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壱章 沈黙ノ“トウキョウ”街
ご 沈黙の線香花火。
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『いやああああ!!』
1つ。
『死にたくなィ』
2つ。
この世界でもいちばん大きな町、人魔共国。
そんな町も今や、廃墟が並ぶ死んだ街となる。
それを表すかのように、1つ2つと大きな血飛沫が上がる。
その血しぶきはまるで、花火のようだ。
悲鳴をあげ、血飛沫を飛ばす。
そんな残酷な光景を、もはや殺戮人形と化したユキの前には、ただの映画に過ぎなかった。
彼女の心はもう、ここには無い。
そう思われていた。
「………やらなきゃ………」
『嫌だっ!!こっちグルなぁ!!いやぁ!!ぐるなッグ』
「……………まだ、半分…………」
『いやぁあああ!!殺人ギッ』
「……………………」
『なんだ!?ヒッ!!!人殺ジッ』
彼女は焦っていた。
ゲームのように淡々と殺していく彼女。
だが内心は穏やかでは無い。
(…………この呪いを………解かなきゃ……)
ストレスと、劣等感と、罪悪感と憎悪と憎しみと怒りと焦りと苦しみと焦燥感と………
そんな様々な感情が、彼女の中に渦巻く。
まだ彼女は人間を保てている。
完全に獣になっていない。
理性が残っている、ということだ。
冷静に、しかし感情的に彼女は殺戮をこなす。
数十人を手にかけてきたからか、手馴れた手つきで急所を狙う。
逃げようとする者の足を切り、
立ち向かおうとする者の手を切り、
叫ぼうとする者の喉を切り、
涙目で懇願する者の目を切る。
残酷だった。
まだ19歳の少女が、やっていいことでは無い。
そんな作業を続けていると、会ってしまった。
『………………ホントに………殺ったんだね………。』
見覚えのある少女。
いや、忘れるはずがない。
「………サクラ?」
初めての友達、初めての親友。
私という物全てを創ってくれた存在。
坂本紗倉。
『……ね、ユキっ!お願い………あたしと……今すぐ逃げよう!!!』
「……え?」
サクラの言った言葉は、一瞬理解ができなかった。
しかし、サクラは本気だった。
髪を乱し、息も絶え絶えで。
きっと私を止めるために、私を探してきたのだろう。
きっと怖いだろうな。
私が、こんな冒涜的なことをしているのにも関わらず、彼女は私と逃げる選択をした。
でも、無理だ。
「………しょうがないの」
そう呟くと、彼女は豹変した。
『ユっ…!ぁ……やめ……やめよう!!!!ねぇ、嫌なことがあった、ならさ…!!!…えぅ…もうこんなこと、やめよう……!!』
逃げながら、サクラは諭すようにいう。
『お願い……もうこれ以上、傷つけさせたくな
サクラが言い終わる前に、首をかすむ。
後ろのポニーテールはバッサリ斬られ、首から少し血が出る。
『ぁ………ぅ……まって……お…願い……。』
後ろは崖。
その先は水平線が拡がっていた。
夕陽で赤く染まる海と、2人の影が伸びる。
サクラは座り込んだ。
恐怖に怯え、失禁し、震えていた。
「………ごめんね」
『……!』
彼女は……ユキは泣いていた。
そう、仕方がなかったのだ。
きっと、そうだ。
どうすることも出来ない憎しみ、トラウマ。
全てひとりで抱えきるはずなく、それが涙として溢れる。
葛藤し、罪悪感に悶えるユキの顔を見て、サクラは何かを理解する。
『………わかったよ。』
「……ぇ?」
『……やっとわかったよ。あたしが馬鹿だった。……あたしが………自殺…………すればいいんだよね……?』
「……ぇ、あ……まっ……!」
『いいのっ!!もう………いいんだ。………これは、いまあたしが決めたことだから。だから…』
「……だめっ、もどって!」
『……その先、何をするかはユキが決めてね。アタシはここで、一旦終わりだから。………何を選んでも、どんな道でも、アタシはユキの味方だからね。
ユキが必要なら、死んでも構わない。』
「まって!お願いやめてっ………行かないでっ…………!あのっ!一緒に逃げ
『……それじゃ、またね。』
瞬間
サクラは落ちた。
夕日は綺麗で、キラキラと海が光っていた。
桜が美しく、吹雪のようだった。
海は宝石のように輝いていた。
冷たい風は暖かくなってしまって、
花弁が風に吹かれ、舞い散るように。
サクラもまた、遠い風と共に、今消えた。
「嫌だっ…嫌だああああああああああああああああああ!!!!!!!!さぐ、サグラああああああああああああああああ!!!!!!」
どれだけ叫ぼうとも、
そこにはもう、サクラの声はなかった。
あったのは虚しく轟く叫び声と
波の音だけが、響いていた。
1つ。
『死にたくなィ』
2つ。
この世界でもいちばん大きな町、人魔共国。
そんな町も今や、廃墟が並ぶ死んだ街となる。
それを表すかのように、1つ2つと大きな血飛沫が上がる。
その血しぶきはまるで、花火のようだ。
悲鳴をあげ、血飛沫を飛ばす。
そんな残酷な光景を、もはや殺戮人形と化したユキの前には、ただの映画に過ぎなかった。
彼女の心はもう、ここには無い。
そう思われていた。
「………やらなきゃ………」
『嫌だっ!!こっちグルなぁ!!いやぁ!!ぐるなッグ』
「……………まだ、半分…………」
『いやぁあああ!!殺人ギッ』
「……………………」
『なんだ!?ヒッ!!!人殺ジッ』
彼女は焦っていた。
ゲームのように淡々と殺していく彼女。
だが内心は穏やかでは無い。
(…………この呪いを………解かなきゃ……)
ストレスと、劣等感と、罪悪感と憎悪と憎しみと怒りと焦りと苦しみと焦燥感と………
そんな様々な感情が、彼女の中に渦巻く。
まだ彼女は人間を保てている。
完全に獣になっていない。
理性が残っている、ということだ。
冷静に、しかし感情的に彼女は殺戮をこなす。
数十人を手にかけてきたからか、手馴れた手つきで急所を狙う。
逃げようとする者の足を切り、
立ち向かおうとする者の手を切り、
叫ぼうとする者の喉を切り、
涙目で懇願する者の目を切る。
残酷だった。
まだ19歳の少女が、やっていいことでは無い。
そんな作業を続けていると、会ってしまった。
『………………ホントに………殺ったんだね………。』
見覚えのある少女。
いや、忘れるはずがない。
「………サクラ?」
初めての友達、初めての親友。
私という物全てを創ってくれた存在。
坂本紗倉。
『……ね、ユキっ!お願い………あたしと……今すぐ逃げよう!!!』
「……え?」
サクラの言った言葉は、一瞬理解ができなかった。
しかし、サクラは本気だった。
髪を乱し、息も絶え絶えで。
きっと私を止めるために、私を探してきたのだろう。
きっと怖いだろうな。
私が、こんな冒涜的なことをしているのにも関わらず、彼女は私と逃げる選択をした。
でも、無理だ。
「………しょうがないの」
そう呟くと、彼女は豹変した。
『ユっ…!ぁ……やめ……やめよう!!!!ねぇ、嫌なことがあった、ならさ…!!!…えぅ…もうこんなこと、やめよう……!!』
逃げながら、サクラは諭すようにいう。
『お願い……もうこれ以上、傷つけさせたくな
サクラが言い終わる前に、首をかすむ。
後ろのポニーテールはバッサリ斬られ、首から少し血が出る。
『ぁ………ぅ……まって……お…願い……。』
後ろは崖。
その先は水平線が拡がっていた。
夕陽で赤く染まる海と、2人の影が伸びる。
サクラは座り込んだ。
恐怖に怯え、失禁し、震えていた。
「………ごめんね」
『……!』
彼女は……ユキは泣いていた。
そう、仕方がなかったのだ。
きっと、そうだ。
どうすることも出来ない憎しみ、トラウマ。
全てひとりで抱えきるはずなく、それが涙として溢れる。
葛藤し、罪悪感に悶えるユキの顔を見て、サクラは何かを理解する。
『………わかったよ。』
「……ぇ?」
『……やっとわかったよ。あたしが馬鹿だった。……あたしが………自殺…………すればいいんだよね……?』
「……ぇ、あ……まっ……!」
『いいのっ!!もう………いいんだ。………これは、いまあたしが決めたことだから。だから…』
「……だめっ、もどって!」
『……その先、何をするかはユキが決めてね。アタシはここで、一旦終わりだから。………何を選んでも、どんな道でも、アタシはユキの味方だからね。
ユキが必要なら、死んでも構わない。』
「まって!お願いやめてっ………行かないでっ…………!あのっ!一緒に逃げ
『……それじゃ、またね。』
瞬間
サクラは落ちた。
夕日は綺麗で、キラキラと海が光っていた。
桜が美しく、吹雪のようだった。
海は宝石のように輝いていた。
冷たい風は暖かくなってしまって、
花弁が風に吹かれ、舞い散るように。
サクラもまた、遠い風と共に、今消えた。
「嫌だっ…嫌だああああああああああああああああああ!!!!!!!!さぐ、サグラああああああああああああああああ!!!!!!」
どれだけ叫ぼうとも、
そこにはもう、サクラの声はなかった。
あったのは虚しく轟く叫び声と
波の音だけが、響いていた。
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