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仕事仲間
緊急事態?
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「......そっか~。そんな事があったんですね~」
天王は頬に手を当てながらそう言った。しかしその台詞には焦った様子は全く感じられない。
いきなり電話で呼び出され、『緊急事態です~。すぐに来てください~』と言われた時には最悪の事態も予想していた。
しかしいざ行ってみれば、いつもと変わらない近況報告だけ。違うのは島崎がいないことぐらいだ。
私は警察が屋敷に来たことや、來唯が勢い余って少女を殺してしまったことを報告した。報告を済ませ、早く帰ろうと立ち上がったが天王に止められる。
「ちょっと待ってくださいよ。このままじゃ警察に捕まっちゃうかもですよ?」
「......なんだと?」
私はにこにこ笑っている天王の顔を見つめた。
捕まる? この私が?
なぜ天王がその結論に達したのか解らなかった。確かに警察が屋敷に来たが、特に疑われたわけでもない。捕まる要素が皆無だった。しかし天王は頭がきれる奴だ。何かに気がついている可能性もある。私は椅子に座り直し話を聞くことにした。
天王はすぐに話を始めた。
「警察の方がお家に来たのは夜だったんですよね?」
「そうだが、それがなんだ?」
「それ、おかしくないですか?」
「............」
私は警察が来た時のことを思い出していた。確かにそう言われれば不自然だ。
あのとき警察は『夜遅くすみません』と挨拶した。本当にただの聴き込みであれば夜遅くに訪ねる理由も必要もない。
そう、私はあの人間たちをバイトさせるという口実で屋敷に呼んだのだ。どこからかその話が漏れたとしても不思議ではない。だが、疑われても別に証拠があるわけではない。バイトを募集したが生徒たちは来なかった、面識がなくても不自然ではない。問題ないはずだ。
私はそう考え安堵した。が、それだけではなかった。天王の話には続きがあったのだ。
「つまり、程度はどうあれ警察は君を怪しんでいたはずです。ならなぜ一人だけで来たのでしょうか?」
「なんだ? 何が言いたいんだ?」
「君の家はお世辞にも交通の便が良いとはいえません。警察官も車で来たはずです。ならなぜ一人しか現れなかったのでしょうか?」
「......一人で来たからだろう?」
「そうですかね~? さっきも言いましたが、夜遅くに訪ねた理由は警察は君を疑っているから。そんな人物を訪ねる時一人で現れますかねぇ? だいたい刑事ドラマなんかでも聴き込みは二人でしてるじゃないですか~」
天王はふざけた口調で続ける。
「もし私が刑事だったら、アクシデントに対応しやすくするために一人は隠れさせておきますね。もちろん他にも理由があります。庭に砂利が撒いてあるせいで足音は響きますよね? 一人が足音をたて立ち去り犯人を安心させ、もう一人がドアに聞き耳を立てる。警察が君を誘拐犯だと疑っていたなら、そうするはず。警察はこう考えたはずです。閉じ込められた高校生がチャイムに気がつき、何らかのアクションを起こすかもしれない、音を立てたりとか、叫んだりとか。まあ勝手な妄想なんですけどね。けどありそうでしょう?」
「可能性は......ないとはいえないな」
もし天王が言っていることが事実だと仮定すれば、電話の内容が聞かれた可能性も出てくる。これは少しまずいな。
そう考えていると、天王がいきなり笑いだした。
「あはははは! そんな真剣な顔しなくても大丈夫です。ちゃんと対策は考えていますよ。可能性が少しでもあるなら排除していきましょう」
天王はそう言うと部屋を出た。直ぐに大きな段ボールを荷台に乗せ戻ってくる。
「これを使えばいいんです」
そう言いながら段ボールを開けた。中を覗くと縄で縛られた島崎が納められていた。
「幼女誘拐の犯人は、高校生も誘拐していました。ある日とうとう気が狂いガソリンを家に撒き火をつけました。家は全焼。焼け跡からは子供たちの骨が大量に発見されました! もうこの際要らないものは全部燃やしましょうか。 そうと決まれば島崎くんを使って作品を作りましょう!」
天王は頬に手を当てながらそう言った。しかしその台詞には焦った様子は全く感じられない。
いきなり電話で呼び出され、『緊急事態です~。すぐに来てください~』と言われた時には最悪の事態も予想していた。
しかしいざ行ってみれば、いつもと変わらない近況報告だけ。違うのは島崎がいないことぐらいだ。
私は警察が屋敷に来たことや、來唯が勢い余って少女を殺してしまったことを報告した。報告を済ませ、早く帰ろうと立ち上がったが天王に止められる。
「ちょっと待ってくださいよ。このままじゃ警察に捕まっちゃうかもですよ?」
「......なんだと?」
私はにこにこ笑っている天王の顔を見つめた。
捕まる? この私が?
なぜ天王がその結論に達したのか解らなかった。確かに警察が屋敷に来たが、特に疑われたわけでもない。捕まる要素が皆無だった。しかし天王は頭がきれる奴だ。何かに気がついている可能性もある。私は椅子に座り直し話を聞くことにした。
天王はすぐに話を始めた。
「警察の方がお家に来たのは夜だったんですよね?」
「そうだが、それがなんだ?」
「それ、おかしくないですか?」
「............」
私は警察が来た時のことを思い出していた。確かにそう言われれば不自然だ。
あのとき警察は『夜遅くすみません』と挨拶した。本当にただの聴き込みであれば夜遅くに訪ねる理由も必要もない。
そう、私はあの人間たちをバイトさせるという口実で屋敷に呼んだのだ。どこからかその話が漏れたとしても不思議ではない。だが、疑われても別に証拠があるわけではない。バイトを募集したが生徒たちは来なかった、面識がなくても不自然ではない。問題ないはずだ。
私はそう考え安堵した。が、それだけではなかった。天王の話には続きがあったのだ。
「つまり、程度はどうあれ警察は君を怪しんでいたはずです。ならなぜ一人だけで来たのでしょうか?」
「なんだ? 何が言いたいんだ?」
「君の家はお世辞にも交通の便が良いとはいえません。警察官も車で来たはずです。ならなぜ一人しか現れなかったのでしょうか?」
「......一人で来たからだろう?」
「そうですかね~? さっきも言いましたが、夜遅くに訪ねた理由は警察は君を疑っているから。そんな人物を訪ねる時一人で現れますかねぇ? だいたい刑事ドラマなんかでも聴き込みは二人でしてるじゃないですか~」
天王はふざけた口調で続ける。
「もし私が刑事だったら、アクシデントに対応しやすくするために一人は隠れさせておきますね。もちろん他にも理由があります。庭に砂利が撒いてあるせいで足音は響きますよね? 一人が足音をたて立ち去り犯人を安心させ、もう一人がドアに聞き耳を立てる。警察が君を誘拐犯だと疑っていたなら、そうするはず。警察はこう考えたはずです。閉じ込められた高校生がチャイムに気がつき、何らかのアクションを起こすかもしれない、音を立てたりとか、叫んだりとか。まあ勝手な妄想なんですけどね。けどありそうでしょう?」
「可能性は......ないとはいえないな」
もし天王が言っていることが事実だと仮定すれば、電話の内容が聞かれた可能性も出てくる。これは少しまずいな。
そう考えていると、天王がいきなり笑いだした。
「あはははは! そんな真剣な顔しなくても大丈夫です。ちゃんと対策は考えていますよ。可能性が少しでもあるなら排除していきましょう」
天王はそう言うと部屋を出た。直ぐに大きな段ボールを荷台に乗せ戻ってくる。
「これを使えばいいんです」
そう言いながら段ボールを開けた。中を覗くと縄で縛られた島崎が納められていた。
「幼女誘拐の犯人は、高校生も誘拐していました。ある日とうとう気が狂いガソリンを家に撒き火をつけました。家は全焼。焼け跡からは子供たちの骨が大量に発見されました! もうこの際要らないものは全部燃やしましょうか。 そうと決まれば島崎くんを使って作品を作りましょう!」
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