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第1話 千年の都
酒場の平穏
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「あん時は楽しかったよねぇ~」
「そうだな」
リラはニコニコしながらグラスをどんどん傾けていく。二日酔いがきついと毎回言っているくせしてこれだ、反省とかはしないのだろうか?
いやまあ、冷静な判断力が消え失せているのもしれないが。
「そいえば、アリサが一番記憶に残ってるのはなにぃ~、聞いたことあんまりなかったんだけどぉ」
「私か? そうだな、リラと仲良くしてたのを邪魔してきた保安局の連中を威圧で追い返したこと、とかか?」
「むかしの話するねぇ……、私覚えてるよ、姉えと一緒にめちゃくちゃ威圧してたねぇ……、なつぃ……」
むにゃむにゃ言いながら、リラはカウンターにうつ伏せになる。眠いのか頭が痛いのか、はたまたそれ以外なのかはわからないが。
「嫌になって姉えはどっか行ったきり帰ってこないし、どこで何してるんだか……」
リラが寂しそうな顔をする。
「……、リラ、その話はよそう」
「ホントは分かってるけどさ、それでもちょっとは期待しちゃうんだよねぇ……」
「リラ」
「御桜姉え、帰ってきてよ……。アリサと二人だけだと、つまんないんだよぉ……」
「リラ!」
その声に、ようやくリラは気づいたらしい。
両腕に顔を完全に埋ませて、ごにょごにょ何かを言っている。
「淋しいんだよ……、姉え……」
「……、リラ」
頭を撫でてやる。
どうにも、精神的にかなり参っているらしい。
「私は、リラから絶対に離れないから安心しろ。御桜姉えみたいな事はしない」
「ホント!?」
跳ね起きるリラ。
顔は完全に真っ赤に染まってる、めちゃくちゃ酔っ払っているらしい。酔っぱっぱのリラが、ちょっと尊く感じた。
あるいは、懐かしく。
「じゃあ、ちゅっして」
「ほっぺでいいか?」
「唇が良い」
おいおい……、そういうのは家だけにしておけ。ここでやったらすごい目で見られるぞ。
いやまあ、実際凄い目で見られているわけだし。いくら酒場は盗聴されないとはいっても、ねぇ。
「そういうのは家だけな」
耳元でそっと囁き、ほっぺに口吻た。ふわぁ、と変な声を出してリラが私の方に倒れ込んでくる。
ちなみに、リラと同じであれはないから、胸骨あたりに結構ガツン、という衝撃が走った。ただまあ、可愛いから許す。
「アリサ好きぃ……」
「よしよし」
頭を撫でてやると、お犬さんみたいに幸せそうな顔をした。私は一体何を見せられているんだろうか。
いやまあ、満更でもないが。
「少し寝るか?」
「膝枕してぇ……」
「わかったよ」
膝にすとん、と頭が落ちる。
そのまま、すやぁ、と眠りについた。お酒のんだからとはいえ、流石に早すぎやしないかと思うんだが。
「……、疲れてたんだな、戦場の女神様は」
よしよし、と髪を撫でる。
膝が暖かい、リラの体温を感じる。ずっと昔には、姉えにしてもらっていた時は、姉えもこんな風に感じていたんだろうか?
「済まない、もう一杯何かくれないか?」
バーテンダーに頼んで、他のお酒を出してもらう。ガバガバお酒を飲みまくっていたリラとは違って私は飲み足りないし、それに何も頼まずにここにいるのは迷惑だ。リラはしばらく寝かせておいてやりたいし、ここにしばらくいるのは確定事項となったわけだからな。
「お二人は死神殿と女神殿かい?」
少し年を食った感じの、魔女のバーテンダーが、そう聞いてくる。金髪でスタイル抜群な、顔立ちの良い美女。
「よく分かったな」
「いつもは他の店行ってるだろうに、今日はどうしてこっちに来たんだい?」
ハハハ、と笑う。
「言ってくれるな。他の店を潰して回ったのはそちらだろうに」
「なんのことやら分からないねぇ。ただ私は、他の店に行ってお酒を飲んだだけだよ」
ちなみに、他の店の常連を奪うためにわざわざお酒を奢り、酔っぱっぱにしたついでに自分の店を紹介したらしい。スタイル抜群のこの美魔女さんにつられて、いつのまにやらこちらの常連になっていたのだとか。
いやあ、なんというか、恐ろしいな、うん。
「それで、そちらさんはどうして私に?」
「そりゃ、カウンター席であんだけいちゃこらされたら、ちょっかいの一つもかけたくなるでしょう?」
「なるほどな」
すぅすぅ、と寝息を立てて爆睡しているリラ。一瞬、膝に何か冷たいものを感じて見てみると、涙とよだれだった。
「おいおい……」
自分のハンカチを当てて、涙とよだれを拭ってやる。
「アリサ……」
寝言で、必死な声で、リラが言う。
「安心しろ、ここにいるからな」
頭を撫でてやると、安心したのかまたすやぁ、と深い眠りに落ちていく。
「……、完全に私のこと無視? 悲しいんだけど」
「悪いな、私はリラ最優先なんでな」
「死神と女神の相思相愛なんて、なんだか見ていて微笑ましいねぇ。ただ、周りから良い目では見られていないだろうけど、大丈夫?」
はっ、と笑う。
「知ったことか。勝手に言わせておけばいいだろう?」
「冷たいもんだねぇ。まあ、だから死神なんて呼ばれてるんだろうけどさ」
「それはそうかもな」
グラスを傾けて、お酒を喉に流し込む。
さして飲める体質でもないから、これを飲んでおしまいだな。
「それで、要件は何か聞いてないんだが?」
「言ったでしょう? 貴女にちょっかいを掛けたかった」
「……、なるほど」
一応、気をつけておいたほうが良いかもしれないな。まあ、そうそう気取られはしないだろうが。
「ところで最近、年齢制限に引っ掛かるような幼女が出入りしてたりしないか?」
「追い返すのに苦労しているねぇ。それがどうかしたの?」
「いや、さっさと追い返したいなら、こいつを渡してやろうと思ってな」
黄色い紙を、バーテンダーに渡す。
「これはありがたい、あとできっちり使わせてもらうよ」
「それはどうも。ところでもうしばらくここに居たいんだが構わないか?」
「今日は別に構わないよ」
なら、暫くの間、リラのためにもここで休ませてもらうか。こんな無防備な姿をさらしているわけだし。
「そうだな」
リラはニコニコしながらグラスをどんどん傾けていく。二日酔いがきついと毎回言っているくせしてこれだ、反省とかはしないのだろうか?
いやまあ、冷静な判断力が消え失せているのもしれないが。
「そいえば、アリサが一番記憶に残ってるのはなにぃ~、聞いたことあんまりなかったんだけどぉ」
「私か? そうだな、リラと仲良くしてたのを邪魔してきた保安局の連中を威圧で追い返したこと、とかか?」
「むかしの話するねぇ……、私覚えてるよ、姉えと一緒にめちゃくちゃ威圧してたねぇ……、なつぃ……」
むにゃむにゃ言いながら、リラはカウンターにうつ伏せになる。眠いのか頭が痛いのか、はたまたそれ以外なのかはわからないが。
「嫌になって姉えはどっか行ったきり帰ってこないし、どこで何してるんだか……」
リラが寂しそうな顔をする。
「……、リラ、その話はよそう」
「ホントは分かってるけどさ、それでもちょっとは期待しちゃうんだよねぇ……」
「リラ」
「御桜姉え、帰ってきてよ……。アリサと二人だけだと、つまんないんだよぉ……」
「リラ!」
その声に、ようやくリラは気づいたらしい。
両腕に顔を完全に埋ませて、ごにょごにょ何かを言っている。
「淋しいんだよ……、姉え……」
「……、リラ」
頭を撫でてやる。
どうにも、精神的にかなり参っているらしい。
「私は、リラから絶対に離れないから安心しろ。御桜姉えみたいな事はしない」
「ホント!?」
跳ね起きるリラ。
顔は完全に真っ赤に染まってる、めちゃくちゃ酔っ払っているらしい。酔っぱっぱのリラが、ちょっと尊く感じた。
あるいは、懐かしく。
「じゃあ、ちゅっして」
「ほっぺでいいか?」
「唇が良い」
おいおい……、そういうのは家だけにしておけ。ここでやったらすごい目で見られるぞ。
いやまあ、実際凄い目で見られているわけだし。いくら酒場は盗聴されないとはいっても、ねぇ。
「そういうのは家だけな」
耳元でそっと囁き、ほっぺに口吻た。ふわぁ、と変な声を出してリラが私の方に倒れ込んでくる。
ちなみに、リラと同じであれはないから、胸骨あたりに結構ガツン、という衝撃が走った。ただまあ、可愛いから許す。
「アリサ好きぃ……」
「よしよし」
頭を撫でてやると、お犬さんみたいに幸せそうな顔をした。私は一体何を見せられているんだろうか。
いやまあ、満更でもないが。
「少し寝るか?」
「膝枕してぇ……」
「わかったよ」
膝にすとん、と頭が落ちる。
そのまま、すやぁ、と眠りについた。お酒のんだからとはいえ、流石に早すぎやしないかと思うんだが。
「……、疲れてたんだな、戦場の女神様は」
よしよし、と髪を撫でる。
膝が暖かい、リラの体温を感じる。ずっと昔には、姉えにしてもらっていた時は、姉えもこんな風に感じていたんだろうか?
「済まない、もう一杯何かくれないか?」
バーテンダーに頼んで、他のお酒を出してもらう。ガバガバお酒を飲みまくっていたリラとは違って私は飲み足りないし、それに何も頼まずにここにいるのは迷惑だ。リラはしばらく寝かせておいてやりたいし、ここにしばらくいるのは確定事項となったわけだからな。
「お二人は死神殿と女神殿かい?」
少し年を食った感じの、魔女のバーテンダーが、そう聞いてくる。金髪でスタイル抜群な、顔立ちの良い美女。
「よく分かったな」
「いつもは他の店行ってるだろうに、今日はどうしてこっちに来たんだい?」
ハハハ、と笑う。
「言ってくれるな。他の店を潰して回ったのはそちらだろうに」
「なんのことやら分からないねぇ。ただ私は、他の店に行ってお酒を飲んだだけだよ」
ちなみに、他の店の常連を奪うためにわざわざお酒を奢り、酔っぱっぱにしたついでに自分の店を紹介したらしい。スタイル抜群のこの美魔女さんにつられて、いつのまにやらこちらの常連になっていたのだとか。
いやあ、なんというか、恐ろしいな、うん。
「それで、そちらさんはどうして私に?」
「そりゃ、カウンター席であんだけいちゃこらされたら、ちょっかいの一つもかけたくなるでしょう?」
「なるほどな」
すぅすぅ、と寝息を立てて爆睡しているリラ。一瞬、膝に何か冷たいものを感じて見てみると、涙とよだれだった。
「おいおい……」
自分のハンカチを当てて、涙とよだれを拭ってやる。
「アリサ……」
寝言で、必死な声で、リラが言う。
「安心しろ、ここにいるからな」
頭を撫でてやると、安心したのかまたすやぁ、と深い眠りに落ちていく。
「……、完全に私のこと無視? 悲しいんだけど」
「悪いな、私はリラ最優先なんでな」
「死神と女神の相思相愛なんて、なんだか見ていて微笑ましいねぇ。ただ、周りから良い目では見られていないだろうけど、大丈夫?」
はっ、と笑う。
「知ったことか。勝手に言わせておけばいいだろう?」
「冷たいもんだねぇ。まあ、だから死神なんて呼ばれてるんだろうけどさ」
「それはそうかもな」
グラスを傾けて、お酒を喉に流し込む。
さして飲める体質でもないから、これを飲んでおしまいだな。
「それで、要件は何か聞いてないんだが?」
「言ったでしょう? 貴女にちょっかいを掛けたかった」
「……、なるほど」
一応、気をつけておいたほうが良いかもしれないな。まあ、そうそう気取られはしないだろうが。
「ところで最近、年齢制限に引っ掛かるような幼女が出入りしてたりしないか?」
「追い返すのに苦労しているねぇ。それがどうかしたの?」
「いや、さっさと追い返したいなら、こいつを渡してやろうと思ってな」
黄色い紙を、バーテンダーに渡す。
「これはありがたい、あとできっちり使わせてもらうよ」
「それはどうも。ところでもうしばらくここに居たいんだが構わないか?」
「今日は別に構わないよ」
なら、暫くの間、リラのためにもここで休ませてもらうか。こんな無防備な姿をさらしているわけだし。
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