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確かに私は、自分が聖女であることに疑問を抱いた。
けれど、私が聖女であることは紛れもない事実であり、今もこの身に聖女の力を感じている。
だからこそ理解ができなかった。
目の前の光景と、彼女の口から聞こえてきた言葉が……。
私は聞き返す。
「……あなたは、誰ですか?」
目の前に立つ、私によく似た女性はニコリと微笑む。
「私はイリアス・ノーマンです。この国の聖女です」
「違います。イリアスは私です! あなたは……」
容姿はそっくりだ。
髪の色も、長さも、身長や体格も私とそん色ない。
ただ瞳の色が違う。
私の瞳の色は青く澄んでいる。
彼女の瞳の色は、エメラルドグリーンだった。
その一点の違いに、気づいたことで、私は彼女が誰なのか理解する。
「マリィ……さん?」
「いいえ、私はイリアスです。マリィさん……あなたなんじゃないですか?」
「何を言っているんですか?」
間違いない。
この声と雰囲気は彼女だ。
私たちの容姿は元々、血縁関係がないのによく似ていた。
それこそ、髪型と目の色以外は一緒だった。
彼女以外にありえない。
ここまで私に似ている人間などいない。
何より、こんなことをしそうな心当たりは、彼女だけだった。
「どういうつもりなんですか? マリィさんが私の真似をするなんて」
「真似ているのはそっちでしょう? 聖女の地位を奪おうとでも考えたのかしら。怖い人だわ」
「違っ、それはあなたのほうで――」
「いい加減にしないか」
大聖堂にライゼン様が姿をみせる。
彼は怒っている様子だった。
私の味方をしに来てくれた……なんて、ありえないことは最初からわかっている。
このタイミングで現れたということは……。
「君には失望したよ、マリィ」
「……」
やっぱり、この人もグルなんだ。
ライゼン様は私になり変わったマリィさんの隣に立ち、本物である私を睨む。
「まさかこんな馬鹿げたことをするなんて……聖女になり変わろうなどと、神への冒涜だよ?」
その言葉をそっくり二人に返してあげたい気分だ。
こんなことをして、神様はどう思う?
国民は?
一体何を考えているのだろうか、この人たちは……。
「ライゼン様! 私がイリアスです! 彼女がマリィさんで」
「ふざけるんじゃない! この僕が、仮にも婚約者を見間違えるはずがないだろう!」
ライゼン様は声を荒げた。
どの口が言うのだと、心の中で呆れが湧きおこる。
私のことを婚約者として認めなかったのは、あなたじゃないですか?
ライゼン様は偽聖女になったマリィさんの肩にそっと手を回し、自身の胸の中に抱き寄せる。
「彼女がイリアス・ノーマン。私の婚約者であり、この国の聖女だよ」
「はい。ライゼン様」
「……」
もうダメだ。
この二人に何を言っても、話し合いにすらならない。
こうなったらノーマン公爵……もしくは国王陛下に相談するべきか?
ただ、この二人がグルなのだとしたら、陛下やノーマン公爵も同様に、この話に関わっている可能性が高いだろう。
彼らも、私が聖女に選ばれたことを認めていなかったから。
けれど、私が聖女であることは紛れもない事実であり、今もこの身に聖女の力を感じている。
だからこそ理解ができなかった。
目の前の光景と、彼女の口から聞こえてきた言葉が……。
私は聞き返す。
「……あなたは、誰ですか?」
目の前に立つ、私によく似た女性はニコリと微笑む。
「私はイリアス・ノーマンです。この国の聖女です」
「違います。イリアスは私です! あなたは……」
容姿はそっくりだ。
髪の色も、長さも、身長や体格も私とそん色ない。
ただ瞳の色が違う。
私の瞳の色は青く澄んでいる。
彼女の瞳の色は、エメラルドグリーンだった。
その一点の違いに、気づいたことで、私は彼女が誰なのか理解する。
「マリィ……さん?」
「いいえ、私はイリアスです。マリィさん……あなたなんじゃないですか?」
「何を言っているんですか?」
間違いない。
この声と雰囲気は彼女だ。
私たちの容姿は元々、血縁関係がないのによく似ていた。
それこそ、髪型と目の色以外は一緒だった。
彼女以外にありえない。
ここまで私に似ている人間などいない。
何より、こんなことをしそうな心当たりは、彼女だけだった。
「どういうつもりなんですか? マリィさんが私の真似をするなんて」
「真似ているのはそっちでしょう? 聖女の地位を奪おうとでも考えたのかしら。怖い人だわ」
「違っ、それはあなたのほうで――」
「いい加減にしないか」
大聖堂にライゼン様が姿をみせる。
彼は怒っている様子だった。
私の味方をしに来てくれた……なんて、ありえないことは最初からわかっている。
このタイミングで現れたということは……。
「君には失望したよ、マリィ」
「……」
やっぱり、この人もグルなんだ。
ライゼン様は私になり変わったマリィさんの隣に立ち、本物である私を睨む。
「まさかこんな馬鹿げたことをするなんて……聖女になり変わろうなどと、神への冒涜だよ?」
その言葉をそっくり二人に返してあげたい気分だ。
こんなことをして、神様はどう思う?
国民は?
一体何を考えているのだろうか、この人たちは……。
「ライゼン様! 私がイリアスです! 彼女がマリィさんで」
「ふざけるんじゃない! この僕が、仮にも婚約者を見間違えるはずがないだろう!」
ライゼン様は声を荒げた。
どの口が言うのだと、心の中で呆れが湧きおこる。
私のことを婚約者として認めなかったのは、あなたじゃないですか?
ライゼン様は偽聖女になったマリィさんの肩にそっと手を回し、自身の胸の中に抱き寄せる。
「彼女がイリアス・ノーマン。私の婚約者であり、この国の聖女だよ」
「はい。ライゼン様」
「……」
もうダメだ。
この二人に何を言っても、話し合いにすらならない。
こうなったらノーマン公爵……もしくは国王陛下に相談するべきか?
ただ、この二人がグルなのだとしたら、陛下やノーマン公爵も同様に、この話に関わっている可能性が高いだろう。
彼らも、私が聖女に選ばれたことを認めていなかったから。
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