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3.逃走と再会と
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今、この状況を招いていた。
「まさか……殿下が?」
考えたくない。
だけど、それ以外に考えられない。
一体何のために?
違う。
そんなことはどうでもよくて、私が一番ショックなのは、無実の罪を言い渡されている私を、ただ黙ってみていること。
助けようとも、意見しようともされない。
つまり、そういうことなのだと。
私にかけてくれた言葉は全て、嘘で作られた偽物だったんだ。
今さらになって気付かされた。
遅すぎたんだ。
「反論はないようだな? ならば処分を言い渡す! 宮廷錬金術師アイリス・クレンベル、貴方を国王陛下暗殺を企てた罪人として投獄、三日後に死刑とする」
言い渡された判決は、もっとも思い死罪。
こうして私の人生は幕を下ろす。
何も残せず、誰にも認めらず、利用されるだけされて捨てられる。
そんなの……
「嫌……だよ」
こぼれた涙の雫が、地面にポツリと落ちる。
その時、一羽の鳥が王座の間の煌びやかなガラス窓を突き破って侵入した。
「な、何だ?」
「鳥だと?」
全員の視線が上に向けられる。
私も涙で瞳を潤ませながら天井を見上げた。
そこには一羽の鳥が飛んでいた。
鳥はくちばしで小さな小瓶を咥えている。
黄色い液体の入ったその小瓶に、私だけが見覚えを感じた。
あれは――
鳥が小瓶を落下させる。
落下した小瓶が地面に衝突すれば割れる。
当たり前のことだけど、私はそうなる前に両目を閉じた。
知っているから。
あの小瓶の中身と、大気に晒された瞬間に起こる激しい発光現象を。
「ぐっ、め、目が……」
小瓶が割れ、眩しい光が部屋に広がる。
目を開けていた者たちの視界が閉ざされ、目を瞑っていた私だけが平常に見える。
――走れ!
その直後、頭の中に声が響いた。
聞き覚えのある力強い声に、私の身体はぶるっと震える。
そして涙を拭い、一目散に部屋の出口へとかけた。
小瓶を持ってきた鳥が先頭を飛び、私をどこかへ案内してくれている。
どこへ案内しているのかわからないけど、私はそれに従って走った。
後ろなんて気にせず、前だけを向いて。
そうしてたどり着いたのは……
「はぁ、はぁ……ここって……」
懐かしい場所に出た。
緑が美しい木々が生い茂る森の中。
私はこの森に、小さい頃からよく足を運んでいた。
錬金術の素材を集めるために、この森はとても良い環境だったんだ。
でも、一番の思い出はそこにはない。
私はこの場所で、一人の少年と出会った。
「懐かしいだろ? ざっと一年ぶりだからな」
その少年は青年となり、今……私の前に立っている。
「ラル君?」
「ああ。久しぶりだな、アイリス」
「まさか……殿下が?」
考えたくない。
だけど、それ以外に考えられない。
一体何のために?
違う。
そんなことはどうでもよくて、私が一番ショックなのは、無実の罪を言い渡されている私を、ただ黙ってみていること。
助けようとも、意見しようともされない。
つまり、そういうことなのだと。
私にかけてくれた言葉は全て、嘘で作られた偽物だったんだ。
今さらになって気付かされた。
遅すぎたんだ。
「反論はないようだな? ならば処分を言い渡す! 宮廷錬金術師アイリス・クレンベル、貴方を国王陛下暗殺を企てた罪人として投獄、三日後に死刑とする」
言い渡された判決は、もっとも思い死罪。
こうして私の人生は幕を下ろす。
何も残せず、誰にも認めらず、利用されるだけされて捨てられる。
そんなの……
「嫌……だよ」
こぼれた涙の雫が、地面にポツリと落ちる。
その時、一羽の鳥が王座の間の煌びやかなガラス窓を突き破って侵入した。
「な、何だ?」
「鳥だと?」
全員の視線が上に向けられる。
私も涙で瞳を潤ませながら天井を見上げた。
そこには一羽の鳥が飛んでいた。
鳥はくちばしで小さな小瓶を咥えている。
黄色い液体の入ったその小瓶に、私だけが見覚えを感じた。
あれは――
鳥が小瓶を落下させる。
落下した小瓶が地面に衝突すれば割れる。
当たり前のことだけど、私はそうなる前に両目を閉じた。
知っているから。
あの小瓶の中身と、大気に晒された瞬間に起こる激しい発光現象を。
「ぐっ、め、目が……」
小瓶が割れ、眩しい光が部屋に広がる。
目を開けていた者たちの視界が閉ざされ、目を瞑っていた私だけが平常に見える。
――走れ!
その直後、頭の中に声が響いた。
聞き覚えのある力強い声に、私の身体はぶるっと震える。
そして涙を拭い、一目散に部屋の出口へとかけた。
小瓶を持ってきた鳥が先頭を飛び、私をどこかへ案内してくれている。
どこへ案内しているのかわからないけど、私はそれに従って走った。
後ろなんて気にせず、前だけを向いて。
そうしてたどり着いたのは……
「はぁ、はぁ……ここって……」
懐かしい場所に出た。
緑が美しい木々が生い茂る森の中。
私はこの森に、小さい頃からよく足を運んでいた。
錬金術の素材を集めるために、この森はとても良い環境だったんだ。
でも、一番の思い出はそこにはない。
私はこの場所で、一人の少年と出会った。
「懐かしいだろ? ざっと一年ぶりだからな」
その少年は青年となり、今……私の前に立っている。
「ラル君?」
「ああ。久しぶりだな、アイリス」
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