借金まみれの貧乏令嬢、婚約者に捨てられ王子様に拾われる ~家を再興するため街で働いていたら、実は王子様だった常連に宮廷へスカウトされました~

日之影ソラ

文字の大きさ
上 下
6 / 11

6

しおりを挟む
 お店は週六日、朝から夕方まで開いている。
 早朝にお店に入り、掃除や片づけをざっくりしてから品ぞろえを最終確認する。

「治癒ポーション、耐性系ポーション……よし」

 棚に並んだポーションと、箱にしまわれた在庫もチェックする。
 別の棚にはアクセサリー類。
 ただの貴金属ではなく、魔法が込められた道具だ。
 他にも魔物の素材や、薬草などの植物系の素材も取り扱っている。
 食料品は、遠出するときに便利な携帯食料が主だ。
 品ぞろえを見てわかる通り、ここで売っている物のほとんどが冒険者向けのものが多い。

「さて、時間だね」

 朝の七時になり、お店がオープンする。
 開店してから五分、さっそくお客さんが入ってくる。

「いらっしゃいませ」

 カランとベルが鳴って入ってきたのは、いかにも柄の悪そうな男性だ。
 筋肉質でスキンヘッド。
 見た目だけでも目の前に立たれたら萎縮してしまう。

「おう! アイリスちゃん、今日もいつものやつ頼むぜ」
「はい」

 実はこの人、常連さんだ。
 冒険者ギルドに所属していて、冒険前にいつもここで必要なものを揃えていく。
 見た目は怖いけど、気さくでとてもいい人だ。

「治癒ポーション二本と、解毒ポーション二本、それから簡易テントですね」
「おう。あーそうだ。実は身体強化の腕輪が壊れちまってよぉ、見てくれ」
「はい」

 彼は右腕にしている腕輪を見せてくれた。
 ただの腕はではなく、装着すると身体能力が少し向上する魔導具だ。
 
「あー、確かにボロボロですね。でもコアは無事なので修理はできると思います。どうされますか?」
「うーん、修理できても結構経ってるからな。いいや、新しいのを買う。こいつは回収してもらえるか?」
「はい。じゃあその分お値引きさせてもらいますね」
「おう助かるぜ。ここは他の店より価格が安いし質もいい。俺ら冒険者にとっちゃ最高の店だな」
「ありがとうございます」

 そう言って頂けると頑張って働いている心も報われる。
 私は新しい魔導具を棚から取り出す。

「しっかしホント安いよな~ これ全部自分で材料揃えてるんだろ?」
「はい。お休みの日に」
「若いのにすげぇよな~ そんだけ動けるならいっそ冒険者になっちまえばいいのに」
「それはちょっと……」

 考えたことはある。
 けど私は別に、冒険がしたいわけじゃなかった。
 私の目的はあくまで、ルストワール家を再興するための資金集めだ。
 何より依頼を受けてお金を貰うより、こうして自分で素材を集めて商品を揃え、売買するほうがお金を集めやすい。

「わーってるよ。アイリスちゃんは家を復活させるために頑張ってるんだもんな。個人的にはもったいねーと思うけど、今で十分助かってるし、応援してるぜ」
「ありがとうございます。お気をつけて」
「おう。また来るぜ!」

 気さくな冒険者の男性は去って行く。
 それと入れ替わるように、新しいお客さんが入ってきた。

「いらっしゃいませ」
「ポーションが欲しいんだけど」
「はい。どんな効果のものでしょうか?」

 店の前の通りは冒険者がよく通る。
 朝は冒険前で一番忙しい時間帯だ。
 ピークが過ぎるまで頑張ろう。
 心の中でぐーっと拳を握るイメージをして、私は気合を入れる。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

急に婚約破棄だと騒がれたけど問題なしです。みんな大歓迎!

うめまつ
恋愛
パーティー会場でワガママ王子が婚約破棄宣言した。誰も困らない!

「これは私ですが、そちらは私ではありません」

イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。 その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。 「婚約破棄だ!」 と。 その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。 マリアの返事は…。 前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。

この国では魔力を譲渡できる

ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」  無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。  五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

見た目普通の侯爵令嬢のよくある婚約破棄のお話ですわ。

しゃち子
恋愛
侯爵令嬢コールディ・ノースティンはなんでも欲しがる妹にうんざりしていた。ドレスやリボンはわかるけど、今度は婚約者を欲しいって、何それ! 平凡な侯爵令嬢の努力はみのるのか?見た目普通な令嬢の婚約破棄から始まる物語。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私はあまり大切にされず育ってきたのですが……?

四季
恋愛
この国において非常に珍しいとされている銀髪を持って生まれた私、これまであまり大切にされず育ってきたのですが……?

聖女がいなくなった時……

四季
恋愛
国守りの娘と認定されたマレイ・クルトンは、十八を迎えた春、隣国の第一王子と婚約することになった。 しかし、いざ彼の国へ行くと、失礼な対応ばかりで……。

処理中です...