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隆一くんはバイトする
面接するぞ!
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隆一たちは部屋に入ると、用意されていた椅子に座った。机を挟んで、男の人も椅子に座る。
「今日は家の掃除をよろしくお願いします。私と娘二人で住んでいるので掃除をする時間があまりないんですよ」
男の人は恥ずかしそうにそう言った。
「あの! このお屋敷って幽霊とか出るんですか?」
突然深雪が目をきらきらさせながら尋ねた。
それを見た隆一は呆れていた。初対面の、しかもバイトを依頼してくれた人に対して『幽霊とか出るんですか?』とは普通訊かないだろう。
男の人は苦笑しながら答える。
「幽霊ですか......幽霊は見てませんね」
「そうですか......」
深雪はそう呟くと椅子に座り直した。と、ドアがガチャリと音を立てて開く。
「のみものをもってきました~」
さっき出迎えてくれた女の子が、頼りない足取りでトレイに乗ったカップを運んできた。
「よし!」
女の子はゆっくりと机にトレイを置き、それぞれにカップを配る。
「どうぞ!」
「あ、ありがとう」
「どうぞ!」
「ありがとね!」
「どうぞ!」
「......有難うございます」
女の子は配り終えると、じっと三人を見つめていた。隆一は視線を感じながらも、カップに口をつける。紅茶だろうか? あまり口には合わなかったが、そのまま飲み干した。
深雪と葵もカップを持ち上げる。三人が飲み干すと、女の子は満足したように大きく頷いた。
「ぱぱ! わたしこのひとがいい!」
「え? 私?」
女の子がいきなり葵を指差した。葵は怪訝な表情で首を傾げる。
「來唯、あっちで大人しくしていなさい」
男の人がそう言うと、來唯と呼ばれた女の子は葵をじっと見ながら部屋を出ていった。
「すいません。來唯は人間の好みにうるさいんですよ」
その台詞に、隆一は違和感を覚えた。他人を『人間』と表現するのは不自然ではないか? そう考えていた。
「それでは一時間後に掃除をお願いしますね。それまではここでくつろいでいてください」
男の人はそう言うと、一人ずつじっくりと見つめ、部屋を出ていった。
私はまんまと罠にかかった獲物を部屋に残し、娘達の待つ拷問部屋に歩いていった。
「準備はできているか?」
私はドアを開け、娘たちに訊いた。
「うん! わたしはあれころすからね!」
來唯はそう言いながら、釘を敷き詰めたボードを床に設置していた。天井には子供の力でも楽に持ち上げられるよう、滑車を取り付けてある。どうやらそれを利用するつもりのようだ。
「ころす~ころす~さすころす~うん!」
來唯は上機嫌で鼻唄を歌っていた。その微笑ましい光景に、私まで口ずさんでしまいそうになる。
「こっちも完成です!」
五望もくじを作り終え、部位を効率よく剥ぎ取れるようたくさんの器具を準備していた。
いつもは大人びている五望も、準備の時間は子供の笑顔を見せていた。
私は娘達を見ながら考える。
五望は殺人の手順を重視し、できるだけ綺麗に解体していくタイプだ。切り取った肉塊はシートの上に綺麗に並べる。切り取る順番も五望なりの決まりがあるようだ。瞼を切り取る前に眼球を抉り出すし、爪を剥がす場合は親指と中指、小指しか剥がさない。悲鳴はあまり好みではないのか、最初に髪を引き抜き、寄り合わせ糸にしたもので作品の口を縫い付けていた。
対して來唯は所構わず刺したり斬ったりする事が多い。作品が悲鳴を上げれば上げるほど興奮し、笑いながら壊す。快楽のみで人間を殺していた。
冷静に分解する五望と、遊びながら解体する來唯。どちらが正しいとは言えないが、私により近いのは五望だった。このまま成長してくれれば私を越えてくれるかもしれない。そう期待していた。もちろん、來唯も全く違う境地に達してくれるだろう。
二人はまだ子供だ。これからの成長が本当に楽しみだ。
私は時計を確認する。そろそろ紅茶に入れた睡眠薬が効いてきた頃だ。まずは來唯から。希望通りにあの大人しそうな人間を使うか。
「今日は家の掃除をよろしくお願いします。私と娘二人で住んでいるので掃除をする時間があまりないんですよ」
男の人は恥ずかしそうにそう言った。
「あの! このお屋敷って幽霊とか出るんですか?」
突然深雪が目をきらきらさせながら尋ねた。
それを見た隆一は呆れていた。初対面の、しかもバイトを依頼してくれた人に対して『幽霊とか出るんですか?』とは普通訊かないだろう。
男の人は苦笑しながら答える。
「幽霊ですか......幽霊は見てませんね」
「そうですか......」
深雪はそう呟くと椅子に座り直した。と、ドアがガチャリと音を立てて開く。
「のみものをもってきました~」
さっき出迎えてくれた女の子が、頼りない足取りでトレイに乗ったカップを運んできた。
「よし!」
女の子はゆっくりと机にトレイを置き、それぞれにカップを配る。
「どうぞ!」
「あ、ありがとう」
「どうぞ!」
「ありがとね!」
「どうぞ!」
「......有難うございます」
女の子は配り終えると、じっと三人を見つめていた。隆一は視線を感じながらも、カップに口をつける。紅茶だろうか? あまり口には合わなかったが、そのまま飲み干した。
深雪と葵もカップを持ち上げる。三人が飲み干すと、女の子は満足したように大きく頷いた。
「ぱぱ! わたしこのひとがいい!」
「え? 私?」
女の子がいきなり葵を指差した。葵は怪訝な表情で首を傾げる。
「來唯、あっちで大人しくしていなさい」
男の人がそう言うと、來唯と呼ばれた女の子は葵をじっと見ながら部屋を出ていった。
「すいません。來唯は人間の好みにうるさいんですよ」
その台詞に、隆一は違和感を覚えた。他人を『人間』と表現するのは不自然ではないか? そう考えていた。
「それでは一時間後に掃除をお願いしますね。それまではここでくつろいでいてください」
男の人はそう言うと、一人ずつじっくりと見つめ、部屋を出ていった。
私はまんまと罠にかかった獲物を部屋に残し、娘達の待つ拷問部屋に歩いていった。
「準備はできているか?」
私はドアを開け、娘たちに訊いた。
「うん! わたしはあれころすからね!」
來唯はそう言いながら、釘を敷き詰めたボードを床に設置していた。天井には子供の力でも楽に持ち上げられるよう、滑車を取り付けてある。どうやらそれを利用するつもりのようだ。
「ころす~ころす~さすころす~うん!」
來唯は上機嫌で鼻唄を歌っていた。その微笑ましい光景に、私まで口ずさんでしまいそうになる。
「こっちも完成です!」
五望もくじを作り終え、部位を効率よく剥ぎ取れるようたくさんの器具を準備していた。
いつもは大人びている五望も、準備の時間は子供の笑顔を見せていた。
私は娘達を見ながら考える。
五望は殺人の手順を重視し、できるだけ綺麗に解体していくタイプだ。切り取った肉塊はシートの上に綺麗に並べる。切り取る順番も五望なりの決まりがあるようだ。瞼を切り取る前に眼球を抉り出すし、爪を剥がす場合は親指と中指、小指しか剥がさない。悲鳴はあまり好みではないのか、最初に髪を引き抜き、寄り合わせ糸にしたもので作品の口を縫い付けていた。
対して來唯は所構わず刺したり斬ったりする事が多い。作品が悲鳴を上げれば上げるほど興奮し、笑いながら壊す。快楽のみで人間を殺していた。
冷静に分解する五望と、遊びながら解体する來唯。どちらが正しいとは言えないが、私により近いのは五望だった。このまま成長してくれれば私を越えてくれるかもしれない。そう期待していた。もちろん、來唯も全く違う境地に達してくれるだろう。
二人はまだ子供だ。これからの成長が本当に楽しみだ。
私は時計を確認する。そろそろ紅茶に入れた睡眠薬が効いてきた頃だ。まずは來唯から。希望通りにあの大人しそうな人間を使うか。
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