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娘たちの宴
ばらばら!
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「よし! 達磨を作りましょうか!」
「だるま? なにそれ?」
「達磨を知らないの? 赤くて手足が無いおじさんよ。玄関に飾ってあるでしょう?」
「......う~ん...わかんないや!」
「難しく考えなくていいわよ。手足を切り落とせばいいだけだから。はい、これ使ってね」
「うん! だるまつくる!」
來唯は鋸を受けとると、右腕に刃をあてがった。隆一くんの瞳は絶望の色に染まっていた。無理もないだろう。バイトをしにここに来たはずが、気がついたら友達を壊される。さらに縛られ、斬られ、今から自分も殺されようとしている。
貴重な経験が出来たと私たちに感謝していることだろう。まあ、その経験を今後に活かせはしないのだが。
來唯の握りしめている鋸がゆっくりと動いていく。その度に血が飛び散り、娘たちの体は達磨のように真っ赤に染まった。と、鋸の動きが止まった。
「......もうつかれた! ぜんぜんきれない!」
來唯はそう言うと座り込んでしまった。ふて腐れた表情で隆一くんに突き立ったままの鋸を睨み付けていた。
「來唯は使いかたが下手なのよ。この鋸は引き切り。がむしゃらに動かすのではなくて、引くときだけに力を入れればいいの」
五望はそう言うと、鋸をリズミカルに動かし始めた。力加減も絶妙、すぐに隆一くんから腕が分離した。すかさず鋸を置き、焼けた鉄棒を断面に押し付ける。隆一くんは暴れるが、縛られているためほとんど動けない。その姿はまるでサナギのよう。いくら逃げようとしてもほとんど動けず、なされるがままだった。部屋に肉の焼ける香ばしい匂いが立ちこめ、食欲をそそる。
來唯が切断された腕を見つめながらぼそっと呟いた。
「......おなかすいたなぁ」
「これは食べちゃだめよ!」
「......わかってるよ.....あ! あれなに!?」
「え?」
來唯がいきなり隆一くんを指差した。五望は思わず振り向いた。その瞬間、切断された右腕は奪われる。
「ちょっと! 返しなさい!」
「いやだ! おねえちゃんはひだりうできればいいじゃん! けち!」
「いい加減言うこと聞かないと殺すわよ!」
「ころされてもかえしませんよ~」
來唯はそう言うと、腕に噛みついた。そのまま肉を引きちぎり飲み込む。
「おいしい!」
ガツガツと腕を食べていく來唯に、五望が切れた。
「.......返せって言ってんだろうが! もう代わりにお前殺す!」
五望は鋸を思いっきり投げた。正確に來唯の眉間向かって飛んでいく。
「わっ!」
しゃがんだ來唯の頭上ぎりぎりを刃が掠めた。
娘たちはいつもは仲が良いのだが、たまに喧嘩をしてしまう。まったくしょうがない娘たちだ。私はため息をついた。
來唯は頭を押さえながら立ち上がった。
「おねえちゃんのばか! あたったらあぶないじゃん!」
「うるさい! 殺すぞ!」
五望は部屋に置いてあったチェーンソーのエンジンをかける。騒音をたてながら刃が回転し始めた。
「それはずるい!」
來唯は五望を指差しながら叫んだ。
「死ねよ」
五望はそう呟くと來唯に走りより、チェーンソーを振り下ろした。回転する刃が肉を裂き、骨を撒き散らし、 脳を破壊した。
「いい加減にしろ!」
私は五望と來唯の頭に拳骨を振り下ろす。
「痛い!」
「いたい!」
二人は頭を押さえうずくまった。素早くチャーンソーを停止させる。
「五望! もう少しで來唯が死ぬところだったぞ! お前は怒りに任せて人間を切り殺していいと思っているのか!」
「......ごめんなさい」
五望はうずくまったままそう言った。
「......ぱぱ、ありがと。あとごめんなさい」
來唯はよろよろと立ち上がったあと、涙目でそう言った。
「......來唯も好き勝手するのはやめなさい」
「......わかった」
「なら、五望に謝りなさい」
來唯はうつむいたまま五望の前に歩いていった。
「......おねえちゃん、ごめんなさい」
「......私も少しやり過ぎたわ」
「......ぶんかいのつづきしようよ」
「...そうね! 達磨を作りましょうか!」
「うん! つくる!」
二人は仲直りしたようだ。手を繋ぎながら隆一くんの元へと歩いていった。
私は大きく息を吐き出した。床には、來唯を守るために投げ飛ばした葵が飛び散っていた。
「だるま? なにそれ?」
「達磨を知らないの? 赤くて手足が無いおじさんよ。玄関に飾ってあるでしょう?」
「......う~ん...わかんないや!」
「難しく考えなくていいわよ。手足を切り落とせばいいだけだから。はい、これ使ってね」
「うん! だるまつくる!」
來唯は鋸を受けとると、右腕に刃をあてがった。隆一くんの瞳は絶望の色に染まっていた。無理もないだろう。バイトをしにここに来たはずが、気がついたら友達を壊される。さらに縛られ、斬られ、今から自分も殺されようとしている。
貴重な経験が出来たと私たちに感謝していることだろう。まあ、その経験を今後に活かせはしないのだが。
來唯の握りしめている鋸がゆっくりと動いていく。その度に血が飛び散り、娘たちの体は達磨のように真っ赤に染まった。と、鋸の動きが止まった。
「......もうつかれた! ぜんぜんきれない!」
來唯はそう言うと座り込んでしまった。ふて腐れた表情で隆一くんに突き立ったままの鋸を睨み付けていた。
「來唯は使いかたが下手なのよ。この鋸は引き切り。がむしゃらに動かすのではなくて、引くときだけに力を入れればいいの」
五望はそう言うと、鋸をリズミカルに動かし始めた。力加減も絶妙、すぐに隆一くんから腕が分離した。すかさず鋸を置き、焼けた鉄棒を断面に押し付ける。隆一くんは暴れるが、縛られているためほとんど動けない。その姿はまるでサナギのよう。いくら逃げようとしてもほとんど動けず、なされるがままだった。部屋に肉の焼ける香ばしい匂いが立ちこめ、食欲をそそる。
來唯が切断された腕を見つめながらぼそっと呟いた。
「......おなかすいたなぁ」
「これは食べちゃだめよ!」
「......わかってるよ.....あ! あれなに!?」
「え?」
來唯がいきなり隆一くんを指差した。五望は思わず振り向いた。その瞬間、切断された右腕は奪われる。
「ちょっと! 返しなさい!」
「いやだ! おねえちゃんはひだりうできればいいじゃん! けち!」
「いい加減言うこと聞かないと殺すわよ!」
「ころされてもかえしませんよ~」
來唯はそう言うと、腕に噛みついた。そのまま肉を引きちぎり飲み込む。
「おいしい!」
ガツガツと腕を食べていく來唯に、五望が切れた。
「.......返せって言ってんだろうが! もう代わりにお前殺す!」
五望は鋸を思いっきり投げた。正確に來唯の眉間向かって飛んでいく。
「わっ!」
しゃがんだ來唯の頭上ぎりぎりを刃が掠めた。
娘たちはいつもは仲が良いのだが、たまに喧嘩をしてしまう。まったくしょうがない娘たちだ。私はため息をついた。
來唯は頭を押さえながら立ち上がった。
「おねえちゃんのばか! あたったらあぶないじゃん!」
「うるさい! 殺すぞ!」
五望は部屋に置いてあったチェーンソーのエンジンをかける。騒音をたてながら刃が回転し始めた。
「それはずるい!」
來唯は五望を指差しながら叫んだ。
「死ねよ」
五望はそう呟くと來唯に走りより、チェーンソーを振り下ろした。回転する刃が肉を裂き、骨を撒き散らし、 脳を破壊した。
「いい加減にしろ!」
私は五望と來唯の頭に拳骨を振り下ろす。
「痛い!」
「いたい!」
二人は頭を押さえうずくまった。素早くチャーンソーを停止させる。
「五望! もう少しで來唯が死ぬところだったぞ! お前は怒りに任せて人間を切り殺していいと思っているのか!」
「......ごめんなさい」
五望はうずくまったままそう言った。
「......ぱぱ、ありがと。あとごめんなさい」
來唯はよろよろと立ち上がったあと、涙目でそう言った。
「......來唯も好き勝手するのはやめなさい」
「......わかった」
「なら、五望に謝りなさい」
來唯はうつむいたまま五望の前に歩いていった。
「......おねえちゃん、ごめんなさい」
「......私も少しやり過ぎたわ」
「......ぶんかいのつづきしようよ」
「...そうね! 達磨を作りましょうか!」
「うん! つくる!」
二人は仲直りしたようだ。手を繋ぎながら隆一くんの元へと歩いていった。
私は大きく息を吐き出した。床には、來唯を守るために投げ飛ばした葵が飛び散っていた。
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