22 / 39
四章 唯ちゃんの好きな人
『唯』真理
しおりを挟むダンテはアンナが抱えた花束ごと、彼女の身体を抱き締めていた。
「アンナ………。それは、君の心からの気持ちかい?………遠慮はいらない。私は君の本心が知りたい」
「そんなの、当たり前じゃないですか………っ!私がどんな気持ちで………っ」
縋り付くように彼の胸に頬を寄せて、悲鳴に近い声を上げたその途端、大きく温かい掌に強い力が込められるのが分かった。
「………すまない………。私は、それが何よりも不安だったんだ…………」
ダンテの体温で、抱えた花束から芳しい花の香りが立ち昇る。
「それならばもう、遠慮なんてしない。
あなたでないと………駄目なんだ。寝ても覚めても、君のその陽だまりのように温かな笑顔が頭から離れない。君の事を思い浮かべるだけで、心が満たされるんだ………。アンナ、君を心から愛している。私は運命だとか、そういうものは信じていなかったけれど………君こそが私の運命の人だ」
耳元で囁かれた言葉に、アンナは身体が芯から震えるのが解った。
悲しくないのに、自然と涙が溢れてきて、アンナは手にしていた花束に思わず顔を埋めた。
「………ダンテ様………。私はダンテ様のお側にいても、いいんですか………っ?」
「ああ、もちろんだ。………いや、違うな」
ダンテは少し考えてから、にやりと笑った。
「アンナ。君にはずっと、私の側にいて欲しい。君のその何よりも美しい笑顔を、ずっと私に向けてくれ。………これが正解だろう?」
「ダンテ様…………」
感極まったようにアンナが言葉を詰まらせると、ダンテは何かを促すようにアンナをじっと見つめた。
「………私も、愛しております…………」
少し気恥ずかしそうに、けれど今までのどんなものとも違う表情を浮かべながらふわりと微笑んだアンナに、ダンテは大きな身体を屈めると、彼女の唇にそっと口付けを落とした。
それはまるで羽根で撫でるような、優しい口付けだったが、アンナはたったそれだけで全身の血管が沸騰するような感覚を覚えた。
それは長い間感じていた躊躇いも、劣等感すらもどうでもいいと思えるくらいの、目眩がする程幸せな瞬間だった。
秋の陽射しが美しく煌めき、風と鳥たちの囀りがさざめき立つ。
まるでこの世の全てが彩り豊かに輝き出したのかのように、美しく映る。
愛しい人と思いが通じ合うというのは何て素晴らしく、何と幸福なのだろう。
クラリーチェやリディアが、いつも幸せそうに見えるのはそのせいなのかもしれないとアンナはダンテの腕の中で考えた。
「アンナ………。それは、君の心からの気持ちかい?………遠慮はいらない。私は君の本心が知りたい」
「そんなの、当たり前じゃないですか………っ!私がどんな気持ちで………っ」
縋り付くように彼の胸に頬を寄せて、悲鳴に近い声を上げたその途端、大きく温かい掌に強い力が込められるのが分かった。
「………すまない………。私は、それが何よりも不安だったんだ…………」
ダンテの体温で、抱えた花束から芳しい花の香りが立ち昇る。
「それならばもう、遠慮なんてしない。
あなたでないと………駄目なんだ。寝ても覚めても、君のその陽だまりのように温かな笑顔が頭から離れない。君の事を思い浮かべるだけで、心が満たされるんだ………。アンナ、君を心から愛している。私は運命だとか、そういうものは信じていなかったけれど………君こそが私の運命の人だ」
耳元で囁かれた言葉に、アンナは身体が芯から震えるのが解った。
悲しくないのに、自然と涙が溢れてきて、アンナは手にしていた花束に思わず顔を埋めた。
「………ダンテ様………。私はダンテ様のお側にいても、いいんですか………っ?」
「ああ、もちろんだ。………いや、違うな」
ダンテは少し考えてから、にやりと笑った。
「アンナ。君にはずっと、私の側にいて欲しい。君のその何よりも美しい笑顔を、ずっと私に向けてくれ。………これが正解だろう?」
「ダンテ様…………」
感極まったようにアンナが言葉を詰まらせると、ダンテは何かを促すようにアンナをじっと見つめた。
「………私も、愛しております…………」
少し気恥ずかしそうに、けれど今までのどんなものとも違う表情を浮かべながらふわりと微笑んだアンナに、ダンテは大きな身体を屈めると、彼女の唇にそっと口付けを落とした。
それはまるで羽根で撫でるような、優しい口付けだったが、アンナはたったそれだけで全身の血管が沸騰するような感覚を覚えた。
それは長い間感じていた躊躇いも、劣等感すらもどうでもいいと思えるくらいの、目眩がする程幸せな瞬間だった。
秋の陽射しが美しく煌めき、風と鳥たちの囀りがさざめき立つ。
まるでこの世の全てが彩り豊かに輝き出したのかのように、美しく映る。
愛しい人と思いが通じ合うというのは何て素晴らしく、何と幸福なのだろう。
クラリーチェやリディアが、いつも幸せそうに見えるのはそのせいなのかもしれないとアンナはダンテの腕の中で考えた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

糠味噌の唄
猫枕
ホラー
昭和60年の春、小6の町子は学校が終わって帰宅した。
家には誰もいない。
お腹を空かせた町子は台所を漁るが、おやつも何もない。
あるのは余った冷やご飯だけ。
ぬか漬けでもオカズに食べようかと流し台の下から糠床の入った壺をヨイコラショと取り出して。
かき回すと妙な物体が手に当たる。
引っ張り出すとそれは人間の手首から先だった。
『忌み地・元霧原村の怪』
潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。
渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。
《主人公は月森和也(語り部)となります。転校生の神代渉はバディ訳の男子です》
【投稿開始後に1話と2話を改稿し、1話にまとめています。(内容の筋は変わっていません)】
不労の家
千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。
世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。
それは「一生働かないこと」。
世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。
初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。
経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。
望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。
彼の最後の選択を見て欲しい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小径
砂詠 飛来
ホラー
うらみつらみに横恋慕
江戸を染めるは吉原大火――
筆職人の与四郎と妻のお沙。
互いに想い合い、こんなにも近くにいるのに届かぬ心。
ふたりの選んだ運命は‥‥
江戸を舞台に吉原を巻き込んでのドタバタ珍道中!(違
迷い家と麗しき怪画〜雨宮健の心霊事件簿〜②
蒼琉璃
ホラー
――――今度の依頼人は幽霊?
行方不明になった高校教師の有村克明を追って、健と梨子の前に現れたのは美しい女性が描かれた絵画だった。そして15年前に島で起こった残酷な未解決事件。点と線を結ぶ時、新たな恐怖の幕開けとなる。
健と梨子、そして強力な守護霊の楓ばぁちゃんと共に心霊事件に挑む!
※雨宮健の心霊事件簿第二弾!
※毎回、2000〜3000前後の文字数で更新します。
※残酷なシーンが入る場合があります。
※Illustration Suico様(@SuiCo_0)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる