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仕事仲間
飯時
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「ご馳走さまでした」
「ごちそうさま! でした!」
二人の娘たちは礼儀正しく食後の挨拶をすませる。しかし誰も食卓から離れようとはしない。我が家では『普通』の食事を終えた後に『デザート』を準備する習慣があるからだ。
「ぱぱ! でざーとは!」
來唯がスプーンを握りしめ、尋ねてくる。
「今日は島崎から貰ったお土産を食べよう。どちらか好きな方を持ってきなさい」
「うん! わかった!」
來唯は椅子から飛び降り、少女たちのいる台所へと走っていった。が、すぐに戻ってくる。
「おねえちゃんもいっしょにえらぼうよ!」
「そうね。美味しそうな方を持ってましょう」
娘たちは仲良く手を繋ぎ台所へと向かっていった。私はその間に準備を始める。真ん中をくりぬいているテーブル、ノコギリ、ドリル、ストローを用意した。
「ぱぱ! もってきた!」
來唯が少女一つ持ってきた。しかしいまだに完全な無。表情は死んでいた。
いや、正確にいうなら『死んでいる』わけではなく、『隠れている』だけだ。島崎が、誘拐した少女たちに何をしているのか大体の想像はつく。
それはこの少女にとって精神が壊れるほどの苦痛と屈辱だったのだろう。
しかし。
この少女は腕が切り取られているわけでも拷問をうけていたわけでもない。だだ玩具にされていただけだ。
この少女はすぐに自分が間違っていたことに気がつくはずだ。そしてこう考える。
『私は贅沢者だったのだ。島崎の所へ帰りたい』
と。その瞬間少女は感情を取り戻し、泣き叫ぶに違いない。
私はテーブルの中心に少女を固定した。頭だけが見えるように調整し、さらに身動きがとれないように縛り上げた。その間も少女は悲鳴一つ上げず、されるがままだった。
「父さん、ポン酢と醤油を持って来ました」
五望は冷蔵庫から調味料を持ってきた。これで準備は整った。後は少女を堪能するだけだ。
まずは大脳の外側、大脳皮質から食べる為、まず少女の髪を剃っていく。
短いながらも艶やかだった髪は全て床に落ち、頭皮が丸見えになる。これから死ぬ少女にとっては一番適切な髪型ではないだろうか。
そんなことを考えながらドリルを前頭骨に当て、スイッチを入れた。一瞬の間が空き、鋭い刃は回転しめり込んでいく。
「きゃああああああ! がああああああ! ああああああ!」
さっきまで精神崩壊を気取っていた少女は悲鳴を上げる。構わずに三つの穴を開け、用意していたストローを突っ込んだ。頭から奇妙な角が三本突き立つ。
「いただきます!」
我慢できなくなったのか、來唯がストローに口をつけ、思いっきり吸い込んだ。少女の脳は吸い上げられ、食べられた。
「んー! おいしい!」
來唯は頬を押さえながら満面の笑みを浮かべた。
「おえええええ!」
少女はえずき、吐いてしまう。しかしそれも想定内だ。吐瀉物はあらかじめ用意していた器に全て収まった。
理由はよく分からないが、人脳を食べる時は必ずといって良いほど食材が吐いてしまうのだ。
ストローで脳を刺激し、胃の内容物を粗方出させると、私もストローを吸った。
その瞬間、少し癖のある濃厚な甘味が口に広がった。
人脳でしか味わうことのできない独特な旨味、癖になるこの臭み。分類的には珍味になるのだろうが、恐ろしく美味だった。
私たち三人は夢中でストローを吸っていた。
「......ああ.....ああ、ああああっっあああ......あ? ああ?」
少女は脳みそを吸われる度に知能が下がり、壊れていく。吸えるだけ吸ったところで次は切り開くことにした。
ノコギリを頭骸骨に当て、ひいていく。
「ああああーああー」
少女は涎をたらしながら呻いていた。完全に骨を分離させ、私は前頭骨を開けようとした。が、止められる。
「ちょっとまって! くゆいがあけるの!」
「そうなのか? まあいいが......」
「うん! じゃあいくよ! おーぷん!」
來唯はそう叫びながら前頭骨を開いた。少女の脳は多少崩れてはいたものの、大脳以外は無傷だった。
私たちはそれぞれ思い思いの箇所をスプーンで掬い、口一杯に頬張った。
脳を食べ尽くし、私は最後の締めを作ることにした。少女の脳があった場所に、先日漬けた女酒を流し込む。本来ならばまだ飲み時ではないのだが、しようがない。
半分ほど女酒を流し込んだあと、息絶えている少女の血管を傷つけ、抜いた血を頭蓋骨へと流し込む。割合は一対一。マドラーでよくかき混ぜたあと、冷えたグラスに注ぎ最後に砂糖をひとつまみ入れたら完成だ。
グラスを口につけ、一気に流し込む。最初に初々しい血の香りが鼻腔を刺激し、すぐ後に濃厚な脳の香りが口に広がる。最後に女酒のアルコールが喉を刺激する。
「くゆいもそれほしい!」
來唯がグラスを指差してそう言った。
「駄目よ。未成年はお酒を飲んだらいけないって法律で決まっているのよ」
五望が優しく諭すと、納得したのか渋々頷いていた。
私はそんな娘たちのやり取りを見ながら酒を飲んでいた。ほろ酔いになり、ちょうど酒もなくなったところで天王に電話をかける。
すぐに天王は電話に出た。
『はいはい~どちらさまですか~』
「私だ。言われた通りに眼球は傷をつけないように殺した」
『ああ~ありがと~。それじゃすぐにそっちに向かうね』
天王はそう言うと電話を切った。私は切られた電話をしばらく見つめたあと、受話器を置いた。
「ごちそうさま! でした!」
二人の娘たちは礼儀正しく食後の挨拶をすませる。しかし誰も食卓から離れようとはしない。我が家では『普通』の食事を終えた後に『デザート』を準備する習慣があるからだ。
「ぱぱ! でざーとは!」
來唯がスプーンを握りしめ、尋ねてくる。
「今日は島崎から貰ったお土産を食べよう。どちらか好きな方を持ってきなさい」
「うん! わかった!」
來唯は椅子から飛び降り、少女たちのいる台所へと走っていった。が、すぐに戻ってくる。
「おねえちゃんもいっしょにえらぼうよ!」
「そうね。美味しそうな方を持ってましょう」
娘たちは仲良く手を繋ぎ台所へと向かっていった。私はその間に準備を始める。真ん中をくりぬいているテーブル、ノコギリ、ドリル、ストローを用意した。
「ぱぱ! もってきた!」
來唯が少女一つ持ってきた。しかしいまだに完全な無。表情は死んでいた。
いや、正確にいうなら『死んでいる』わけではなく、『隠れている』だけだ。島崎が、誘拐した少女たちに何をしているのか大体の想像はつく。
それはこの少女にとって精神が壊れるほどの苦痛と屈辱だったのだろう。
しかし。
この少女は腕が切り取られているわけでも拷問をうけていたわけでもない。だだ玩具にされていただけだ。
この少女はすぐに自分が間違っていたことに気がつくはずだ。そしてこう考える。
『私は贅沢者だったのだ。島崎の所へ帰りたい』
と。その瞬間少女は感情を取り戻し、泣き叫ぶに違いない。
私はテーブルの中心に少女を固定した。頭だけが見えるように調整し、さらに身動きがとれないように縛り上げた。その間も少女は悲鳴一つ上げず、されるがままだった。
「父さん、ポン酢と醤油を持って来ました」
五望は冷蔵庫から調味料を持ってきた。これで準備は整った。後は少女を堪能するだけだ。
まずは大脳の外側、大脳皮質から食べる為、まず少女の髪を剃っていく。
短いながらも艶やかだった髪は全て床に落ち、頭皮が丸見えになる。これから死ぬ少女にとっては一番適切な髪型ではないだろうか。
そんなことを考えながらドリルを前頭骨に当て、スイッチを入れた。一瞬の間が空き、鋭い刃は回転しめり込んでいく。
「きゃああああああ! がああああああ! ああああああ!」
さっきまで精神崩壊を気取っていた少女は悲鳴を上げる。構わずに三つの穴を開け、用意していたストローを突っ込んだ。頭から奇妙な角が三本突き立つ。
「いただきます!」
我慢できなくなったのか、來唯がストローに口をつけ、思いっきり吸い込んだ。少女の脳は吸い上げられ、食べられた。
「んー! おいしい!」
來唯は頬を押さえながら満面の笑みを浮かべた。
「おえええええ!」
少女はえずき、吐いてしまう。しかしそれも想定内だ。吐瀉物はあらかじめ用意していた器に全て収まった。
理由はよく分からないが、人脳を食べる時は必ずといって良いほど食材が吐いてしまうのだ。
ストローで脳を刺激し、胃の内容物を粗方出させると、私もストローを吸った。
その瞬間、少し癖のある濃厚な甘味が口に広がった。
人脳でしか味わうことのできない独特な旨味、癖になるこの臭み。分類的には珍味になるのだろうが、恐ろしく美味だった。
私たち三人は夢中でストローを吸っていた。
「......ああ.....ああ、ああああっっあああ......あ? ああ?」
少女は脳みそを吸われる度に知能が下がり、壊れていく。吸えるだけ吸ったところで次は切り開くことにした。
ノコギリを頭骸骨に当て、ひいていく。
「ああああーああー」
少女は涎をたらしながら呻いていた。完全に骨を分離させ、私は前頭骨を開けようとした。が、止められる。
「ちょっとまって! くゆいがあけるの!」
「そうなのか? まあいいが......」
「うん! じゃあいくよ! おーぷん!」
來唯はそう叫びながら前頭骨を開いた。少女の脳は多少崩れてはいたものの、大脳以外は無傷だった。
私たちはそれぞれ思い思いの箇所をスプーンで掬い、口一杯に頬張った。
脳を食べ尽くし、私は最後の締めを作ることにした。少女の脳があった場所に、先日漬けた女酒を流し込む。本来ならばまだ飲み時ではないのだが、しようがない。
半分ほど女酒を流し込んだあと、息絶えている少女の血管を傷つけ、抜いた血を頭蓋骨へと流し込む。割合は一対一。マドラーでよくかき混ぜたあと、冷えたグラスに注ぎ最後に砂糖をひとつまみ入れたら完成だ。
グラスを口につけ、一気に流し込む。最初に初々しい血の香りが鼻腔を刺激し、すぐ後に濃厚な脳の香りが口に広がる。最後に女酒のアルコールが喉を刺激する。
「くゆいもそれほしい!」
來唯がグラスを指差してそう言った。
「駄目よ。未成年はお酒を飲んだらいけないって法律で決まっているのよ」
五望が優しく諭すと、納得したのか渋々頷いていた。
私はそんな娘たちのやり取りを見ながら酒を飲んでいた。ほろ酔いになり、ちょうど酒もなくなったところで天王に電話をかける。
すぐに天王は電話に出た。
『はいはい~どちらさまですか~』
「私だ。言われた通りに眼球は傷をつけないように殺した」
『ああ~ありがと~。それじゃすぐにそっちに向かうね』
天王はそう言うと電話を切った。私は切られた電話をしばらく見つめたあと、受話器を置いた。
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