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三人目
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深雪ちゃんの指を全て元に戻し、改めて部屋の掃除をお願いする。
「散らばった肉片を片付けてください。そうそう、隆一くんの頭は蹴り跳ばしてしまったので探しだしてくださいね」
そう丁寧に説明したが、深雪ちゃんは震えるばかりで仕事に取りかかろうとはしなかった。
最近の学生は掃除もまともに出来ないのか、と私は呆れいていた。いや、そもそも話すら聞いていない様子だ。これは少しお仕置きが必要だろう。そう判断した。
私は深雪ちゃんの髪を掴み、力任せに床へひきずり倒す。その手には抜けた髪が大量に残った。
「............うぅ」
顔を打ったのだろうか? 額から一筋の血が流れ床を汚した。私は手を伸ばし、その血を優しく拭った。
「まだ死にたくはないでしょう? なら仕事をしてください。深雪さんはバイトをするためにここに来たんでしょう?」
「...............」
「なぜ返事しないのですか?」
私は深雪ちゃんの左手を思いっきり踏みつけた。肉が動き、骨折れた感触が足を伝わってくる。一瞬遅れて絶叫が部屋に響き渡った。
「ぎゃああああああ!......ああ......あ.......」
「ちゃんと返事できるじゃないですか。その調子でお願いします」
私は深雪ちゃんの頭を撫でたあと、床へと座った。深雪ちゃんは泣きながらよろよろと立ち上がり、隆一くんだったものの所へと歩いていった。
速度は遅いものの、深雪ちゃんは着実にゴミを掃除していった。もっとも、ゴミを片付ける度に嘔吐してしまうため、散らかしているのか片付けているのか分からない。
そしてついに、部屋に散らばっていた肉片は全て袋へと入れられた。
「......終わり......ました......」
深雪ちゃんの顔は雪のように真っ白になっていた。無理もない。休まず掃除をしていたのだ。私はきちんと仕事をこなしてくれた礼に、ご褒美をあげることにした。
「深雪ちゃん。掃除お疲れさま。ご褒美にそれ食べていいですよ」
「............え...え?」
深雪ちゃんは、ぱんぱんに腫らした指を擦りながら首をかしげる。
「ですから、集めた隆一くんを食べていいですよ。お腹すいてるでしょう?」
「.........な......え?」
深雪ちゃんはぽかんと口を開けたまま座り込んだ。
しようがないな。私は深雪ちゃんの横にある袋から隆一くんを取り出した。いや、葵かもしれない。
「はい。口を開けて」
深雪ちゃんの口に肉片を当てた瞬間、感電したように仰け反った。
「ごめんなさい! ごめんなさい! やめてください! ごめんなさい!」
深雪ちゃんはいきなり謝り始めた。意味の分からない行動に困惑しながらも肉片を押し込む。が、しっかりと口を閉じ、開こうとはしない。
「深雪ちゃん。今すぐ死ぬか、これ食べるか選んで」
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい.........あはは............」
「謝らなくていいから早く食べろ。殺すぞ」
「ころさないでください! ころさないでください! ころさないでください!」
「ならこれを食べて『隆一くんおいしい! おかわり!』と言って?」
私がそう言うと、深雪ちゃんはひったくるように肉片を掴み、口へと放り込んだ。
「......うっ......りゅういちくんおいしい......おかわり......」
深雪ちゃんはひきつった笑顔でそう言った。口には隆一くんのかすがついていた。
「そうか。たくさんあるからお腹いっぱい食べるといい」
私はそう言うとゴミ袋をあさり、隆一くんの頭部を取り出すと深雪ちゃんへと投げ渡した。來唯が蹴飛ばしたせいで少し歪んではいたが、損傷は思ったほどではなかった。
頭部は弧を描き、深雪ちゃんの目の前に落ちる。
「散らばった肉片を片付けてください。そうそう、隆一くんの頭は蹴り跳ばしてしまったので探しだしてくださいね」
そう丁寧に説明したが、深雪ちゃんは震えるばかりで仕事に取りかかろうとはしなかった。
最近の学生は掃除もまともに出来ないのか、と私は呆れいていた。いや、そもそも話すら聞いていない様子だ。これは少しお仕置きが必要だろう。そう判断した。
私は深雪ちゃんの髪を掴み、力任せに床へひきずり倒す。その手には抜けた髪が大量に残った。
「............うぅ」
顔を打ったのだろうか? 額から一筋の血が流れ床を汚した。私は手を伸ばし、その血を優しく拭った。
「まだ死にたくはないでしょう? なら仕事をしてください。深雪さんはバイトをするためにここに来たんでしょう?」
「...............」
「なぜ返事しないのですか?」
私は深雪ちゃんの左手を思いっきり踏みつけた。肉が動き、骨折れた感触が足を伝わってくる。一瞬遅れて絶叫が部屋に響き渡った。
「ぎゃああああああ!......ああ......あ.......」
「ちゃんと返事できるじゃないですか。その調子でお願いします」
私は深雪ちゃんの頭を撫でたあと、床へと座った。深雪ちゃんは泣きながらよろよろと立ち上がり、隆一くんだったものの所へと歩いていった。
速度は遅いものの、深雪ちゃんは着実にゴミを掃除していった。もっとも、ゴミを片付ける度に嘔吐してしまうため、散らかしているのか片付けているのか分からない。
そしてついに、部屋に散らばっていた肉片は全て袋へと入れられた。
「......終わり......ました......」
深雪ちゃんの顔は雪のように真っ白になっていた。無理もない。休まず掃除をしていたのだ。私はきちんと仕事をこなしてくれた礼に、ご褒美をあげることにした。
「深雪ちゃん。掃除お疲れさま。ご褒美にそれ食べていいですよ」
「............え...え?」
深雪ちゃんは、ぱんぱんに腫らした指を擦りながら首をかしげる。
「ですから、集めた隆一くんを食べていいですよ。お腹すいてるでしょう?」
「.........な......え?」
深雪ちゃんはぽかんと口を開けたまま座り込んだ。
しようがないな。私は深雪ちゃんの横にある袋から隆一くんを取り出した。いや、葵かもしれない。
「はい。口を開けて」
深雪ちゃんの口に肉片を当てた瞬間、感電したように仰け反った。
「ごめんなさい! ごめんなさい! やめてください! ごめんなさい!」
深雪ちゃんはいきなり謝り始めた。意味の分からない行動に困惑しながらも肉片を押し込む。が、しっかりと口を閉じ、開こうとはしない。
「深雪ちゃん。今すぐ死ぬか、これ食べるか選んで」
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい.........あはは............」
「謝らなくていいから早く食べろ。殺すぞ」
「ころさないでください! ころさないでください! ころさないでください!」
「ならこれを食べて『隆一くんおいしい! おかわり!』と言って?」
私がそう言うと、深雪ちゃんはひったくるように肉片を掴み、口へと放り込んだ。
「......うっ......りゅういちくんおいしい......おかわり......」
深雪ちゃんはひきつった笑顔でそう言った。口には隆一くんのかすがついていた。
「そうか。たくさんあるからお腹いっぱい食べるといい」
私はそう言うとゴミ袋をあさり、隆一くんの頭部を取り出すと深雪ちゃんへと投げ渡した。來唯が蹴飛ばしたせいで少し歪んではいたが、損傷は思ったほどではなかった。
頭部は弧を描き、深雪ちゃんの目の前に落ちる。
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