裏乙女ゲー？モブですよね？ いいえ主人公です。

2. ゲームの世界。そこまで悪くないかも

セレスが来るまで暇なので外を眺めてみる。
そこはやっぱりゲームの世界だけあり、俺の元住んでいたニホンとは全く違う景色が広がっていた。
白を基調にした壁に屋根は暖色系。所々にはレンガで作られた家もあった。
まるでヨーロッパにでも旅行に来たようだ

ぼんやりと外を眺めているといつのまにか
部屋に入ってきていた医者となんだか豪華な服を纏った男性と女性が入り口付近でこちらを見て立っていた。

「リア！」

急に女性が大きな声をあげるものだから思わずびっくりして後ずさる。

俺のその様子にやっぱりといった表情をして男性が医師に指示を出す。

男性に指示された医者はゆっくりとこちらへ近づいてきた。
俺をベッドに座らせて色々な検査をしていく。まぁ俺は健康そのものだから異常が見つかるはずないが黙って検査を受ける。

「恐れながら申し上げます。記憶喪失になっている事以外リア様には体の異常ありません。どこにも外傷がないので恐らく何か精神的な疲れから倒れられ記憶喪失になってしまったのだろうと判断致します。」

なるほど俺がこの体になる前に倒れたからこんなにも執事が心配しているのか。
それにしても医者の後ろで今にも泣き出しそうな女性と眉間に皺を寄せている男性は一体誰なんだろうか…まさか親な訳ないよな？あんなに若いなんて…あるはずないよな?

「リア…」
男性が、そう言って俺の前まで歩いてきて俺の目線に合わせてしゃがむ。

「リア…お前の名前はハイデス・リアフォード。そして私はお前の父親だ。ハイデス・ライスカー。そして妻のハイデス・メアリー。お前の母親だ。
お前は５日前に庭で倒れていたんだ。私が忙しくしていたばかりにお前が辛い思いをしていることに気付かなかった。すまない…。本当にすまない。もっとちゃんとお前を見ていればこんなことには…‼︎」

グッと目頭を抑え涙ぐむ父親に俺は猛烈な罪悪感に襲われていた。ただ俺はゲームの世界に入り込んだだけであったからだ

とにかく今の俺に出来ることは父親と母親を安心させることだ。
俺は目の前で涙している父親に抱きつく
「父上。僕はこんなにも愛してくれる父上と母上がいてくれるだけで幸せです。」

そういうと父親の後ろにいた母親が涙でわけのわからない顔のまま抱きついてきた。
正直その顔はあまり俺に押し付けてほしくないが愛されているということを身に染みて感じた。
あぁ。この世界はなんて幸せな世界なんだろうか…。

このゲームに入る前の生活といったら…
母親は俺らが産まれてからずっと夜遊びに明け暮れていた。そんな母親を見兼ねて父親は他に女を作り出ていった。
そんな親の元で生活することはできず妹を連れて俺は家を出た。
まだ高校生だった俺はいくつもバイトを掛け持ちして貧しいながら妹と幸せに暮らしていた。高校を卒業した後は本格的に仕事に打ち込み少し贅沢できるほどにまでなったがそんな時、母親が俺たちの前に現れたのだ。あいつは俺らから生活費として散々金を巻き上げた後煙のように消えた。

あいつに泣きながらもお母さんのためと言って笑顔で金を渡す姿は今でも瞼の裏に焼きついて離れない。あいつは親になる資格なんて初めからなかったのかもしれない。
そんな親から愛なんてものを向けられたことがなかった俺からすれば初めて親という存在から愛を向けられているこの状況は涙せずにはいられなかった。