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11.世界の法則
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二人の親子らしい会話はしばらく続いて。
思い出したように国王様が話と止め、私たちのほうへと身体を向ける。
「あー、ごほん! 改めまして魔女リザリ―殿、お会いできて光栄です」
「いえ、こちらこそお会いできて光栄です。そして私とアレクシスを受け入れてくださったことに、心から感謝いたします」
私は深々と頭を下げる。
それに合わせて隣でアレクも頭を下げたのがわかった。
魔女である私と、その教え子を受け入れること。
魔女狩り令が執行され、魔女が危険な存在だと世界に広まった状況で、それがどういう意味を持つのかわからない私たちじゃない。
勇気ある選択に対して、私は最大限の感謝を姿勢で表したかった。
すると国王様は慌てたように首を振る。
「頭を挙げてください。我が国は魔女様によって長く繁栄を築いてきました。魔女様の存在は我々にとって誇りなのです。王である私が魔女様を受け入れて当然。ましてや裏切ることなどあり得ません」
「そう言って頂けると助かります。寛大なご配慮には、これから必ず報いるつもりです」
「心強い限りですね。魔女様が協力して下さるなら、我々の目標にも近づくでしょう」
「目標……ですか?」
その言葉に、何やら特別な思いを感じ取る。
王と姫、二人の表情は同じく真剣さを醸し出し、互いに視線を合わせる。
二人は考えを通じ合わせたのか頷き、改めて私たちに視線を向ける。
「偉大なる魔女リザリ―様、そしてその弟子であるアレクシス君。今から話すのは、この国でも秘中の秘、どうか他言無用でお願いしたい」
真剣を通り越し、神妙な顔つきで話す国王様。
私はアレクと視線を合わせ、二人が通じ合わせたように、私たちも視線だけで考えを共有する。
振り返った私たちは、頷き肯定する。
「はい」
「お約束します」
「ありがとう。ではフレンダ」
「ええ、私から話すわ」
会話のバトンを受け取った姫様は、一呼吸おいて話し出す。
「二人も知っての通り、帝国の出した魔女狩り令の影響もあって、魔女は悪だというのが世界の常識になりつつあるわ。彼らの言い分だと、魔女は世界を破滅させる力を持っていて、人間の命を軽んじているとか。でも実際は違う。そうでしょう?」
「もちろんです。魔女も人も同じ命に違いはありません」
「そう。私たちも同じよ。魔女が本当に自分本位な考えしか持っていなかったら、今この国があるはずもないもの。帝国だって本当は魔女の力に頼ってる癖にね」
「そうですね。先生を追い出してすぐに、味方になる魔女探しを始めていましたから。結局、彼らが求めているのは自分たちの都合のいい様に動く道具でしかないのでしょう」
そう語るアレクは、小さく眉間にしわを寄せていた。
私がいなくなった帝国の内側を、彼は誰よりも身近で見てきたんだ。
どんな気持ちだったのかは、今の表情を見れば想像がつく。
「私は殿下に従わなかったから追い出された。でも今、帝国にいる三人の魔女は違うのね?」
「ええ。彼女たちは三人とも殿下に心酔しています。殿下の命令であれば疑うことなく遂行する。殿下にとって理想の魔女、でしょうね」
「そう。正直信じたくないけど、味方する魔女もいるのね」
世界中で遂行されている魔女狩り令。
勇敢にも異を唱えた者は粛清され、多くは怯え隠れ住むしかなくなっている。
世界はかつてないほどに、魔女にとって住みにくい姿へと変わっていた。
「魔女の思惑はそれぞれってことね。ただほとんどは安然を求めてる。この国にも数名暮らしているけど、余計な問題を増やしたくないからという理由で隠れているわ。今やこの国でさえ、安心して眠れる場所ではなくなりつつある。私たちはそれが許せない。だから変える方法を探してるの」
「変える方法……まさか、帝国と戦うつもりじゃ!?」
元凶は帝国だ。
混沌の元を絶たなければ終わりはない。
だからまずは帝国を止める。
理由とは間違っていないけど、さすがに無茶が過ぎる。
十年前ならともかく、今は世界最大の国家になり、多くの同盟国を従えている。
帝国と戦うことはそのまま、世界を敵に回すのと等しい。
何より無関係な、平和を望む人々が巻き込まれてしまうだろう。
「戦争の手助けなら、私は出来ません」
「わかっているわ。そんなことは私たちも望んでいないもの」
「早とちりですよ先生。僕がそんなことに加担させたくて、先生を連れてくるわけないじゃないですか?」
「あ……そうね。ごめんなさい」
アレクが私を戦わせたいと思うはずない。
そんなこと考えるまでもなく当然なのに、つい気が逸ってしまったようだ。
反省しつつ、話を姫様に戻す。
「じゃあ、他の方法があるんですね?」
「ええ。ただし不確定で危険な方法ではあるわ。なにせ、世界の法則を変えようって言うんだから」
「世界の法則?」
「概念魔法って言葉、魔女である貴女なら知ってるんじゃないかしら?」
途中までピンとこなかった話が、その一言で全てを悟る。
知っているとも。
概念魔法……それは、この世に存在する魔法の中で最も強大で、恐ろしい力。
私たち魔女が唯一、禁忌と定める禁断の魔法なのだから。
思い出したように国王様が話と止め、私たちのほうへと身体を向ける。
「あー、ごほん! 改めまして魔女リザリ―殿、お会いできて光栄です」
「いえ、こちらこそお会いできて光栄です。そして私とアレクシスを受け入れてくださったことに、心から感謝いたします」
私は深々と頭を下げる。
それに合わせて隣でアレクも頭を下げたのがわかった。
魔女である私と、その教え子を受け入れること。
魔女狩り令が執行され、魔女が危険な存在だと世界に広まった状況で、それがどういう意味を持つのかわからない私たちじゃない。
勇気ある選択に対して、私は最大限の感謝を姿勢で表したかった。
すると国王様は慌てたように首を振る。
「頭を挙げてください。我が国は魔女様によって長く繁栄を築いてきました。魔女様の存在は我々にとって誇りなのです。王である私が魔女様を受け入れて当然。ましてや裏切ることなどあり得ません」
「そう言って頂けると助かります。寛大なご配慮には、これから必ず報いるつもりです」
「心強い限りですね。魔女様が協力して下さるなら、我々の目標にも近づくでしょう」
「目標……ですか?」
その言葉に、何やら特別な思いを感じ取る。
王と姫、二人の表情は同じく真剣さを醸し出し、互いに視線を合わせる。
二人は考えを通じ合わせたのか頷き、改めて私たちに視線を向ける。
「偉大なる魔女リザリ―様、そしてその弟子であるアレクシス君。今から話すのは、この国でも秘中の秘、どうか他言無用でお願いしたい」
真剣を通り越し、神妙な顔つきで話す国王様。
私はアレクと視線を合わせ、二人が通じ合わせたように、私たちも視線だけで考えを共有する。
振り返った私たちは、頷き肯定する。
「はい」
「お約束します」
「ありがとう。ではフレンダ」
「ええ、私から話すわ」
会話のバトンを受け取った姫様は、一呼吸おいて話し出す。
「二人も知っての通り、帝国の出した魔女狩り令の影響もあって、魔女は悪だというのが世界の常識になりつつあるわ。彼らの言い分だと、魔女は世界を破滅させる力を持っていて、人間の命を軽んじているとか。でも実際は違う。そうでしょう?」
「もちろんです。魔女も人も同じ命に違いはありません」
「そう。私たちも同じよ。魔女が本当に自分本位な考えしか持っていなかったら、今この国があるはずもないもの。帝国だって本当は魔女の力に頼ってる癖にね」
「そうですね。先生を追い出してすぐに、味方になる魔女探しを始めていましたから。結局、彼らが求めているのは自分たちの都合のいい様に動く道具でしかないのでしょう」
そう語るアレクは、小さく眉間にしわを寄せていた。
私がいなくなった帝国の内側を、彼は誰よりも身近で見てきたんだ。
どんな気持ちだったのかは、今の表情を見れば想像がつく。
「私は殿下に従わなかったから追い出された。でも今、帝国にいる三人の魔女は違うのね?」
「ええ。彼女たちは三人とも殿下に心酔しています。殿下の命令であれば疑うことなく遂行する。殿下にとって理想の魔女、でしょうね」
「そう。正直信じたくないけど、味方する魔女もいるのね」
世界中で遂行されている魔女狩り令。
勇敢にも異を唱えた者は粛清され、多くは怯え隠れ住むしかなくなっている。
世界はかつてないほどに、魔女にとって住みにくい姿へと変わっていた。
「魔女の思惑はそれぞれってことね。ただほとんどは安然を求めてる。この国にも数名暮らしているけど、余計な問題を増やしたくないからという理由で隠れているわ。今やこの国でさえ、安心して眠れる場所ではなくなりつつある。私たちはそれが許せない。だから変える方法を探してるの」
「変える方法……まさか、帝国と戦うつもりじゃ!?」
元凶は帝国だ。
混沌の元を絶たなければ終わりはない。
だからまずは帝国を止める。
理由とは間違っていないけど、さすがに無茶が過ぎる。
十年前ならともかく、今は世界最大の国家になり、多くの同盟国を従えている。
帝国と戦うことはそのまま、世界を敵に回すのと等しい。
何より無関係な、平和を望む人々が巻き込まれてしまうだろう。
「戦争の手助けなら、私は出来ません」
「わかっているわ。そんなことは私たちも望んでいないもの」
「早とちりですよ先生。僕がそんなことに加担させたくて、先生を連れてくるわけないじゃないですか?」
「あ……そうね。ごめんなさい」
アレクが私を戦わせたいと思うはずない。
そんなこと考えるまでもなく当然なのに、つい気が逸ってしまったようだ。
反省しつつ、話を姫様に戻す。
「じゃあ、他の方法があるんですね?」
「ええ。ただし不確定で危険な方法ではあるわ。なにせ、世界の法則を変えようって言うんだから」
「世界の法則?」
「概念魔法って言葉、魔女である貴女なら知ってるんじゃないかしら?」
途中までピンとこなかった話が、その一言で全てを悟る。
知っているとも。
概念魔法……それは、この世に存在する魔法の中で最も強大で、恐ろしい力。
私たち魔女が唯一、禁忌と定める禁断の魔法なのだから。
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