「わっ!」
「先生!」
間一髪、落下のギリギリでアレクが体勢を立て直し、私を抱きかかえて着地する。
「大丈夫ですか?」
「うん。ありがとうアレク」
咄嗟のことで魔法発動が遅れてしまったな。
だいぶ実戦の感覚が鈍っている?
それとも単に衰えたとか……それは考えたくないな。
「今のでわかったけど、扉を開けてすぐに別の扉に繋がるわけじゃないんだね」
「そのようですね。加えて出た先が同じ面とは限らない。あと上下左右もバラバラなので、感覚を保つのが難しい」
扉を出た途端に重力の向きが変わる。
初めての体験に身体が驚いてしまったけど、理解して挑めば逆に楽しいかも?
なんて遊んでいる暇はないんだった。
「正解が移動してしまうなら、全て開ける方法は使えませんね」
「……そうでもないよ? 今回は魔法も封じられてないしね」
「先生?」
実はとっくに気付いていた。
この試練の攻略法に。
「【影握手】」
私が発動したのは影を自在に操る魔法。
自身の影を媒体に、無数の黒い手を発現させる。
手の数は火力量に起因する。
魔女である私にかかれば、千や二千を生み出すくらい簡単だ。
「扉を開ける度に場所が移動するんでしょ? だったら全部開けちゃえば、正しい扉は逃げ道をなくすよね?」
「なるほど、その手がありましたか。さすが先生」
「ありがとう。でも正直これ、知恵って感じじゃないのよね」
「確かにそうですね。っと、ありましたよ」
アレクが指をさす。
開いた扉の一か所だけ、紫の幕がかかっていない。
先には道が続いていた。
「第三の試練も難なくクリアですね」
「ええ」
知恵の試練をクリアした私だけど、どうにも引っかかる。
アレクにも言ったけど、この解決方法は知恵と呼べるだろうか?
さっきの機転もそうだけど、迷宮の試練は名前と内容が微妙に合ってないような気が……
「もしかしてドラゴンって」
かなり大雑把な性格なのかな?
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