成長する殺人鬼1(完結)

一二の三太郎

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六章 被害者さんへのお手紙

『四人目』

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 透へ

  お前に手紙を書く日が来るなんて思いもしなかったよ。
 思い返せば、本当に長い付き合いだったな。
 初めて合ったのは小学校の時だったかな。いきなり話しかけてきたからビックリしたよ。
 最初は、馴れ馴れしい変な奴だと思っていたけれど、話していくうちに悪い奴じゃ無いと思えるようになっていたよ。
 覚えてるか? 小学校5年生の時に野球をしていて、校長室のガラスを割ったよな。
 二人してたっぷり怒られてさ。
 別に印象に残るような出来事では無いのだけれど、お前の泣きそうな、怒ったような変な顔のせいで、今まで覚えていたよ。今では良い思い出だ。
 初めて唯に会った時は、お前、顔を真っ赤にして俯いていたっけ。あの時、一目惚れしたんだろ?
 直ぐにわかったよ。
 でも、お前勇気がでなかったのか、結局告白はしなかったよな。唯と話す口実を作っては、楽しそうにお喋りするだけだった。
 俺も、最近唯と話したんだよ。
 まあ、唯が一方的に絶叫していただけなんだけど。あれは楽しかったなあ。出来ることならまた殺したい。
 お前を殺した時はまだ未熟だったから、唯の時ほどは楽しめなかったけど俺なりに精一杯頑張ったんだ。文句は言わないでくれよ。
 それに、一緒の車に女の子を乗せてあげたんだ。感謝してほしいぐらいだよ。
 お前が水揚げされたときは、水を吸ってパンパンに膨れ上がっていたそうだよ。
 俺がハンバーガショップでコーラを飲んでいる時に、お前は水を飲んでいたんだな。
 美味しかったか?
 美味しかったで思い出したが、唯はとても美味しかったぞ。ああ。本当に美味しかった。
 身体も体も最高だったよ。
 お前も味わいたかっただろう?
 でも駄目だ。唯を喰っていいのは俺だけ。だって付き合ってるからね。
 唯の事は愛している。いくら親友が欲しがったとしてもあげないし、あげる部分ももう無いんだ。
 お前は、一緒に沈んだ女の子とよろしくやってくれ。

 まだ話したい事もあるけど、ここらへんで止めておこうかな。あんまり書いてても読んでくれなさそうだし。
 それじゃ、俺はこれから罪を償わなければいけないし、頑張ってみるよ。
 お前も頑張れよ。応援してるぞ。
 
 明弘



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