上 下
13 / 32
娘たちの宴

ぶんかい!

しおりを挟む
「そうそう、関節の間に刃を入れるのよ」

「こんなかんじ?」

「上手よ。そのまま包丁を引いてみて」

「うわぁすごい! もうゆびとれた!」

「その調子で他の指も切り落としてみて」

「うん! がんばる!」

 娘たち二人は隆一くんの分解作業に熱中していた。來唯はいつも好き勝手に壊してばかりだったが、今回は五望に教えてもらいながら解体していた。初めは上手く関節を探せずイライラしていたが、慣れてきたようだった。

 指の関節は見つけやすい上、本数も二十本ある。練習にはうってつけだろう。隆一くんも初めは気持ち良さそうに絶叫していたが、声帯を釘で打ち抜いたあと口を縫い付けられてからは一言も話さない。今の隆一くんは話すことも、叫び声を上げることもできなかった。代わりに涙を流し、暴れ、体全体を使って悦びと激痛を表現していた。

 娘たちはじっくりゆっくり分解していく。

「おねえちゃん! ぜんぶとった!」

 來唯は切り取ったばかりのひとさし指をクチャクチャと噛みながら言った。

「食べちゃ駄目よ! 分解したパーツは全部並べるの!」

 五望が慌てて來唯の口からひとさし指を抜いた。肉が唾と共に糸を引いた。

「なんで! いっぱいあるのに!」

 來唯は取られた指を素早く奪い返し、綺麗に並べられている指を指差した。五望はため息をつき、首を振った。

「あのね、指は二十本全部揃っているから意味があるの。一つでも欠けてたらおかしいでしょう?」

「おかしくないよ! おいしいよ!」

「なら、代わりに來唯のひとさし指、貰っちゃおうかな。いいよね?」

「............それは...やだな」

 來唯はポツリとそう言った後、ひとさし指を五望に渡した。

「はい。ありがとう」

 五望はにっこりと笑い、綺麗に並べた。手足の指二十本、全てがシートの上に出揃った。

「......おねえちゃん、ゆびごめんね?」

 噛み締めたせいで、一つだけ形がおかしくなったことに気がついたからだろうか? 來唯は五望の手を引き、謝った。

「......いいわよ。それじゃあ、早く続きを始めましょう」

「うん! わかった!」

「っと、その前に......」

 五望は包丁を片手に、すでに息絶えている葵に近寄った。慣れた手つきで左右のひとさし指を切断し、持ってくる。

「はい。あとはゴミに出すだけだから、これなら食べてていいわよ」

「おねえちゃん! ありがと!」

 來唯はそう言いながら抱きついた後、指を二本くわえ、噛み始めた。

「それじゃ、次は腕を切り落とします。素早く分解しないと出血多量で死んでしまうから、焼けた鉄棒を押し当てて止血しましょう」

「ふぁい! うわっ!」

 來唯が元気よく返事をした拍子に、口から指がこぼれ落ちていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

教師(今日、死)

ワカメガメ
ホラー
中学2年生の時、6月6日にクラスの担任が死んだ。 そしてしばらくして不思議な「ユメ」の体験をした。 その「ユメ」はある工場みたいなところ。そしてクラス全員がそこにいた。その「ユメ」に招待した人物は... 密かに隠れたその恨みが自分に死を植え付けられるなんてこの時は夢にも思わなかった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

寝落ち通話

なつのさんち
ホラー
寝落ち通話って知ってますか? 顔も名前も知らない相手と、眠りに落ちるまでお喋りする通話なんです。 でもそれって怖くない? 人間、寝ている時が一番無防備なんだもの。

茨城の首切場(くびきりば)

転生新語
ホラー
 へー、ご当地の怪談を取材してるの? なら、この家の近くで、そういう話があったよ。  ファミレスとかの飲食店が、必ず潰れる場所があってね。そこは首切場(くびきりば)があったんだ……  カクヨム、小説家になろうに投稿しています。  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330662331165883  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5202ij/

○○日記

月夜
ホラー
謎の空間に閉じ込められ、手がかりは日記のみ……? 日記は毎日何者かが書き込み、それに沿って部屋が変わっていく 私はなぜここに閉じ込められているのだろうか……?

成長する殺人鬼1(完結)

一二の三太郎
ホラー
日本でついに死刑廃止の法案が可決された。死刑にならないのなら、試しに人を殺してみよう。そう考えた明弘(あきひろ)は、早速人を殺した。 しかし、殺人は明弘の精神に深刻なダメージを与えてしまう。 極度のストレスで精神が崩壊した明弘は、人を殺しまくる殺人鬼へと生まれ変わっていた。 初めは簡単に殺すだけだった明弘。しかし回数を重ねるうちに『結果』ではなく『過程』を重視するようになっていく。 ※後半ほんの少しエログロです。

終電での事故

蓮實長治
ホラー
4つの似たような状況……しかし、その4つが起きたのは別の世界だった。 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」に同じモノを投稿しています。

死者への伝言

ツヨシ
ホラー
道端に、花束と手紙があった。

処理中です...