上 下
9 / 32
隆一くんは困惑する

脱出

しおりを挟む
「どうだ?」

 隆一は深雪にそう訊いた。

「だめ。窓も無いし、出口も見つからなかった」

 深雪は首を振りながらそう言った。

「クソッ!」

 隆一は苛立ちのあまり、近くにあった椅子を蹴飛ばした。
 このままではいけない。隆一は深呼吸し冷静になろうとした。何かここを出る方法は無いのだろうか......すると突然ドアがガチャガチャと音を立て始めた。
 隆一と深雪は、恐怖と驚きで身動きが取れなくなってしまっていた。
 ガチャンと音を立てた後、ノブがゆっくりと動きドアが開いた。




 私は鍵を開けドアを開いた。中には目を覚ました人間達がこちらをじっと見つめてきていた。

「すいません。娘が勝手に鍵を閉めてしまって」

 私はにこやかに笑いながらそう言った。やはり大きな音をたてすぎたようだ。二人とも目覚めてしまっていた。

「......葵はどこですか」

「......隆一君...だったかな。葵には他の部屋の掃除をしてもらっています」

「......『葵』? まあいいです。それよりなんで俺たちを起こさなかったんですか?」

「あまりにも気持ち良さそうに眠っていたので、起こさなかったんですよ」

「そうですか。まず葵に会わせてください」

 隆一君は真っ直ぐに私を見つめていた。

「分かりました。こっちです」

 私はそう言いながら感心していた。この人間は馬鹿では無いようで、不自然さを薄々感づいている。そう確信していた。
 私は手招きし、廊下へ出た。
 人間達は部屋から出ようとした。が、隆一君がもう一人に話しかける。

「深雪! お前はここにいろ! もし俺が十分以内に帰ってこなかったら警察に電話するんだ!」

「え!? 分かった......」

 私はその話を訊きながら内心微笑んでいた。二度と同じ失敗をするつもりは無い。そう思っていた。




「葵はどこにいるんですか」

 隆一君は廊下を歩きながら私に尋ねてきた。

「廊下を曲がったらすぐですよ」

 私はそう言い、廊下を曲がる。突き当たりの扉を開けると、そこに葵はいた。隆一君は目を見開き固まった。

「どーん!」

 待ち構えていた來唯が隆一君の頭めがけて金槌を振るった。隆一君はドサリと床に倒れる。

「ぱぱのいったとおりだね!」

 來唯は椅子から飛び降りると、つんつんと隆一君をつつく。

「それじゃあ観客が目を覚ますまで休憩しようか。熱中症にならないようにしっかり水分補給をしておくんだよ」

 私はそう言いながら隆一君を縄で縛る。

「こーらのんでもいい?」

 來唯がにこにこ笑いながら訊いてくる。

「コーラは体に悪いから少しだけだぞ」

「わかった! おねえちゃんものもう!」

「分かったから手を引っ張らないでよ!」

 二人の娘たちはじゃれあいながら拷問部屋を出ていった。私は、虚ろな目で天井を見上げている葵の治療を始めた。
 これからが本番なのに死んでもらっては困る。私は葵の股間にめり込んでいたハンマーを持ち上げ、横に置いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】お父さんとエッチした日

ねんごろ
恋愛
「お、おい……」 「あっ、お、お父さん……」  私は深夜にディルドを使ってオナニーしているところを、お父さんに見られてしまう。  それから私はお父さんと秘密のエッチをしてしまうのだった。

FLY ME TO THE MOON

如月 睦月
ホラー
いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!

真夜中の訪問者

星名雪子
ホラー
バイト先の上司からパワハラを受け続け、全てが嫌になった「私」家に帰らず、街を彷徨い歩いている内に夜になり、海辺の公園を訪れる。身を投げようとするが、恐怖で体が動かず、生きる気も死ぬ勇気もない自分自身に失望する。真冬の寒さから逃れようと公園の片隅にある公衆トイレに駆け込むが、そこで不可解な出来事に遭遇する。 ※発達障害、精神疾患を題材とした小説第4弾です。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

婚約令嬢の侍女調教

和泉/Irupa-na
ホラー
負債を抱える領地への援助と引き換えに、令嬢セレンティアは公爵家への婚約話を持ち掛けられた。正式な婚礼前に、嫁ぎ先で侍女として働くものの、将来有望な嫡男との婚約を嫉妬され、短いエプロンドレスでの給仕を強いられる。 やがて将来の義母となる夫人と出会い、冷酷な女主人となるための調教を施されていく……。 連載小説「姫君たちの傷痕」の番外編、侯爵令嬢セレンティアがサディストに育つまでの物語です。過去話のため、単体で先に読んでも楽しめます。 ※作中には、過剰な性描写や残酷な表現が含まれます。

扉をあけて

渡波みずき
ホラー
キャンプ場でアルバイトをはじめた翠は、男の子らしき人影を目撃したことから、先輩の中村に、ここは"出る"と教えられる。戦々恐々としながらもバイトを続けていたが、ひとりでいるとき、その男の子らしき声がして──

憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい

suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。 かわいいと美しいだったらかわいい寄り。 美女か美少女だったら美少女寄り。 明るく元気と知的で真面目だったら後者。 お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。 そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。 そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。 ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...