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 グレン様が驚いて目を丸くしていた。
 私は何か変なことを言ってしまったのだろうか。
 不安になった私はグレン様に尋ねる。

「ダメでしたか?」
「いや、自分でって……どうやって取るつもりだ?」
「もちろん歩いて、鉱山の場所とか、砂鉄が採取できる場所がわかれば教えて頂けると嬉しいです。場所がわかればこっちでやれますから」
「……お前は本当に面白いな」

 グレン様は呆れたように笑う。
 私は何が面白かったのかわからなくて、キョトンと首を傾げる。

「冗談で言っていないのがわかる」
「はい」

 冗談のつもりはないから当然だ。

「わかった。場所は提示しよう。その代わり、護衛はつけさせてもらう。人手も多いほうが何かと便利だろう?」
「ありがとうございます! 助かります」

 鍛冶の素材は、基本的に鉱物が多い。
 私一人じゃ持ち運べる量に限界があったから、正直人手はほしかった。
 のだけど……。

  ◇◇◇

「出発しようか」
「……あの、グレン様も一緒に行かれるんですか?」
「不服か?」
「い、いえ! そうではなく、お仕事のほうは大丈夫なのかなと……」
「心配するな。優秀な部下に任せている」

 レーゲンさんが悲鳴を上げていそうだ。
 護衛をつけるとは聞いていた。
 まさか、グレン様が直々に護衛をしてくれるとは思っていなかった。
 
「ソフィアさん、またよろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」

 護衛はグレン様だけではなかった。
 以前に掃除を手伝ってくれた騎士の方々三名も一緒にいる。
 三人とも背中には大きめのバッグを背負っていた。

「それ、重くありませんか?」
「平気ですよ。見た目は大きいですが、これは魔導具です。中に入れた物の重さが十分の一になるので、重さはほとんど感じません」
「そうなんですね」
「はい。これなら思い鉱物もたくさん運べます。遠慮せずたくさん採取しましょう。ソフィアさんには、この剣のことで助けられていますから」

 三人とも、打ち直した剣に満足してくれているようだった。
 自分の打った剣が認められる。
 感謝されることは嬉しい。
 宮廷時代、あまり他人からの感謝を聞くことはなかったから、余計に心に染みる。

「あの、ところで、鉱山までかなり距離があると聞いたのですが……」

 私たちは身一つ。
 馬車も用意されていない。
 まさか徒歩で行くつもりなのだろうか?

「安心しろ。そのために俺がいる」
「え?」

 ニヤリと笑みを浮かべ、グレン様が指を鳴らす。
 瞬間、私たちの足元に魔法陣が広がり、気づけば景色が街中から、ゴツゴツした岩だらけに変化していた。

「到着したぞ」
「……」

 さすが魔王様。
 瞬間移動くらい当たり前に、日常の一コマのように熟してしまう。
 ふと思った。
 これができるなら、魔導具のカバンなんていらないんじゃ……。
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