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「はぁ・・・また探し直しか・・・」
途切れてしまった足跡を諦め、春人はとりあえず最後の足跡が向いている方向に向かうことにした。
一応、足跡が途切れた倒木にナイフで矢印をつけて、来た方向がわかるようにしておく。
こんな土地勘がない場所で万が一迷ったら悲惨だ。エルク達が迎えにきてくれる事もあまり当てにしない方がいいだろう。
静寂に包まれた見知らぬ森の中で、またゆっくりと進んで行く。獲物を見つけるのに頼りになるのは今までの経験と五感だけ。どんどん心細くなってくる春人だった。
時折、小枝の先を来た方向に向かって手折って痕跡を残す。腕時計を見ると1人になってから既に1時間半ほど経っている。
この地域がどのくらいの時刻で暗くなるのかわからないが、行き帰りの時間と獲れた獲物をバラすことを考えると、獲物を探すのに使える時間は残り5時間ほどだろうか。
忍び猟で使える5時間というのは、そんなに長い時間ではない。獲物を探しているとあっという間だ。
とはいえ、焦っても仕方ないので五感を研ぎ澄ませながら慎重に進むしかない。
自分より遥に索敵能力が高い相手に挑む以上、慎重になりすぎて悪いことはないと春人は思っている。
そうしてまた1時間ほど過ぎた頃だった。
カサ・・・カサ・・・
っと微かだが何かが動く音が聞こえた。
春人はピタッと動きを止め、更に耳と目を凝らして周囲を探る。獣の足音のようでも、鳥が遊んでいたり、単に折れた枝が落ちる音という事も良くある。
音源は近いはずだ。正体がわかるまで出来る限り頭も動かさず、眼球だけで観察する。
カサ・・・パキッ
音が続き、春人の緊張が高まる。自分の心臓の音が煩い。
パキッと枝を折る音は大きめの生き物が出す音の可能性が高いのだ。
「・・・?」
音は近いはずなのに姿が見えない。そもそもここは異界の森で、相手が鹿だという確証もないが・・・
動きたくなるのを我慢してゆっくりと周りを観察し続けると、目の端に何かを捕らえた。
「・・・マジかよ」
春人は思わず小さく呟いた。
それは確かに鹿だった。探し求めていた獲物の姿をようやく捕らえた。
春人から50~60m先で鹿は悠々と葉を食んでいる。さっきの音は木の葉を食べる音だったようだ。
灰褐色の体毛、立派な角。ここからみてもそれなりに大きい立派な鹿だ。
そして、その鹿は何もない空中に立って樹上の葉を食べていた。
途切れてしまった足跡を諦め、春人はとりあえず最後の足跡が向いている方向に向かうことにした。
一応、足跡が途切れた倒木にナイフで矢印をつけて、来た方向がわかるようにしておく。
こんな土地勘がない場所で万が一迷ったら悲惨だ。エルク達が迎えにきてくれる事もあまり当てにしない方がいいだろう。
静寂に包まれた見知らぬ森の中で、またゆっくりと進んで行く。獲物を見つけるのに頼りになるのは今までの経験と五感だけ。どんどん心細くなってくる春人だった。
時折、小枝の先を来た方向に向かって手折って痕跡を残す。腕時計を見ると1人になってから既に1時間半ほど経っている。
この地域がどのくらいの時刻で暗くなるのかわからないが、行き帰りの時間と獲れた獲物をバラすことを考えると、獲物を探すのに使える時間は残り5時間ほどだろうか。
忍び猟で使える5時間というのは、そんなに長い時間ではない。獲物を探しているとあっという間だ。
とはいえ、焦っても仕方ないので五感を研ぎ澄ませながら慎重に進むしかない。
自分より遥に索敵能力が高い相手に挑む以上、慎重になりすぎて悪いことはないと春人は思っている。
そうしてまた1時間ほど過ぎた頃だった。
カサ・・・カサ・・・
っと微かだが何かが動く音が聞こえた。
春人はピタッと動きを止め、更に耳と目を凝らして周囲を探る。獣の足音のようでも、鳥が遊んでいたり、単に折れた枝が落ちる音という事も良くある。
音源は近いはずだ。正体がわかるまで出来る限り頭も動かさず、眼球だけで観察する。
カサ・・・パキッ
音が続き、春人の緊張が高まる。自分の心臓の音が煩い。
パキッと枝を折る音は大きめの生き物が出す音の可能性が高いのだ。
「・・・?」
音は近いはずなのに姿が見えない。そもそもここは異界の森で、相手が鹿だという確証もないが・・・
動きたくなるのを我慢してゆっくりと周りを観察し続けると、目の端に何かを捕らえた。
「・・・マジかよ」
春人は思わず小さく呟いた。
それは確かに鹿だった。探し求めていた獲物の姿をようやく捕らえた。
春人から50~60m先で鹿は悠々と葉を食んでいる。さっきの音は木の葉を食べる音だったようだ。
灰褐色の体毛、立派な角。ここからみてもそれなりに大きい立派な鹿だ。
そして、その鹿は何もない空中に立って樹上の葉を食べていた。
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