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五章 心咲ちゃんの恋愛事情
『心咲』後悔
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俺は『十人目』を殺す前に、予行演習をすることにした。
風呂場の蛇口にホースを取り付け、寝転がっている刑事の口に水を入れていく。
しっかりとホースを口に固定し、溢れないように注意した。ごぼごぼと刑事の口から水の音が聞こえてくる。
俺は隙間から水が出ないように、口元をしっかりと押さえた。
苦しいのか、のたうち回る刑事。しかし、しっかりと体にテープを巻き付けているせいで、その場で跳ねることしか出来ないでいる。
以外と楽しいな。
俺は刑事の眼球がはまっていた穴を見つめる。ぽっかりと開いたその穴には、血液がこびりつき、血の涙が溢れていた。
俺は、水を入れ続けていた。刑事の腹がどんどん大きくなって、口や鼻から血の混じった体液を垂れ流していた。
それを見ている俺の頭の中に、ある疑問が浮かんでいた。今やパンパンに張っているお腹。その上に全体重を乗せたらどうなるんだろうか。
俺は好奇心を抑えることができなかった。差し込んでいたホースを素早く抜き取り、水が漏れないようにガムテープを貼りつける。
よし。
俺は浴槽の縁に立ち、飛び降りた。
足下にグニャリとした感触を味わいながら、めり込んでいった。
俺の体重が掛かったせいで、刑事の口と鼻から、勢い良く血と水が吹き出してきた。さらに跳び跳ねると、ありとあらゆる穴から液体が噴き出してきた。
これ、結構面白いかも。
俺はもう一回遊ぼうとホースを手に取り、刑事の口に突っ込んだ。
刑事で予行演習した次の日、俺は唯の家の前に立っていた。あくびをしながらチャイムを押す。
昨日、結局十回以上遊んだせいで寝不足だ。刑事はピクリとも動かなくなったし、たぶん死んでしまったのだろう。
そんな事を考えていると、玄関の扉が開き、中から唯の妹、心咲が飛び出してきた。
「お兄さん! 待ってました!」
俺は心咲に招かれ、家の中に入った。
「それで、お姉ちゃんが昨日から帰ってきていないんです」
心咲は泣きそうな表情で俺を見つめてくる。
「だから俺に連絡したの?」
そう言いながら、俺は教えたい衝動に駆られていた。『君のお姉ちゃんを殺したのは俺だよ。今は俺の家と実家にいるんだよ』そう教えてあげたかった。
「それで、心当たりとかありませんか?」
心咲は必死に尋ねてくる。それはそうだろう。最近、死者と行方不明者が続出している。
だって俺が殺しているから。
俺はそう言うのをぐっと我慢し、優しく声をかけた。
「そうだね......心当たりは何ヵ所かあるから、一緒に探しにいこうか」
心咲はそれを聞き、ホッとしたような表情を見せた。俺は心咲を唯に会わせることができる。すぐに会わせてあげるからね。
優しく微笑み、立ち上がった。
「じゃあ行こうか」
「ちょっと待ってください! 実はもう一人探したい人がいるんですけど......この子も一緒に探していいですか?」
心咲がそう言い、俺に一枚の紙を手渡してきた。俺はそれを受け取り確認する。
そこには、元気に笑う『五人目』が写っていた。
「この子は?」
俺はまさかと思い、尋ねてみる。
「その子は私の友達で、最近いなくなっちゃったんです...毎日探しているんですけど見つからなくて......」
心咲はそこまで言うと、こらえきれなくなったのか泣き出してしまった。
「大丈夫。一緒に探そう。唯もその子もきっと見つかるよ」
俺はそう言いながら、自分が取り返しのつかない失敗をしてしまっていた事に気がついた。心咲の目の前で『五人目』を拷問するべきだった。
いや、どうせなら二人を殺し合わせれば良かった。しかし、いくら後悔しても死んだ人間は戻っては来ない。
気持ちを切り替えなければいけない。
俺は心咲の頭を優しく撫でる。そうだ。「すぐに二人に会わせてあげるからね」
「はい!」
涙を拭いながら元気に返事をする。俺には一瞬だけ、その涙が真っ赤な血に見えた。
やれやれ。昨日遊びすぎたようだ。俺は頭を振り部屋を出た。
風呂場の蛇口にホースを取り付け、寝転がっている刑事の口に水を入れていく。
しっかりとホースを口に固定し、溢れないように注意した。ごぼごぼと刑事の口から水の音が聞こえてくる。
俺は隙間から水が出ないように、口元をしっかりと押さえた。
苦しいのか、のたうち回る刑事。しかし、しっかりと体にテープを巻き付けているせいで、その場で跳ねることしか出来ないでいる。
以外と楽しいな。
俺は刑事の眼球がはまっていた穴を見つめる。ぽっかりと開いたその穴には、血液がこびりつき、血の涙が溢れていた。
俺は、水を入れ続けていた。刑事の腹がどんどん大きくなって、口や鼻から血の混じった体液を垂れ流していた。
それを見ている俺の頭の中に、ある疑問が浮かんでいた。今やパンパンに張っているお腹。その上に全体重を乗せたらどうなるんだろうか。
俺は好奇心を抑えることができなかった。差し込んでいたホースを素早く抜き取り、水が漏れないようにガムテープを貼りつける。
よし。
俺は浴槽の縁に立ち、飛び降りた。
足下にグニャリとした感触を味わいながら、めり込んでいった。
俺の体重が掛かったせいで、刑事の口と鼻から、勢い良く血と水が吹き出してきた。さらに跳び跳ねると、ありとあらゆる穴から液体が噴き出してきた。
これ、結構面白いかも。
俺はもう一回遊ぼうとホースを手に取り、刑事の口に突っ込んだ。
刑事で予行演習した次の日、俺は唯の家の前に立っていた。あくびをしながらチャイムを押す。
昨日、結局十回以上遊んだせいで寝不足だ。刑事はピクリとも動かなくなったし、たぶん死んでしまったのだろう。
そんな事を考えていると、玄関の扉が開き、中から唯の妹、心咲が飛び出してきた。
「お兄さん! 待ってました!」
俺は心咲に招かれ、家の中に入った。
「それで、お姉ちゃんが昨日から帰ってきていないんです」
心咲は泣きそうな表情で俺を見つめてくる。
「だから俺に連絡したの?」
そう言いながら、俺は教えたい衝動に駆られていた。『君のお姉ちゃんを殺したのは俺だよ。今は俺の家と実家にいるんだよ』そう教えてあげたかった。
「それで、心当たりとかありませんか?」
心咲は必死に尋ねてくる。それはそうだろう。最近、死者と行方不明者が続出している。
だって俺が殺しているから。
俺はそう言うのをぐっと我慢し、優しく声をかけた。
「そうだね......心当たりは何ヵ所かあるから、一緒に探しにいこうか」
心咲はそれを聞き、ホッとしたような表情を見せた。俺は心咲を唯に会わせることができる。すぐに会わせてあげるからね。
優しく微笑み、立ち上がった。
「じゃあ行こうか」
「ちょっと待ってください! 実はもう一人探したい人がいるんですけど......この子も一緒に探していいですか?」
心咲がそう言い、俺に一枚の紙を手渡してきた。俺はそれを受け取り確認する。
そこには、元気に笑う『五人目』が写っていた。
「この子は?」
俺はまさかと思い、尋ねてみる。
「その子は私の友達で、最近いなくなっちゃったんです...毎日探しているんですけど見つからなくて......」
心咲はそこまで言うと、こらえきれなくなったのか泣き出してしまった。
「大丈夫。一緒に探そう。唯もその子もきっと見つかるよ」
俺はそう言いながら、自分が取り返しのつかない失敗をしてしまっていた事に気がついた。心咲の目の前で『五人目』を拷問するべきだった。
いや、どうせなら二人を殺し合わせれば良かった。しかし、いくら後悔しても死んだ人間は戻っては来ない。
気持ちを切り替えなければいけない。
俺は心咲の頭を優しく撫でる。そうだ。「すぐに二人に会わせてあげるからね」
「はい!」
涙を拭いながら元気に返事をする。俺には一瞬だけ、その涙が真っ赤な血に見えた。
やれやれ。昨日遊びすぎたようだ。俺は頭を振り部屋を出た。
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