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7.サザーク森林
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俺が選んだクエストは以下の三つ。
【薬草採取】
種別:採取
対象:エイド草十本
エリア:指定なし
報酬:6000コルク
【トラップ回収】
種別:調査
対象:ツリートラップ五ヵ所
エリア:サザーク森林
報酬:7000コルク
【モンスター討伐】
種別:討伐
対象:グレーウルフ五匹
エリア:サザーク森林
報酬:8000コルク
すべて同じエリアで受注可能なクエストで、対象ランクはF。
新米パーティーにはピッタリな内容だ。
クエストを選んだら、それを一旦受付カウンターに持っていく。
そこで内容と自分たちのランクを確認してもらったら、正式に受注となる。
「確認できました。では、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「はい。ありがとうございます」
受付嬢の丁寧な言葉に見送られて、俺たちはギルド会館を後にする。
向かっているのは西の出口。
このセンターの街は、東西南北それぞれに出入り口となる大きな門がある。
その先は、別々のエリアに分かれていて、今回向かうサザーク森林は西門を出てすぐだ。
道中、隣を歩くミルアが尋ねてくる。
「シオンさん、質問しても良いですか?」
「いいよ。何?」
「さっきのクエストを選んだ理由は何だったんですか?」
「ああ、あの三つね。一番の理由は比較的簡単で、他のクエストより危険が少ないからだよ」
「簡単……ですか」
俺がそう答えると、ミルアはちょっぴり落ち込んだように顔を下げる。
何をかはわからないけど、彼女がガッカリしているのは伝わった。
表情から察した俺は、訂正もかねて詳しく話す。
「この街へ来たのは最近って聞いたけど、これまでに来たことはある?」
「え? いえ、ありません」
「そうか。だったら当然、サザーク森林へ入るのも初めてだよね?」
「はい」
「知らない場所っていうのは危険が多い。ベテランの冒険者でも、初めて行く場所は慎重になる。君たちの場合は特に、まずは慣れることが大事だ」
地形、植物、天候やその他の環境。
冒険者にとっての脅威は、別にモンスターだけではない。
特に調査を怠った冒険者が、環境や地形に足元を掬われるケースも少なくない。
新米ならなおさらだ。
自分は強いから大丈夫だとか、そういう慢心が命を無駄に落とす原因になる。
「採取と調査のクエストは、サザーク森林ってエリアを知るため。ウルフ討伐は、単に君たちの実力を確認するために選んだんだよ」
「なるほど。そういう理由だったんですね」
細かく説明して、ミルアの表情が戻る。
どうやら納得してくれたらしい。
俺は密かにほっとして、大きく長めに息をはく。
他の二人は――
「早く戦いたいな~」
「……」
聞いてたのか微妙だな。
さて、どうなるかちょっと不安だ。
「俺からも質問していいかな?」
「はい」
「君たちはどうして冒険者になったの?」
ありきたりな質問をしたと思う。
すると、興味なさげだった二人が、同時に俺のほうへ視線を向けた。
予想外の反応に戸惑い、聞いてはいけなかったのかと思う俺に、ミルアが答える。
「小さい頃の話なんですけど、村が魔王軍に襲われて」
「魔王軍に?」
「はい」
十年近く前の話だな。
「その時、冒険者のお兄さんに助けてもらったんです」
「格好良かったんだぜ! こうよくわかんないけど、一瞬で倒しちゃってさ!」
「凄かった、とっても」
ステラとソフィアも話に入って来た。
二人とも活き活きとした表情で、楽し気に語っている。
話を聞かなくても、表情だけで理解できる。
要するに、憧れて冒険者になったようだ。
「私たちも、あんな風になりたいって思って」
「村の皆には反対されたけどな~」
「そうなのか?」
「めっちゃくちゃ怒られた。だから無理やり出てきたんだぜ」
ソフィアがうんうんと頷く。
「それって……大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと行先を書いて残しておきましたから」
「いや、それは大丈夫とは言わないだろ」
つまり、彼女たちは家出同然でこの街に来たのか。
いきなり別の心配が増えたな。
しばらく進み、街の出口へたどり着く。
検問の人に声をかけてから、俺たちは街の外へと出た。
そして、すぐ目の前に大きな森が広がっている。
歩いて数十歩の距離に、森を抜けるための街道が敷かれていた。
荷物の輸送や、人の移動に使われている街道だ。
整備された道で、左右には特別な堀があって、モンスターの出現も少ない。
ただし、今回はこの街道を進まない。
俺たちはあくまで、森林の中に用があるから。
「三人ともこっちだ」
俺は先頭に立ち案内する。
街道とは別で、森に入るための入り口が用意されている。
入り口と言っても、人が通れる程度の間があるだけ。
俗にいう獣道というやつだが、先人たちが残した道しるべも用意されていて、順序通りに進めば迷うことはない。
「森に入るときは、必ずここから入ったほうが良い。特に最初の頃は、テキトーに行くと迷うからね」
簡単に注意だけ済ませて、俺たちは森へと足を踏み入れた。
【薬草採取】
種別:採取
対象:エイド草十本
エリア:指定なし
報酬:6000コルク
【トラップ回収】
種別:調査
対象:ツリートラップ五ヵ所
エリア:サザーク森林
報酬:7000コルク
【モンスター討伐】
種別:討伐
対象:グレーウルフ五匹
エリア:サザーク森林
報酬:8000コルク
すべて同じエリアで受注可能なクエストで、対象ランクはF。
新米パーティーにはピッタリな内容だ。
クエストを選んだら、それを一旦受付カウンターに持っていく。
そこで内容と自分たちのランクを確認してもらったら、正式に受注となる。
「確認できました。では、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「はい。ありがとうございます」
受付嬢の丁寧な言葉に見送られて、俺たちはギルド会館を後にする。
向かっているのは西の出口。
このセンターの街は、東西南北それぞれに出入り口となる大きな門がある。
その先は、別々のエリアに分かれていて、今回向かうサザーク森林は西門を出てすぐだ。
道中、隣を歩くミルアが尋ねてくる。
「シオンさん、質問しても良いですか?」
「いいよ。何?」
「さっきのクエストを選んだ理由は何だったんですか?」
「ああ、あの三つね。一番の理由は比較的簡単で、他のクエストより危険が少ないからだよ」
「簡単……ですか」
俺がそう答えると、ミルアはちょっぴり落ち込んだように顔を下げる。
何をかはわからないけど、彼女がガッカリしているのは伝わった。
表情から察した俺は、訂正もかねて詳しく話す。
「この街へ来たのは最近って聞いたけど、これまでに来たことはある?」
「え? いえ、ありません」
「そうか。だったら当然、サザーク森林へ入るのも初めてだよね?」
「はい」
「知らない場所っていうのは危険が多い。ベテランの冒険者でも、初めて行く場所は慎重になる。君たちの場合は特に、まずは慣れることが大事だ」
地形、植物、天候やその他の環境。
冒険者にとっての脅威は、別にモンスターだけではない。
特に調査を怠った冒険者が、環境や地形に足元を掬われるケースも少なくない。
新米ならなおさらだ。
自分は強いから大丈夫だとか、そういう慢心が命を無駄に落とす原因になる。
「採取と調査のクエストは、サザーク森林ってエリアを知るため。ウルフ討伐は、単に君たちの実力を確認するために選んだんだよ」
「なるほど。そういう理由だったんですね」
細かく説明して、ミルアの表情が戻る。
どうやら納得してくれたらしい。
俺は密かにほっとして、大きく長めに息をはく。
他の二人は――
「早く戦いたいな~」
「……」
聞いてたのか微妙だな。
さて、どうなるかちょっと不安だ。
「俺からも質問していいかな?」
「はい」
「君たちはどうして冒険者になったの?」
ありきたりな質問をしたと思う。
すると、興味なさげだった二人が、同時に俺のほうへ視線を向けた。
予想外の反応に戸惑い、聞いてはいけなかったのかと思う俺に、ミルアが答える。
「小さい頃の話なんですけど、村が魔王軍に襲われて」
「魔王軍に?」
「はい」
十年近く前の話だな。
「その時、冒険者のお兄さんに助けてもらったんです」
「格好良かったんだぜ! こうよくわかんないけど、一瞬で倒しちゃってさ!」
「凄かった、とっても」
ステラとソフィアも話に入って来た。
二人とも活き活きとした表情で、楽し気に語っている。
話を聞かなくても、表情だけで理解できる。
要するに、憧れて冒険者になったようだ。
「私たちも、あんな風になりたいって思って」
「村の皆には反対されたけどな~」
「そうなのか?」
「めっちゃくちゃ怒られた。だから無理やり出てきたんだぜ」
ソフィアがうんうんと頷く。
「それって……大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと行先を書いて残しておきましたから」
「いや、それは大丈夫とは言わないだろ」
つまり、彼女たちは家出同然でこの街に来たのか。
いきなり別の心配が増えたな。
しばらく進み、街の出口へたどり着く。
検問の人に声をかけてから、俺たちは街の外へと出た。
そして、すぐ目の前に大きな森が広がっている。
歩いて数十歩の距離に、森を抜けるための街道が敷かれていた。
荷物の輸送や、人の移動に使われている街道だ。
整備された道で、左右には特別な堀があって、モンスターの出現も少ない。
ただし、今回はこの街道を進まない。
俺たちはあくまで、森林の中に用があるから。
「三人ともこっちだ」
俺は先頭に立ち案内する。
街道とは別で、森に入るための入り口が用意されている。
入り口と言っても、人が通れる程度の間があるだけ。
俗にいう獣道というやつだが、先人たちが残した道しるべも用意されていて、順序通りに進めば迷うことはない。
「森に入るときは、必ずここから入ったほうが良い。特に最初の頃は、テキトーに行くと迷うからね」
簡単に注意だけ済ませて、俺たちは森へと足を踏み入れた。
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