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來唯ちゃんと五望ちゃん
次の獲物
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風呂から上がった來唯と五望は、食卓の椅子に座った。綺麗さっぱり返り血を落とした二人は、フォークとナイフを握りしめる。
「できたぞ。食べなさい」
私は二人の前にステーキを置く。娘たちは美味しそうに肉にかぶり付いた。少し経った後、私は話始める。
「二人ともちょっといいかな?」
「なに?」
「何ですか?」
五望はフォークとナイフを置き、こちらを見る。
「次の人間なんだが、この家に招待したんだ。全部で三人。女が二人と男が一人だ」
私は二人を交互に見ながらそう言った。
「二人? それなら一人余りますね」
五望が不思議そうに首を傾げる。
「じゃあ、くゆいがふたりころす!」
來唯は椅子から立ち上がり、握りしめていたナイフを肉に突き立てた。
「そんなのずるいです! 私が二つ作ります!」
五望も負けじと言い返す。
「まあまあ。今回はみんなで共同製作しようと思うんだがどうかな?」
私は睨みあっている娘たちにそう言った。
「みんなで?」
「共同製作ですか?」
「そうだ。一人一つではではなくで、みんなで三人殺すんだ。面白そうだろう?」
娘たちはしばらく黙った後、ぱあっと笑顔を見せた。
「ぱぱがころすとこみれるの!」
「父さんも参加するんですか!」
二人はほぼ同時にそう言った。きらきらと目を輝かせている。
「ああ。最近は殺していないからな。二人を見ていたら、父さんも殺したくなってしまったんだ」
私は正直にそう言った。最近娘たちの、特に五望の腕がめきめきと上達していた。昔を思いだし、殺したくなってしまっていたのだ。私は話を続けた。
「三人で殺す。つまりみんなで協力して作品を作り上げなければいけない。そこで、一人目は來唯主導、二人目は五望、三人目は父さん、これでどうだろう?」
「うん! おもしろそう!」
「分かりました! 頑張ります!」
「そうか。作品は今度の金曜日に到着する予定だ。それまでに殺害方法を考えておくように」
娘たちはしっかりと頷き、ステーキを食べ始めた。
「父さん、少しお願いがあるんですけど......」
食事の後五望が近寄ってくると、話しかけてきた。
「どうかしたのか?」
「あの、私たちのお母さんって地下に閉じ込められているんですよね?」
「そうだが......それがどうかしたのか?」
五望はもじもじとしながら、小さい声で話始めた。
「......あの......その......母さんを......」
私はしばらく考えた後、思い出す。そういえば約束していたのだった。
「たしか、一人前になったら母さんを殺したいといっていたな」
「そうです! 父さんは前にいっていましたよね。家族を殺すのは他の殺人とは違うと......だから早く経験してみたいんです......まだ駄目ですか?」
五望は私を見上げてくる。
「そうだな......家族を殺したいのなら、父さんでも良いのではないか?」
私はそう言ってみた。さて。どのような反応をするのだろうか。
「......父さんは......その......殺したくないんです」
五望は小さい声でそう言った。
やはりまだ甘いな。私はそう思っていた。
本物の殺人鬼になれば、家族だろうと友達だろうと殺す。私がかつてそうだったからだ。自分の子供も、殺しの才が無いと分かった瞬間全て殺してきた。結局、五望と來唯しか残らなかった。
私は、期待の眼差しで見つめてくる五望に言った。
「まだ早いな。時期は父さんに任せてくれないか?」
「......分かりました」
五望は少し悲しそうに私を見た。
「そんなに落ち込むな。腕は確実に上がってきているんだ」
私は五望の頭を撫でてやる。
「..........うにゃ...」
五望は変な声を出し、ぷるぷる震えていた。
「今日はもう寝なさい」
私は撫で終わるとそう言った。
「分かりました。お休みなさい」
五望は頭を両手で押さえたまま、走り去っていった。
「できたぞ。食べなさい」
私は二人の前にステーキを置く。娘たちは美味しそうに肉にかぶり付いた。少し経った後、私は話始める。
「二人ともちょっといいかな?」
「なに?」
「何ですか?」
五望はフォークとナイフを置き、こちらを見る。
「次の人間なんだが、この家に招待したんだ。全部で三人。女が二人と男が一人だ」
私は二人を交互に見ながらそう言った。
「二人? それなら一人余りますね」
五望が不思議そうに首を傾げる。
「じゃあ、くゆいがふたりころす!」
來唯は椅子から立ち上がり、握りしめていたナイフを肉に突き立てた。
「そんなのずるいです! 私が二つ作ります!」
五望も負けじと言い返す。
「まあまあ。今回はみんなで共同製作しようと思うんだがどうかな?」
私は睨みあっている娘たちにそう言った。
「みんなで?」
「共同製作ですか?」
「そうだ。一人一つではではなくで、みんなで三人殺すんだ。面白そうだろう?」
娘たちはしばらく黙った後、ぱあっと笑顔を見せた。
「ぱぱがころすとこみれるの!」
「父さんも参加するんですか!」
二人はほぼ同時にそう言った。きらきらと目を輝かせている。
「ああ。最近は殺していないからな。二人を見ていたら、父さんも殺したくなってしまったんだ」
私は正直にそう言った。最近娘たちの、特に五望の腕がめきめきと上達していた。昔を思いだし、殺したくなってしまっていたのだ。私は話を続けた。
「三人で殺す。つまりみんなで協力して作品を作り上げなければいけない。そこで、一人目は來唯主導、二人目は五望、三人目は父さん、これでどうだろう?」
「うん! おもしろそう!」
「分かりました! 頑張ります!」
「そうか。作品は今度の金曜日に到着する予定だ。それまでに殺害方法を考えておくように」
娘たちはしっかりと頷き、ステーキを食べ始めた。
「父さん、少しお願いがあるんですけど......」
食事の後五望が近寄ってくると、話しかけてきた。
「どうかしたのか?」
「あの、私たちのお母さんって地下に閉じ込められているんですよね?」
「そうだが......それがどうかしたのか?」
五望はもじもじとしながら、小さい声で話始めた。
「......あの......その......母さんを......」
私はしばらく考えた後、思い出す。そういえば約束していたのだった。
「たしか、一人前になったら母さんを殺したいといっていたな」
「そうです! 父さんは前にいっていましたよね。家族を殺すのは他の殺人とは違うと......だから早く経験してみたいんです......まだ駄目ですか?」
五望は私を見上げてくる。
「そうだな......家族を殺したいのなら、父さんでも良いのではないか?」
私はそう言ってみた。さて。どのような反応をするのだろうか。
「......父さんは......その......殺したくないんです」
五望は小さい声でそう言った。
やはりまだ甘いな。私はそう思っていた。
本物の殺人鬼になれば、家族だろうと友達だろうと殺す。私がかつてそうだったからだ。自分の子供も、殺しの才が無いと分かった瞬間全て殺してきた。結局、五望と來唯しか残らなかった。
私は、期待の眼差しで見つめてくる五望に言った。
「まだ早いな。時期は父さんに任せてくれないか?」
「......分かりました」
五望は少し悲しそうに私を見た。
「そんなに落ち込むな。腕は確実に上がってきているんだ」
私は五望の頭を撫でてやる。
「..........うにゃ...」
五望は変な声を出し、ぷるぷる震えていた。
「今日はもう寝なさい」
私は撫で終わるとそう言った。
「分かりました。お休みなさい」
五望は頭を両手で押さえたまま、走り去っていった。
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